第16話 桃華ちゃんとコラボ! ホラゲー編その一

「第二回! 桃華ちゃんとコラボ! ホラゲー編! 始まるよ!」

「なななななななななななあ? ううううううそだよな?」

「ごくり……」


『カオス配信キター』

『今日は鼓膜多めに用意してる』


 ついに来てしまった。この日が。もう二度とやらないと思っていたのに。


「ちなみに今日はホラー要素多めだから。カイリ、頑張ってね」

「ああ、三途の川が見える……おじいちゃんが手を振ってる」

「カイリのおじいちゃん、この前血管年齢二十代だったって自慢してたでしょ」


『いや元気すぎて草』


 そういえばそんな事も報告してきたな、おじいちゃん。しかも逆立ちしながら追いかけてきたから腰を抜かした記憶がある。


「まあそれは置いておこう。それじゃあおつカイリ〜」


『終わらせるな』

『#ホラゲーから逃げるなカイリ・ホワイト』


 くそ、それっぽく終わらせようとしたが無理だったか。


「桃華ちゃんも大丈夫そう? 準備出来てる?」

「だ、大丈夫よ。この時のために全財産はたいて良いボイスレコーダーも買ってきたから」

「何してんの? 何のために?」

「し、羞恥プレイ……悪くないわね」

「そうだった。この子Mだった。ドが付くタイプの」


 というか画面怖くない? なんでカーブミラーが写ってん「う゛あ゛あ゛ああああああああああああ」

「きゃああああああああああああああああ」

「え、えっと、きゃあ?」


 俺と桃華はガチ悲鳴であるが、瑠花が戸惑ったように声を上げていた。


『瑠花チャソだけ強キャラ感やばくて草』

『しっかり桃華ちゃんもビビってるやんけ!』


「い、いいいきなり幽霊を映すな! 怖いだろうが!」


『ホラーゲームって知ってる?』


 いや怖いだろうが! ……怖いだろうが! 幽霊だぞ!


「はいはい、怖くない怖くない。ぎゅってしようね」

「うぅ……」

 ヒトハダアッタカイ。ヌクヌク。



『ママァ……?』

『騙されるな! それはママじゃなくて邪神だ!』

『ここでカイリきゅん以外の人間はSAN値チェック入ります』

『人間じゃなくて助かった……』


 なんかTRPG始めてるな、視聴者達。


「い、いいなぁ……カイリ君、私の事も抱きしめてくれない? 骨折ってもいいから」

「幽霊より怖い事を言うな」

「じ、じゃあ! 今度オフパ……オフコラボしない?」

「おい。炎上するからやめろ」


『とんでもねえ言葉が聞こえてきてて草』

『オフパ……タコパの親戚かな(純粋)』


 なんでこんな個性強いのとコラボしてるんだ俺は。


 ……瑠花が決めたからだな。


 しかし、瑠花が選んだ人材と考えれば納得してしまう自分が憎い。



「これは幼馴染兼ママのとっけ……ママの特権? カイリにおっぱいをあげても罪には問われないって事だよね!?」

「罪に問われるよ? 俺が」

「つまりおっぱいは違法って事?」

「違法……な、なんだかえっちな響きね」

「違法じゃなくておっぱいの方がえっちだろ」


 なんで俺らはホラゲー配信でおっぱいの違法性について議論してるんだよ。


「……もうちょい話のIQ上げないか?」

「じゃあ数学上の未解決問題でも解く?」


『こんな配信で数学の謎を解き明かそうとするな』


 というか。これはホラゲー配信だぞ。いや、俺としては都合が良いのだが。


「じゃあそろそろ始める?」

「うっ。急に腹痛が」

「だ、大丈夫!? お薬入れてあげるから早く下脱いで!」

「なんで座薬なんだよ。どっから持ってきた」

「昔カイリが風邪引いた時に入れたのだね。余ってたから」

「……! あの時のか」

「お、おしり……ちょっと気になるわね」

「気にするな」


『カイリきゅん……実は処女じゃなかった? ファンやめます』

『男への処女厨いるとか終わってんな日本』

『日本への熱い風評被害』


 俺はそんな世紀末のようなコメントを見て。ため息を吐いた。


「帰りたい」

「ま、ママの子宮に!?」

「母子もののエロ漫画でしか見たことない表現」

「大好きな息子に押されて渋々堕ちていくシチュは私、好きよ」

「聞いとらんド変態」

「んっ」


『ホラゲー配信見に来たら猥談してるんだが。どういう事?』

『十万人記念配信で幼馴染を腕で釣った話をするVtuberだぞ。常識に囚われるな』


 瑠花の温もりを感じながら手をにぎにぎとしていると。ふと、瑠花が見てきた。


「それじゃあそろそろやろっか」

「いやだああああああああああああああああ。あ、桃華。ミュートするな」

「……! そ、そんな……ち、痴態を晒せって事!? こ、興奮するじゃない」

「痴態を晒すな。あと配信中だという事を忘れるんじゃない」


『#当たり前のように情緒不安定になるなカイリ・ホワイト』

『ホラゲー配信なのに始まるまで時間かかりすぎて草』


 むぐぐ……仕方ない。


「は、始めるか」

「ふふ、偉い偉い」

「頭を撫でるな」


『頭なでなではだめでハグはOKとはこのツンデレカイリめ♡』

『久々に鳥肌立ったわ』

『それをして許されるのは瑠花チャソだけだぞ』


 コメント欄を流し見しながら。震える手でコントローラーを握る。


「コントローラーが震えすぎてえっちなおもちゃみたいになってるよ、カイリ」

「!? は、早くオフでホラゲーコラボしない? カイリ君」

「下心を隠す努力くらいはしてくれ」

「ま、丸見えより隠そうとしてる方がカイリは好きなんだ……覚えとこ」

「今すぐ忘れていいぞその情報」


 間違ってないから否定出来ないのが辛い。じゃなくて。


「今日の配信時間五時間とかになるぞ。そのうち三時間が猥談とかBANされるだろ」

「大丈夫! どっちにせよ配信時間は十時間超えるから。誤差みたいなものだからね!」

「待って。そんなむずいの?」


『おにごっこゲーやぞ』

『三桁回は死ぬやろなぁ』


 え、おにごっこゲー?


「やっぱ帰っていい?」

「カイリの帰る場所はもう……ここしかないんだよ」

「気が付かないうちに魔王にでも家滅ぼされてたりする? 覚醒パートまだ?」

「ここがカイリの故郷になるんだからね!」

「あ、違う。相手の故郷を滅ぼして依存させるタイプのヤンデレだった」


『幽霊より怖い人間がここに二人も居る恐怖』

『なんでホラゲーの方を怖がってるんだカイリきゅんは』


 確かに。なんで俺は怖がっているんだろう。


「よし、今なら行ける気ぎゃあああああああああああああ」

 なんかいる! よく分からない化け物がいる!


「落ち着いてカイリ。ボタン押さないと進まないよ」

「あ、ああああああ。わかかかかっうぉんぐわああああああああああああ」


 画面が! 画面いっぱいに化け物が!!!


『悪役のやられる声で草』

『桃華ちゃんミュートしちゃってるし……』


「桃華さん? なんで声出さないの?」

「い、今録音してたから……私の声で汚したくないなって」

「ファンかよ」

 そういえばファンって言ってたじゃねえか。


「はぁ。とりあえず実況の続きを……っと、も、もう大丈夫だぞ? さすがに」


 また画面が暗転したが。さすがにもう大丈夫である。


「とか言いながら抱きしめる力が強くなってたりするんだよね」

「ば、ばらさないで」

『うーん乙女』

『かわいい』


 怖いものは怖いんだから仕方ないだろ!


「……ぜ、絶対オフコラボするんだから」

「俺がもう一回ホラゲーやる事になるからやめて」


 いつまでもこうしている訳にはいかない。ストーリーを進めていく。


「なんで肝試しでホラースポットいくんだよ。最近の若者は分からない」

「若者筆頭でしょ、カイリ」


 どうやら高校生達が有名なホラースポットである館に来たらしい。


 そして、なんやかんやあって異空間的な場所に閉じ込められた。しかも陽キャグループと一緒に来ているらしく、変な音がしたから見てこいと言われて個別行動させられる事になった。


「こわ。なんでこいつ陽キャグループに混じってんだよ。一番怖いわ」

「カイリだって流行りのアニメ映画見に行く人達と一緒に行こうとしてドン引きされた事あるでしょ? あれと一緒じゃない?」

「アッ(絶命)」

「分かる……興奮するよね、あれ」

「ドMってもしかして見方を変えれば無敵だったりする?」


 まあそんな事はさておき。進めていこう。


 あー、嫌だ。怖い。


「という事で今回も同時企画やるよ」

「え?」

「企画内容は『ドキドキ! 死ぬ度にカイリの黒歴史&性癖バラしちゃうよSP』ね」

「待って待って」


 今とんでもない事言わなかった?


「ちなみに死亡回数が百回超えたら終わります」

「終わるね。俺の社会的地位が」

「ご、ご褒美じゃない!」

「誰かこいつらを止めてくれ」


『無理やろ』

『wktk』


 ああ。ダメだこれ(絶望)




 桃華ちゃんとコラボ! ホラゲー編その二に続く

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