第17話 桃華ちゃんとコラボ! ホラゲー編その二

「ふんぎゃあああああああああああああ」


「実はお化けが怖くて中学に上がるまで私とお風呂入ってた」


「いやあれお前が押し入ってきただけだがうあああああああああ」


「初めて読んだえっちな本は下校の時の道に落ちてた同人誌で幼馴染イチャラブ本。ちなみにお父さんが捨てようとしてきたからこっそり盗んできたやつね」


「待って待って。俺の知らない情ホピッ」


「最近聞いたASMRは耳舐め」


「なんで知ってんの!?」


「ちなみに私は百合ものの言葉責めを最近聞いてたわよ」


「なぜ今言おうと思った?」




 という感じで。流れ作業のように俺は生と死を繰り返していた。


『まるで編集してるかのようなDIEジェスト』

『何が一番おもろいってこれ同級生が聞いてる事やろ』


 そうじゃん。痴態さらしてるの俺じゃん。


「情けをくれ」

「……? 残り九十連発してって事?」

「俺を殺す気か」


『FEVERTIME突入で草』

『次々明かされていくカイリきゅんの性癖』


 コメントまでノリノリである。慈悲はないのか。情けをかけてくれないのか。


「か、カイリ君……羨ましい。私も言葉責めして欲しい」

無敵ドMが……」

「あ、いい事思いついた」

「すっごい嫌な予感がする」


 基本的に瑠花の『いいこと思いついた』は地雷である。


「まあまあ、ちゃんとカイリにとってもいい事だから」

「そ、それなラッッッッ」

「カイリはストレスが溜まるとメスガキ理解わからせものを見たくなる。あ、純愛のやつね」

「まだ続いてたの!?」


 これはもうリスタート出来ない。でもゲームオーバー画面化け物が写っててめちゃくちゃ怖いんだけど。


 思わず瑠花の体に顔を埋めた。


「やっぱ話すまであと三時間くらいこの画面で居させて」

「はよ話せ。画面切るぞ」

「もー、しょうがないわねー」

「なんだろ。死ぬ度に蔑んだ目で見られながらケツバットとか……ッ」

「それがご褒美になるのは桃華だけだ」


 そして、瑠花を見ると。ニコリと笑って。


「カイリが百回死んだら言葉責めボイス販売しよ」

「嫌だが?」「やった!」


 俺の声と桃華の声が重なった。


 瑠花は何を言い出してるんだ? 


「需要あるから視聴者も喜ぶし。桃華ちゃんも喜ぶし。売上はカイリに入る。今度こそウィンウィンだよ!」

「ちょっと否定しにくいのやめろ」


 誰が男の言葉責めボイスで喜ぶんだよ。一部の層にしか需要ないだろ。


 と、思っていたのだが。


『あるが?』

『言葉責めカイリきゅんとか必要だが?』

『なんなら責められるカイリきゅんも欲しいが?』


 コメントはこんな反応である。


「えぇ……レベル高すぎないかこの変態共」

「ありがとうございますッッッ!」

「お前には言って……いやお前が一番変態じゃねえか」


 あ、だめだ。これすらもドMにはご褒美になってしまう。


「【急募】ドMへのお仕置きの仕方」


『閉じ込めて放置』


「邪神の封印方法じゃねえか」


 まあ……仕方ない。


「百回死ぬ事もないだろう。受けてやろう」

「お、乗り気」

「やった! ボイス!」

「まだ確定してねえからな?」


 まあ大丈夫だろう。あと九十回もあるんだし。


「余裕だ余裕」


 ◆◆◆


『即 落 ち 二 コ マ』

『カイリきゅん理解わからせ』

『誰か切り抜き作ってくれ』



「という事で罰ゲーム決定ね」

「ぐっ……ま、まさか。あれから一度も抜けられないとは」


 結局同じ場所で九十回も死んだ。何でだよとか言われそうだが。


「カイリ手ぷるっぷるだったもんね」


 瑠花の言う通り。俺の手はぷるっぷるである。握れてる事すら奇跡だ。


『ぷるっぷる可愛い』

『にぎにぎしてあげたい』


 くそ……ホラーにアクション要素を組み合わせたらクリア出来る訳ないだろ。


「という事でボイス販売決定ね」

「……男に二言は無い」

「男らしい……踏んで欲しい」

「文頭と文末の因果関係がなさすぎるんだが」


『ボイス販売助かる』

『十個分買います』


 まあ、それは置いておこう。話を戻すと。


「これどうやってクリアしよう……」

「あ、私やろっか?」

「……出来るのか?」


 意外にも。桃華がそう言ってきた。


「というかどうやってやるんだ」

「私もまだやってないけど、ダウンロードしてたから。画面共有だけすればいけるわよ」

「おお……じゃあそれで頼む」


 そして、桃華がすぐに準備を終わらせた。


「同じ画面までしてきたわよ」

「おお、ありがとう」

「お礼を言うくらいなら罵倒しなさい」

「歴史に類を見ない最低の返しだよ」


 そして、桃華がプレイを始めようとしたのだが……



「きゃあああああああああ……んっ」

「うおあああああああああああああ……ん? 今喘がなかった?」

「え? ホラーゲームって襲われる事に興奮するゲームじゃないの?」

「そんな特殊な遊び方するのはお前くらいだよ」


 BANされかねないので結局交代となった。


「最終兵器瑠花。出陣せよ」

「任せたまえー。全員ぶっ倒してやるー」

「これそういうゲームじゃないから」


 瑠花がコントローラーを持つ。ふはははは!


「もう敵無しだピッ」

「そういえば視聴者さんと桃華ちゃんに言ってなかったけど、私結構ゲームも得意なんだ。種類問わず」


 そう。その通りなんだが。



「さ、さっきからギリギリをせめうおおおぉぉおぉぉぉ」


『カイリきゅんの声がドップラー効果みたいになっててなんか草』


「……っ、こ、これが焦らしプレイ」


『※違います』



 化け物から逃げるギリギリを攻める瑠花。俺達を弄びつつも、その場から逃げ切った。


「お、俺の一時間をいとも簡単に……」

「私はホラゲー得意だからね!」


 そして。次々遭遇する化け物から簡単に逃げ去っていく。



 以下ダイジェストである。


「うおあああああ! なんで今の避けれんの!?」

「絵ぇえぇ! 今動いたっ! 動いたからっっ! 絵えええぇ!」

「……クローゼット? なんで外に?」

「開けてみよっか」

「ひぎゃああああああ……え? 陽キャA?」

「隠れてたみたいだね」

「いやこれ絶対見つかピギャ」

「きゃあああ! 体が変わってく! ……に、肉体改造系。母乳とか出るのかしら」

「実はお前結構余裕あるだろ」


 とかなんとか言いながら、先程までのものはなんだったんだというペースで進んでいく。


 その最中、化け物が昔この辺りの人体実験施設から抜け出した元人間である事が……ん? なんかの話に似てるな。


「あ、気づいた? この作品、前やったホラーゲームのファンメイド作品なんだ」

「まじ?」

「まじ。ちなみにあのゲームの最終戦で攻撃するを選んでたらこれと同じくらいのびっくり要素が3Dのめちゃくちゃ綺麗な画質で流れてたり」

「あの時の俺ナイス! 絶対漏らしてた! 全世界に醜態を晒さずにすんだっ!」

「う、うぅ……あっ」

「全世界に醜態を晒す、で反応してるドMは早くどうにかしなければ」


 と、話している間にも瑠花はすいすい探索を進めていく。


「最後の鍵見つけたよ」

「早くね?」


『そりゃこのゲーム攻略は長くて二時間とかの短編だし』


 え? 俺最初だけでその半分も使ってたの?



「という事でセーブ画面。後はカイリ、頑張ってね」

「え? あ、ちょまおんぎゃああああああああああああああああああああああああああ」


 化け物が画面いっぱいいいいいいいおっぱいいいいいいいい!?


「なんでこのタイミングでおっぱい押し付けてくるの!?」

「……! 羨ましい!」

「同時企画やろうかなって」

「やるなうああああああああおいかけてくりゅううううううう」


 全速力で追いかけてくる化け物から逃げる。


『地獄みてえな配信になっとるやんけ』

エロス&カオス瑠花チャソVSビビり系ヒロインカイリきゅんVSドM桃華ちゃんVS化け物……ファイッ』

『化け物が可哀想だろ!』

『またしても何も知らされてない化け物君……』

『化け物君住処荒らされた上にこの仕打ちとか可哀想』

『サラッとカイリきゅんヒロインになってて笑う』


 それから俺と化け物との死闘一方的な試合は続いた。


「おんぎゃああああああぱいいいいいいい」

「ああああああああああちちいいいいいいいい」

「柔らかいよおおおおおおおおおおおおおおお」

「おっぱああああああああああああああああい」


「淫語をむりやり言わされてるドMっ子みたいなカイリ君も悪くないわね……」

「良いよね。化け物×カイリシチュ」


『会話のレベルが高すぎる』

『またしても巻き込まれる化け物(年齢不詳)』


 そして……一時間後。


「う、うおおおおおおおおっぱいいいいいい! 逃げ切ったぞおっぱいいいいいいいい!」

「偉い偉い、よく頑張った」

「お疲れ、カイリ君」


『お疲れっぱいいいいいい!』

『無事鼓膜の予備がなくなったぱいねぇ……』

『おっぱい! おっぱい!』


 俺はコメント欄を見て絶句した。


「え、こわ。何お前らおっぱい言ってんの。セクハラだぞ」


『????』

『無意識ぱいだったか???』


 え、こわ(二度目)。無意識ぱいってなんだよ。


「ちなみに同時企画の発表もするね」

 そういえばそんな事もしてたな。


『記録は-1時間42分でした!』

『マイナス???』

『配信始まってすぐで草』

『そういや瑠花タソ抱きしめてるって言ってたもんなぁ』

『#カイリきゅん完全敗北シリーズ助かる』


 え? は? ま、まけてないが?


「ま、ままままけてないが?」

「え? じゃあ続ける?」

「ごめんなさい負けでいいです」

 という事で、エンドロールが流れ始めた。



「終わったあああああああああ」

 俺はコントローラーを置いた。しかし、それにしても。


「俺多分今日はもう動けないな。はは、すげえ。足がっくがく」

「快楽堕ち系統のえっちな漫画の最後のページみたいになってるね」

「もっと他に例えあっただろうが」

「う、羨ましい……」

「羨ましがるな。……よし、雑談して終わるか」


 エンドロールが終わり、作者さんへのお礼を告げてから。画面を切り替える。



「とりあえず、一つ分かった事があるな」

「あ、カイリも? 多分一緒の考えだから同時に言お」


 瑠花の言葉に俺は頷き。口を揃える。


「桃華(ちゃん)とはオフコラボするべきだ(よね)」


 やはり言いたい事は一緒だったらしい。


「え、ええ! オフパ「オフコラボ、だ」」


 問題発言を重ねようとする桃華へ俺は続ける。


「桃華。今のところお前視聴者すぎるぞ」

「そうだよ、もっと我を主張しないと」


『ドMに我を主張しろと……?』

『二人の我が強すぎる定期』

『まあ、言いたい事は分からんでもない』


 俺達の言葉に。桃華がきゅっと口を結んだ。


「なんとなく、だが。オフコラボをすれば俺達と合う気がするんだよ」

「うん、そうだね。オンラインでもまだミュートっていう逃げ場があるから。オフコラボなら多分問題ないし」


『これが類友ですか』

『オフコラボ楽しみ』


 ……とはいえ。無理は言えない。


「ああ、返事は今度で良いからな」


 とりあえず逃げ道だけ用意し――

「やるわ」

 俺の言葉に。桃華は力強くそう返した。


「……ええ、そうね。今回はカイリ君達のファンになりすぎてた。ごめんなさい」

「謝る必要はないよ、桃華ちゃん。楽しかったのは本当だし」

「ありがとう、瑠花ちゃん。……少し、引っ越す必要があるから。もうしばらく後になるけど、良いかしら?」

「ああ、もちろんだ」


 という事で、次のコラボはオフコラボへと決まった。


「それじゃあ時間もいい感じだし。終わるか」

「ん、そうだね」

「分かったわ」


 一度、瑠花と桃華を見て。頷くのを確認する。


「それじゃあ。おつカイリ。また明日の配信でな」

「おつ瑠花〜」

「おつもも〜」


 そうして俺は、配信を切った。明日もあるのだから、ゆっくり寝なければ。






 ……しかし。次の日、俺は配信を行う事が出来なかった。



 次回 カイリ、病む(シリアス含)

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