1章最終話 第20話 みつらじ!&三十万人記念配信!
『お゛か゛え゛り゛か゛い゛り゛き゛ゅ゛ん゛』
『文字で鼓膜潰れたわ』
『脳゛内゛再゛生゛余゛裕』
『うるさいうるさい。文字が近所迷惑』
もうコメントは大盛り上がりであった。こうして見ると、俺の復活は望まれていたんだなと思い。嬉しくなった。
「お、カイリ君の十八番来ちゃう?」
「鼓膜塞がないとなぁ。
「サラッと恐ろしい事が聞こえてきたんだが? というか十八番じゃねえよ? なんだ大声が十八番って。就活で『特技は?』『大声でお前の鼓膜を破壊出来ます』とか言ってみろ。即落とされるぞ」
『草』
『お前呼びしてる時点で落とされるんだよなぁ』
俺は一体何を話しているんだ。とりあえず、話を戻すよう天井を見た。
「ま、まあ? 話はこれくらいにして中身行こー! なんか瑠花ちゃん達とコラボしてって意見がめちゃくちゃ来てたから。その辺の質問に答えてくよー」
手馴れた様子で視界を進行していく様はさすがと言える。天井がPCを操作する。
「という事で一つ目どん!」
『もし最近流行りのあのVtuberとコラボするとしたら何がしたい?』
「まずは定番のこれだね。カナちゃんは何したい?」
「タイマン」
「あれ、おかしいな。今ここにヤンキー居なかった?」
え、怖い怖い。何急にタイマンしようとしてきてるのこの人。
『カナタちゃんは初対面の人と目が合ったらバトル仕掛けてくるタイプの人間だからなぁ』
「ポ〇モント〇ーナーかよ。いや。最新作の作品にだと話しかけないと相手して貰えないぞ」
「話しかけないと相手して貰えないって現実味あって良いね」
「なんで今背中から刺しに来た?」
すっごい今来たんだが。心に。やめて。受身体質なんだ俺は。
「ま、まあ。カナちゃんのは今に始まった事じゃないからね。じゃあ次、瑠花ちゃんは何やりたい?」
「ドスケベ神経衰弱」
「ドスケベ神経衰弱……ドスケベ神経衰弱!? 今脳が理解しようとしなかったよ!? 何それ!?」
「ああ、ドスケベ神経衰弱ね」
「なんで分かるの? え、そんな有名なの?」
有名であってたまるか。そんな神経衰弱。
「あ、私も聞いた事あるなぁ」
「なんかあれだよね。口コミで広まってる感じの」
「この前話した『性癖破壊ゲーム』を考案したあの子がこっそり広めてるみたいだよ」
「都市伝説かよ。それかミーム汚染をするタイプのSCPなのか。お前のその謎の友達は」
その友達があと三十年くらい産まれるの早かったら、こっくりさんを広める張本人になってそうだな。
『初耳なんだけど。ちなみにルールは?』
「あ、ルールはね。トランプの代わりに二枚一組の性癖とか体位とか書かれたカードを置いて神経衰弱するんだけど。例えば『えっぐいべろちゅー』とか当てたら椅子に縛り付けてる子にやってく感じね」
待て待て待て待て。今すっごい不穏な言葉が聞こえてきたんだけど
「当然のように椅子に縛り付けられてる奴居るんだが。というか四次会くらい終わった後のヤリサーが考えてそうなくらい頭悪いゲームだな」
「ちなみに私の友達は幼馴染を縛り付けたはいいものの抜け出されたらしい。手錠と足枷も付けたのに」
「え、なに。人間? それともやっぱりSCPなの?」
「……人間? かな?」
「なんでお前が首を傾げるんだよ」
『瑠花ちゃんの交友関係謎すぎる……』
『カイリきゅんどうにかして』
無理だよ。俺が一番どうにかしたいと思ってるよ。
「ま、まあ。さすがに出来ないからね。配信では」
「配信外なら出来るみたいな言い方するのやめて。燃やされる」
『炎 天井蜜 炎』
『炎 天井蜜 炎』
「燃やされるのそっちなのかよ」
普通俺だろうがと思いながらも。話は進んでいく。
「じゃあ次、カイリ君は? 何かやりたいのとかある? ローション相撲とか?」
「魂を芸人に売ったのか。絵面やばい事になるから」
「じゃあ無人島でも行く?」
「いやそれVtuberがやる企画じゃないだろ……」
「実際やってる人達もう居るから。二番煎じになるんだけどね」
「居るんかい」
なんで無人島行ってるんだよ。バーチャルを生きろよ。
また話が脱線しそうになったので思考を戻す。
「やりたい事か……。まあ、無難にゲーム実況コラボとかしたいかな」
「お、良いね。私のゲームスキルでコテンパンにしてあげるよ」
「パーティーゲームでCPU:弱いでフルボッコにされてたみっちゃんが何言ってんの」
『あの配信は面白かった』
『まさかCPU:弱いに勝つまで耐久になったあげく十時間かかるとは思わなかった』
そんな地獄みたいな(褒め言葉)配信があったのか……いや。そういえば昔トレンドで見たことあったな。
#人生は甘くない。天井の配信用のタグがトレンド入りしていた。それと#伝説確定も。あの時のSNSはお祭り状態だったな。
「ま、まあ? べ、別に? ぼっこぼこに出来るし? 私もあれからコソ練してたし?」
「めちゃくちゃずるいじゃん。不公平でしょ」
そんな会話に笑いながら。最後に。
「そういう天井は何かやりたい事はないのか?」
「私? 無難にあれかな。性癖暴露大会」
「無難とは」
「私の性癖の広さに勝てる人は居ないから! みんなドン引きするんだよね」
「あ、蜜ちゃんもそう?私もケーキ化とか
「参りました」
『蜜ちゃんが……負けた?』
『トップVtuberに頭を下げさせた女』
『閻魔もドン引きする性癖』
『三分の二知らん言葉だったんやけど』
えぇ……?
「さ、さすがに冗談だよな?」
「ふふ。さすがに……冗談だよ?」
「怖い怖い間が怖い」
大丈夫だよね。俺あんなやべえ事されないよね。
「ま、まあ! とりあえず次の行こう!」
天井が強引に取り仕切り。次のコーナーへと向かったのだった。
◆◆◆
「今日はありがとうございました。本当に」
「良かった良かった。最初より随分顔も良くなってるし」
「そやねぇ。次こそタイマン張れそうで良かったわぁ」
「カナちゃん。リスキルしようとしないで」
「そうだよ。性癖タイマンなら私が受けてあげるからね」
「勝てん勝てん」
芦澤の言葉に天井がギョッとした。
「……瑠花ちゃん。カナちゃんが自分から勝てないなんて言ったの社長以来だよ。とんでもない事だよ」
「え、なんで一企業の社長と対決しようとしてたの」
「若気の至りってやつかな。あの時の社長の圧は凄まじかった……」
そんな会話をしながら、【Vtop】の事務所から出る。
そこで、天井達は立ち止まった。
「さて。二人とも、今日はお疲れ様。配信もめっちゃ人伸びたし。事前に言ってた通り、投げ銭は半分事務所から振り込んでおくね。……とんでもない量になってるから。来年の確定申告とか気をつけるんだよ?」
「あ、大丈夫。私が慣れてるから。カイリにも教えられるし」
「そういえば本業イラストレーターだったね、瑠花ちゃん……。混沌の申し子かと思ってたよ」
「職業ですらない」
まあ、気持ちも分からなくは無いが。というか折半だったのか。初めて知ったんだが。
……俺が復活って言った時。赤いのが凄い数飛んできてたような気がするが。
まあ良いか。
「それじゃあ二人とも、気をつけて帰ってね」
「【Vtop】来たら歓迎するからなぁ。そんときは週一でコラボしようなぁ」
「もしかしてみつらじ! のレギュラーにしようとしてる? ……まあ。前向きに考えておく」
考える、と言っているが。もう心では決めていた。
瑠花を見ると、ニコリと微笑まれる。そして、少し慌てたように二人を見た。
「か、カイリがムラムラしたって顔してるから。失礼するね」
「勝手に人を性欲モンスターにするんじゃねえ。性欲モンスターが」
瑠花の額にチョップを入れると。甘んじて受け入れていた。
「あ、桃華ちゃんにも話しといてくれな? いきなり連絡来たらびっくりするだろうし」
「うん、分かった。もし入るとしたら三人まとめて入るはずだから」
……確かに、桃花は俺達が入ると言えば入る気はする。いや、実際のところは分からないが。
「それじゃあ、また」
「もし入らなかったとしてもコラボはしようね。みつらじ! のレギュラーにしても良いし」
「……考えておこう」
そして、瑠花と共に手を振り。
その場を後にしたのだった。
◆◆◆
「うう、これがNTR。オフパコラボは私とするって言ったのに」
「言ってねえ。あとオフコラボだ」
「そうだよ。オフコラボしても私とカイリのイチャイチャを見るだけだからね。あ、椅子にはしてあげるよ」
「とんでもねえ事言ってんな」
「ありがとうございます!!!」
「とんでもねえ奴しか居ねえなここは」
この調子でオフコラボなんてして……大丈夫なのだろうか。
まあいいか(ヤケクソ)
そんな事より。現在は配信中である。本当にそんな事よりなんだよな。
そう、配信中なんだよ。しかも特別なやつだよ。
三十万人突破記念である。俺が休止してる間にそれだけ増えていたのだ。
「えー。それでは、本日は重大発表があります」
「実は私達、新しい生命を迎える事が出来ました」
「炎上確定演出やめろ。高校生でできちゃった婚は不幸しか産まねえぞ」
「産まれるのは赤ちゃんだけにしてって事?」
「上手いこと言おうとするな。そんなに上手くもないし」
『はよ発表しろ』
『あと一時間くらいやり取り続けて欲しさはある』
『カイリきゅん! 私とは遊びだったの!?』
コメントも相変わらずである。あと一時間も続けたら死ぬぞ。俺はため息を吐き、水を飲んだ
「という事で。俺達は【Vtop】に所属する事になりました」
『どういう事で???』
『サラッととんでもない事発表しないで?』
『え、まじ? まじなの?』
『天井蜜:まじです』
あ、本人来てる。
「蜜ちゃんだ。やっほー。元気してた?」
「あ、蜜さん……? お久しぶりです」
「桃華が普通に挨拶するのすっっごい違和感」
そういえば、桃華は実際に話を聞きたいとVtopに行ったらしい。天井達のマネージャーに面接も受けたが、一言目で合格を言い渡されたとか。
『それでは自己紹介をお願いします』
『わ、私は……惨めな雌豚、です……』
『合格!』
いやなんでだよ。自己紹介しろよ。なんで合格にしてるんだよ。個性<常識であれよ。
ちなみに面接官は女性だったらしい。こちらも一度話し合う機会があり、なんでドン引きしないんだと聞いてみたが。『慣れてるので……』と返された。地獄か? あそこの事務所は。
……まあ。実際は。桃華と少し話して常識がありそうだから問題ないと考えた、とか言っていたが。
そんな事を考えていると、瑠花が説明に入っていた。
「ちなみに所属は来月からです。明日にはカイリのボイス販売もあるから。みんな買ってね。使いやすいよ」
「そういえばそんなのあったな……」
ボイスの収録はかなり前だったので忘れていた。
「あ、おまけにドSカイリの短めの8P漫画も描いたから。一応健全だけど注意ね」
「全財産注ぎます瑠花神よ」
「注ぐな注ぐな。もっと有意義な事に金を使え」
「性活の質が向上するのよ? いくら注いだって良いじゃない」
「なんか生活のニュアンスがおかしかったな」
『天井蜜:私も買っちゃおうかな』
『芦澤カナタ:私もー』
「あれ? これもしかしてめっちゃ恥ずかしいやつでは?」
知人。……知人で良いんだよな。知人にあれを聞かれるとなるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだが。
「一応罰ゲームだからね」
そういえばそうだった。ぐ。仕方ない。
恥ずかしくて熱くなっている俺の頬をつついて遊ぶ瑠花。そんな彼女を見ながら。ため息を吐く。
……これ。事務所に所属となったら、もっと大変な事になるんだろうな、と。
それが恐ろしく……ほんの少しだけ楽しみであった。
第1章 幼馴染とVtuberになってみたら大バズした<~完~>
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