第27話 収益化記念配信! 地獄のカラオケ編!
『え、上手すぎない?:30000¥』
『瑠花チャソとんでもなくない?:10000¥』
コメントがまーた虹色である。まあ、瑠花の歌を聞けばそうなるのも納得だろう。
瑠花はめちゃくちゃ歌が上手い。それはもう、めちゃくちゃに。
その上、歌うのは俺がよく聞いていたからとアニソンやボカロが多い。時々ラブソングが入ってくるぐらいか。
簡単に言うとオタク特効である。視聴者と俺にぶっ刺さるのだ。
『あー、好き:10000¥』
『神は瑠花ちゃんに何物与える気だよ』
『代償に頭おかしくなってる(褒め言葉)から妥当っちゃ妥当:5000¥』
褒め言葉って万能だな。何言っても許される気がする。
「――うん、最初にしてはちゃんと声出せたかな。どうだった?」
「ああ。良かった。いつも通り聞き惚れたぞ」
「惚れた!? じ、じゃあ結婚式はいつにしよっか! 私、来週末とか空いてるよ!」
「デート感覚で結婚式を挙げようとするな」
ため息混じりにそう返して。コメントの様子をを伺う。
『……あれ? もう結婚式挙げれるくらいのお金貯まったんじゃね?』
『追加しとくわ:50000¥』
『結婚式配信よろ:50000¥』
ああ! 余計な事言ったからまた増えてるし!
……もう良いか。
『桜浜桃華ペット枠で私も呼んでください♡ご主人様♡:50000¥』
「頼むからお金投げないで桃華さん!あと普通の喋り方になって!ハートマーク多めのエロラノベみたいになってるから!」
「桃華ちゃんも新婦の隣で首輪つけて置いてあげるからね」
「やった!」
「空気地獄だよ。親戚ドン引きだよ」
瑠花の家族はアレなので別に良いのだが。俺のところは割と真面目なんだぞ。…………両親は多少アレだが。
『前代未聞すぎて草』
『神父困惑やろなぁ。あ、お金投げとくね:3000¥』
『御祝儀:30000¥』
なんでだよ。なんでそんな軽くお金を投げられるんだよ。石油王なのかよ。
『桜浜桃華:ペット代:50000¥』
「あとなんで桃華さんはぽんぽん五万投げるんですか!? つかペット代って何!?」
「わ、私。今までお小遣いとか貯めてきたし。Vtuberを始めるために家のお手伝いとかバイトとかやってきてたから。余った分の使い所かなって。あと、ペット代は今月の分で来月も払うからね!」
「貯金しろ」
なんなんだこの子は。そっか、ドMだ。
「桃華の将来が不安になってきた……」
「こうなったら責任持って飼ってあげるしか……それか封印する?」
「とんでもねえ二択だなおい……って結果出てるぞ」
ちなみにここのスタジオはカラオケ付きであった。現在はモニターに点数が表示されているところだ。
「あ、今視聴者さんにも見せるね」
瑠花がスマホでその写真を撮る。反射で顔バレとか怖いが、このモニターはそういうのが防げる特別製らしかった。さすがVtop。
そして、コメントの隣に映し出されたのは……
【95.134点】
『たっっっか』
『上手すぎる』
『なんで歌まで上手いんだよ』
コメント欄は驚愕と賞賛の嵐であった。まあ、なんとなく想像はしていたが。
「……そういえば罰ゲーム付きって言ってたよな」
「うん、そうだよ」
『今度はカイリきゅんのドMボイスかぁ……』
『シンプルに楽しみ』
『先に金払っておくわ:500¥』
余りにも気が早すぎる。いや、気持ちも分かるが。
「ドMボイス……私としては鬼畜ボイスの方が良いんだけど」
「もう出さんからな。……それで、瑠花。罰ゲームってなんだ?」
「女体化生配信だよ」
「想像の斜め上が来たな!?」
『カイリきゅんの女体化……カイリチャソになるって事!?』
『キマシタワー!?』
『うおおおおおお!』
コメント欄が大盛り上がりである。やらないとは言い出せない状況だ。
「……ちなみに瑠花が負けたら?」
「私の男体化だね。折角だしカイリが負けたらメイド服、私が負けたら執事服にしよっか」
『メイド服カイリきゅん!?』
『歪むぞ……これは』
まあ、これなら……妥当か? 妥当なのか?
「もひとつ言っとくと、カイリは私が女の子の声を教え込んだから。結構クオリティ高いよ」
「なんで言うのかな!? まさかこの時のために教え込んでいたのか!?」
確かに何故か瑠花から一ヶ月ほどかけて教えこまれた記憶はある。なんで断ってないんだよ俺。
「まさかでしょ」
「そ、そうだよな……あれ去年とかだもんな」
「あれ言ってみたかったんだよね。『カイリ、女の子みたいな声出てるよ♡』ってやつ」
「最低な理由だったよ」
「でもそういうのも好きだったよね」
「だからこんな所で俺の性癖バラさないで!?」
「……閃いた」
「閃かないで桃華さん」
「カイリ君とカイリちゃんの囁きドSボイスとかどうかしら!?」
「もうやだこの子」
「採用」
「採用しないで!?」
待て。一度落ち着こう。このままだと本当に意味が分からないまま話が進んでいく。
「……結局罰ゲームは?」
「変更して両性カイリか私のドSボイスという事で。あ、メイド服か執事服でね」
「じーざす……」
「あ、参考までにカイリの女の子ボイス流しとくね」
『ざぁこ♡ざぁこお姉ちゃん♡』
「あ゛゛っ゛」
『!?』
『メスガキカイリきゅん……じゃなくてちゃん!?』
『え、これガチでカイリきゅん!?てかロリメス声!?』
『完成度高すぎて草』
瑠花が取り出したスマホから音声が流れ。無事俺は死んだ。
「……あっ。女の子に煽られるのも悪くないわね」
「桃華さんのストライクゾーン広くないですか」
「元はカイリ君だからね。多分おじいちゃんボイスでもいけるよ」
「もうやだこの子達!」
『メスガキカイリちゃんの理解らせボイスはよ』
『ブースト待機しとこ』
……いや。待て。
「……これ。俺が勝っても別に良いんだよな?」
「もちろん。真剣勝負だからね」
『バリバリフラグ立てますやん』
「視聴者はもう俺が負けだと思っているようだが」
俺は瑠花からマイクとリモコンを受け取る。
「俺も歌は得意なんだよ」
◆◆◆
【94.375点】
「瑠花には勝てなかったよ……」
『フラグかと思ったら中々惜しくて草』
『てかカイリきゅんもめちゃくちゃ上手かったな』
普段は結構いい勝負をするのだ。二人でカラオケに行った時でも俺の方が点数が高かった時だってあるし。
「ぐ……95なら上手く行けば越せると思ったんだが」
「配信で緊張してあんまり声出てなかったね」
『叫び声は出せるのに歌声出せないのは草。いや十分出てたけども』
『というか二人とも歌うま人間だったのか……ちなみに桃華ちゃんは?』
「わ、私は……下手では無いと自分で思ってるけど。二人に比べれば全然ね。良くて90って所かしら」
『たけぇ……』
『十分すぎる』
そんな会話を聞きながらも。俺はため息を吐いた。
「……五回勝負とかにならない?」
「良いよ。元々そのつもりだったし」
「まじ?」
「じゃあ五回の合計点数で勝負ね」
『ま???』
『これは分からなくなってきたな』
『もう男声瑠花チャソと女声カイリきゅんで良いのでは?』
『それだ!!!!』
なんか凄い事を言われているが。
「一応罰ゲームだからね。……じゃあ、もし五回歌って点数が揃ったらそれで行こっか」
「まあ、それは別に構わんが」
この機械は小数点第三位まで表示されるのだ。そこまで揃う確率は天文学的なものだろうし。
「それじゃ、私の二曲目入れるね」
そう言ってマイクとリモコンを手にする瑠花を見て、負けないよう頑張らねばと奮起したのだった。
◆◆◆
【476.165点】
【476.165点】
「いやそうはならんやろ」
『なっとるやろがい!!』
『えぇ……?』
なんでだよ。本当になんでだよ。天文学的な確率が揃っちゃったよ。
何度見ても、そして計算をし直しても数字は変わらない。
「これまじ?」
「さすがに私も驚いたね……」
「……二人のドS耳舐めカウントダウンボイス!」
「そこまでやるとは言っとらんぞ」
しかしまあ……後でアーカイブは見直す必要はあるが。
「視聴者との約束は破れないしな……」
「そうだね。絶頂耐久カウントダウンボイス録ろっか」
「だからそこまでやるとは言っとらん」
『うおおおおお!』
『助かる!:50000¥』
『#瑠花カイ歌枠(ドM付き)トレンド入り記念:50000¥』
もうお金見たくないな。どれぐらい貯まってるのか……あと別にそんなタグ作った記憶ないんだが。桃華の扱い酷くないか。
いや、酷いほど喜ぶから良いのか……?
「一応桃華の名前も入れておいてくれ。さすがにドM付きだと誰なのか……分かるかぁ。そっかぁ」
「べ、別に名前とかなくても……な、なんなら番号で呼んでも……!」
「やっぱキープで」
筋金入りだ。もう放っておこう。こいつは。
「さて。それじゃあ歌枠はこれぐらいにして最後の雑談行こっか。桃華ちゃんも繋ぎっぱなしで放置してごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。放置プレイは嫌いじゃないから」
「もうなんでもありだな……」
まあそれはそれとして。
「さて、締めだが。……お金を頂いた方のコメントも読むか?」
「んー……ちょっと数が多すぎるね。三桁とかあるし。少しずつ読む枠を取ってやる事にします。ごめんなさい」
『ええんやで:50000¥』
『ちなみにこの枠で個人の最高額は200万を越すって見たけど……』
『うせやろ……』
何それ怖い。待って、来年の税金怖いんだけど。
「……税理士さん、Vtopの人に聞いとくね、カイリ」
「ああ。……じゃあまとめて。本当にありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺に続いて、瑠花が。そして、やる必要はないだろうが桃華までやってくれた。
「桃華も収益化通ったら教えてくれ。お祝いでもしよう」
「あ、ありがと……じゃあムチ叩きでお願いするわね」
「お願いするわねで言う内容じゃねえんだよ」
「じゃあ今までのカイリの罵倒音声一時間詰め合わせセットを送るね」
「……!」
「やめろ! クリスマスにプレゼントを貰った子供みたいな目をするな!」
『なんなんだこの配信は』
『お、初見かい? 良かったな。まだ秩序のある時間に入ってこれたみたいで』
『俺なんか入ってきた瞬間鼓膜が消え失せたからな……』
コメント欄も中々の盛り上がりだ(白目)
さて、とはいえ。
「もうすぐVtop加入だな」
「時間が経つのも早かったね。そうそう、【洗礼】は来月の頭からを予定してます。運営さんが近くなったらまた教えてくれるはずです」
「私もカイリ君達と一緒にやるから。もちろんオフコラボで色んな先輩方と……そっか。人と会うんだ」
「コミュ障か。いやコミュ障って言ってたな。……まあ、その辺は瑠花に任せよう」
『それで良いのか』
『瑠花ちゃんがあまやかすからだぞ!』
「という事は私無しで生きられなくなるまであとちょっとって事ね!」
「恐ろしい事を考えてるな……」
でも、最近瑠花に頼りすぎだと俺も思う。もっとしっかりせねば。
そう思って瑠花を見ると、きょとんとした顔で俺を見て。ニコリと笑った。……顔は良いんだよな、こいつ。
「……その辺は後で考えるとして。事務所に入る事になったけど、方針は今まで通りだ。もしかしたらコラボなんかは増えるかもしれないが、基本は俺と瑠花。そして、時々桃華だな」
「そうね。私も基本は個人で配信するわよ。ごしゅ……カイリ君達と配信する事は多くなるかもしれないけど」
『方向転換しないの助かる』
『なんならVtopとのコラボ楽しみすぐる』
俺は一目瑠花を見た。そろそろ良いだろうかと。瑠花はこくりと頷き、取りし切ろうと口を開いた。
「それじゃあ今日はここまでという事で、見て頂きありがとうございます。また配信の告知をしますので、チャンネル登録と各種SNSのフォロー、お願いします!」
一つ間をあけ、瑠花はニコリと笑った。
「それではみなさん良い夜を、おつ瑠花〜!」
「おつカイリ〜!」
「おつもも〜!」
そして……長い配信は終わった。
瑠花に無理やりスタジオで襲われそうになったりしたが、なんやかんやどうにかなったのだった。
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