第25話 収益化の前時間
【朗報】カイリきゅん&瑠花チャソ収益化決定! 今日記念配信あるぞ!
1:Vtuber好きの名無しさん
お前らクレカの用意は出来てるか。俺は出来てる
2:Vtuber好きの名無しさん
マジ? え、俺昨日給料日だったんだけど
3:Vtuber好きの名無しさん
全額投げ銭せよ。俺は貯金の三分の一はぶち込むぞ
4:Vtuber嫌いの名無しさん
えぇ……お前らあんなのになんでそんな金使えんだよ。自分磨いて婚活しろよ
5:Vtuber好きの名無しさん
<<4
好きだからに決まってんだろ
6:Vtuber好きの名無しさん
<<5
これ真理
7:Vtuber好きの名無しさん
正直カイリきゅんも瑠花ちゃんも好きだから幸せになって欲しい。二人の結婚式費用になるなら本望
8:Vtuber好きの名無しさん
分かる。というか普段のあのやり取りを無料で見れてる今がおかしいんよ(笑)
劇場で二人のやり取りを垂れ流すだけでも金取れるわ
9:Vtuber好きの名無しさん
まあ好きな事にお金を使うのは良いだろ。正直名前呼ばれるだけでも価値ある奴には価値あるし。食事と一緒
10:Vtuber好きの名無しさん
ちなみに桃華ちゃんは収益化まだそう?
11:Vtuber好きの名無しさん
まだっぽいけど時間の問題だと思われ。多分【Vtop】に入ったのも影響してるはずだし
12:Vtuber好きの名無しさん
サンクス。ついでに聞きたいんやけどなんで影響してるって分かったの?
13:Vtuber好きの名無しさん
個人と違って企業はある程度動画サイトに融通が効くんよ。いや確証は無いんだけども。でも【Vtop】の新人Vみんな一ヶ月足らずで収益化してるから信憑性はタカシさんです
14:Vtuber好きの名無しさん
タカシさん助かる。カイリきゅんからVtuberにハマった口だからにわかなんよね
15:Vtuber好きの名無しさん
誰だって最初は知らない事だらけや。人に聞けるのは良い事やで
16:Vtuber好きの名無しさん
良い空気なってる所悪いんだけどこれ事務所にどれぐらい取られるん?
17:Vtuber好きの名無しさん
あー……分からんわ。あれ? でも正式な事務所入りまだだし全額入る?
18:Vtuber好きの名無しさん
マ!? ちょっと借金してくる!
19:Vtuber好きの名無しさん
待て待て。早まるな。カイリきゅん達がどんな契約してるのかも分からないんだから。ちょいと瑠花チャソに聞いてくるわ。リプ返してくれるし
20:Vtuber好きの名無しさん
助かる
◆◆◆
170:Vtuber好きの名無しさん
【朗報】投げ銭『全額』カイリきゅんと瑠花チャソの懐に入ります
あ、全額って言っても動画サイトの手数料は除くからね
171:Vtuber好きの名無しさん
は、え!? マジ!? ガチで億万長者狙えるんちゃう!?
172:Vtuber好きの名無しさん
全額はやばいな。でもさすがに……いや分からんな。カイリきゅんガチ恋多いし。なんだかんだ瑠花チャソも多いからな。登録者はトップに比べると劣るとは言え同接は並ぶし
173:Vtuber好きの名無しさん
これは……荒れるぞ。トレンド入りもしてるし。瑠花チャソもちゃっかりイラストと自分達の配信の切り抜き拡散してるし
174:Vtuber好きの名無しさん
瑠花ちゃんってその辺しっかりしてるよね。商売人っていうかさ
175:Vtuber好きの名無しさん
瑠花チャソ古参だけど昔からしっかりしてるぞ。将来は養いたい人が居るとかで。あの頃は病気にかかった妹説とか両親が離婚して困窮説とか出てたな。多分というか確実にカイリきゅんだろうが
176:Vtuber好きの名無しさん
はえー。そうなんや。でも塩梅とか凄いと思うわ。あ、宣伝だなってわかるけどあんま不快にならへんし
177:Vtuber好きの名無しさん
カイリきゅん程じゃないけど俺達視聴者の事も大切にしてくれてるからやろな。普通あんな頻度で神イラストあげれないって。
178:Vtuber好きの名無しさん
なるほどなぁ……今日のイラストも平気で10万人以上に拡散されてたし。凄いわ。
179:Vtuber好きの名無しさん
まーたトレンド入りしてるし。楽しみにしとこ。どうせゲストで桃華ちゃんも出るだろうし
180:Vtuber好きの名無しさん
せやね。お金も用意しとこ
◆◇◆◇◆
「え、ゲロ吐きそう」
「わ、私をエチケット袋代わりにしたいって事!?」
「どう生きてたらそんなおぞましい発想が出来るのか脳をかっぴらいて見てみたいわ」
「良いけど……海流の事しか出てこないよ?」
「もっとおぞましかったか……」
現在。世界のトレンド一位である。狂ってんのかこの世界は。
「もっと吐きそうになること言っていい?」
「ダメ」
「配信の待機所作ったんだけどコメント欄が真っ赤」
「うお゛え゛っ゛」
「嗚咽助かる」
「助からないで」
「ちなみに今の段階で前の復帰配信のお金越したよ」
「う゛っ゛」
危なかった。ガチで吐くところだった。
というかみんなもっとお金大切にして。
「期待が……期待が重すぎる」
「どうする? もっかい初手全裸土下座からの鼓膜破壊しとく?」
「そうしようかな……」
いや、でもな……こいつ困ったらすぐ全裸土下座&鼓膜破壊に逃げるって思われそうだし。なんだよ、全裸土下座&鼓膜破壊に逃げるって。逃げるの下手かよ。
「念の為にカイリが全裸ブリッジしながら叫んでるイラスト描いてて良かった」
「念の為に描くイラストじゃねえんだよ。てか土下座させろよ」
「同じ事何回もやってたら飽きるかなって」
「戻れよ。ラインギリギリならもう勢いつけて跳んじゃえみたいな思考をやめろよ」
「個性を出さないとこの世界で埋もれちゃうよ」
「ぐうの音しか出ない」
まあそれはそれとして、本格的にBANをされかねないので却下をして。
SNSを眺める。
「……視聴者がお金の集計してるんだが。この利益ってさすがに嘘だよな」
「大体合ってるよ。動画サイト側に何割かは持っていかれるけど」
「待機所で既に三万人が待機してるってのは?」
「見ての通り」
「吐いていい?」
「あーん」
「やめろ、口を開けるな。吐かないからな」
わざわざ俺の下に顔を持ってきて口を開ける瑠花の顎を手で押して閉じさせる。
「……収益化ってそんなに大きい事だったんだな」
「ん。私達はちょっと特殊かもね。一気に伸びて話題性が高い時に来たから。あと熱心なファンがそこそこ居るからね」
その言葉に少し驚きながらも。そういえば瑠花は案外しっかりしていたなと思い直す。
「……いつもそんな風に喋れたりしない?」
「カイリに蕁麻疹が出来るけど良いの?」
「確かに……ダメだわ」
もう瑠花のコレが日常の一時として染み付いてしまっている。コレがなければ生きていけない。
「あれ? 俺って瑠花中毒では?」
「ふふん。十五年かけて刷り込んできたからね!」
「孔明もびっくりの罠だな。仕掛けるのに十五年とか」
はあ、と息を吐いて背もたれに体重を預ける。
「そんなに緊張してる?」
「……かけられるものが違いすぎる。今までは趣味の延長戦みたいなものだったが。お金が絡んでくると話は別だろ」
そこに金銭が発生するという事は、それだけ面白い物を求められているという事。
……いや。目を背けていただけだな。事務所に入るという事から既に仕事の範疇になるのだから。
「んー。私はね、カイリ」
瑠花がそんな俺を覗き込んで。
膝の上に座ってきた。
「嬉しいよ。好きな事してお金が貰えるんだから。……初めてイラストの案件が来た時もそうだったんだけどね」
「……二年前だったか」
瑠花は昔から絵を描いていた。……が、SNSに投稿し始めたのは十二歳の時から。
規約の関係上、瑠花の母親が管理していたが。当時から凄い伸びであった。
『小学生の絵とは思えない』
『俺より上手くて草』
今思えば肯定的な意見だけではなかったのだろうが……瑠花の母親が管理していたから知らなかった。
そして、瑠花が中学二年生に上がって少しした時。案件が来たのだ。
とある同人誌に一枚絵を描いて欲しいというものだった。
「……あの時の瑠花は凄い喜びようだったな」
子供みたいに喜んでいた……いや、実際に子供なのだが。
その日は夜であったが、家まで来て。どれくらい嬉しいのか夜通し聞かされたのだ。
「今考えるとちょっと恥ずかしいね」
「羞恥心バグってんな。もっと他に恥ずかしがる所はあるだろ。……まあそれは良いとして」
このままだと話を脱線させてしまいそうなので置いておく。
瑠花はそのまま俺にしなだれかかるように倒れてきた。柔らかいものが当たり、椅子が軋む。
「でも、私が一番好きなのはね。カイリと一緒に居る時間だよ」
「……」
ドクドクと、瑠花の心音が伝わってくる。
「私は人生は一度しかないから全部楽しみたいって思ってる。それなら好きな事を仕事にしたいから。だから嬉しいんだよ? カイリと一緒に居られるし、生活も楽しめるぐらい余裕が出来るし」
瑠花らしい言葉に思わず笑みが零れた。
しかし――
「プレッシャーとか。感じないか?」
「感じない、って言ったら嘘になるね。イラストを上げる時とか特に。でも、待ってくれる人が居るから描けるし上げられる」
「……配信も同じか?」
「半分は一緒。……もう半分はカイリと居るから。カイリとなら最高のコンテンツを生み出せるって分かってるから大丈夫なんだよ」
瑠花がこつんと額を当てて、笑顔でそう言った。
とても綺麗な――笑みであった。
「瑠花らしいな」
「ん、私だもん」
そう言って――瑠花と視線が絡んだ。
「……もしかして今ならイけるのでは?」
「台無しだよ。言葉にするなよ。というか配信があるからどっちにしろ無理だよ」
配信まであと一時間を切っているのだ。いや、配信がなくてもしないのだが。
「というかなんで俺に乗ったんだよ」
「わんちゃんないかなって。ほら、意識するかなーって?」
「やめて」
背もたれから体を離し、瑠花が倒れないよう背中を手で支える。
「さ、配信の準備するぞ」
「はーい」
機材の確認や今日の内容の再確認。SNSでの拡散などやれる事は多い。
瑠花を元の椅子に座らせ――瑠花を見た。
「ありがとな」
気がつけば、先程の緊張はかなりよくなっていた。なんだかんだ言いながらも俺は瑠花に助けられている。
瑠花は俺を見て笑った。
「お礼はまた夜、体で聞かせてね?」
「照れ隠しと呼ぶには下劣すぎる要求だなおい」
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