第11話 二十万人記念配信&雨崎瑠花お披露目!
「それじゃあ今日も配信始めるか」
「え? もう始めてるけど」
「頼むから確認を取ってくれないか? いつかやらかすぞ」
『こんカイリ〜』
『こん瑠花〜』
モニターを見ると。コメントまでもう流れ始めている。
まあ、始まってしまったものは仕方ない。
「はぁ……こんカイリ〜」
『過去一テンション低くて草』
『二十万人記念だぞ』
そうじゃん。二十万人記念じゃん。そのための配信じゃないか。テンションを上げていこう。
「みなさんこんカイリ〜!」
『解釈違い。帰れ』
「酷くない? 元気出してやったじゃん」
「解釈違いだよ」
「お前もかよ」
というか、こんな始まり方で良いのか。……もういいや!
「という事で始めるぞおおおおおおおおおおおお!」
『舐めるな。それくらいで鼓膜くんは破れない』
「鼓膜破る気なんてないが? ということで」
俺は一つ咳払いをした。
「二十万人まで来れたのも視聴者のみなさんのお陰です。ありがとうございます」
『!?』
『誰だお前!?』
『鼓膜君が早く壊せってイライラしてるんだが?』
『あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛って言え』
「お前らは俺をなんだと思ってるの?」
『そ、そんな……言わなくても分かるだろ……///』
「は?」
やべ、つい素が出てしまった。しかし、コメント欄には変態しか溢れていない。
『キュンッてきた』
「私も。そ、その。お腹の中がキュンって」
なんなら現実にも変態しか溢れていない。
『エッッッッ……?』
『えっちかと思ったけど瑠花ちゃんが瑠花ちゃんだから困惑の方が勝ってる……』
「私の事をなんだと思ってるの?」
「瑠花は瑠花だろうが」
『遠回しに悪口みたいな言い方してて草』
瑠花がジト目で俺を睨んでいる。全力で視線を逸らす。
『目逸らしとるやんけ!』
『全部筒抜けなの草』
やべ、顔が連動してるからバレてる。
「ま、良いんだけど。それじゃあ二十万人記念の始まりとして。私も早速受肉するよ」
『おおおお』
『あの子来るんだよね。四コマ漫画の』
どうにか瑠花から見過ごしてもらい。俺も少しワクワクしてきた。
「ついに瑠花も肉体を手に入れる日が来たのか」
「ふふふ……これで色々な差分も作れるね」
「何を考えてるのか知らんが。BANされるのだけはやめろよ」
そう会話をした後に……準備のため、画面を準備中のものへと切り替えた。
「あ、カイリも目瞑ってて。驚かせたいから」
「ん? ああ、分かった」
瑠花に言われて俺は目を瞑る。
そうして、数秒ほど待つ。
すっっっごい気配を目の前に感じる。
「おい、何をしている」
片目を開けると。鼻が触れ合うほどの距離に瑠花が居た。
「べ、別に? 今えっぐいべろちゅーしたらどうなるんだろうとか考えてないし?」
「本当に何を考えているんだ。欲望がダダ漏れなんだよ」
『今頃目瞑ったカイリきゅんイタズラされてそう。興奮してきたな』
「視聴者にもバレてんじゃねえか」
ミュートしてるのにバレてる。この短期間で瑠花の性格が把握されきってんな。
「まあそれは良いから。早く準備をしろ」
「はーい」
瑠花を急かし、俺はまた目を瞑る。
そのまま、少し待つ。
「よし、準備できた。視聴者のみなさん、カイリ、準備はできた?」
「ああ、いつでも」
俺はそう返すと、瑠花は一度深呼吸をして。
「それじゃ……どうぞ! こちらが私、『雨崎瑠花』の体になります!」
その合図に合わせて。俺は目を開けた。
「……おお」
まず最初に思った事は。『可愛い』であった。
日を反射する水面のような、淡い水色の髪。それを背中まで伸ばし、当然のように顔が良い。実際の瑠乃のように綺麗めな顔立ちだ。
くりくりとした翠色の瞳に、薄く桃色をした唇。……よく見ると、本当に瑠乃に似ている。
そして、制服。こちらは
そして、白ニーソである。うん。何がとは言わんが好きである。絶対領域が。
『おおおおおおおおおおお!』
『めちゃんこ可愛いが?』
『やっぱあの漫画はこれモデルにしてたんだ』
コメントもかなり湧き上がっている。さすが瑠花だ。
「めちゃくちゃに可愛いな」
「ふふ。ありがと」
『心からの『ありがと』助かる』
『微かに感じる乙女で心おかしくなっちゃう……』
瑠花の笑顔に俺もドキッとしながら。流れてくるコメントを目で追った。
『あー。やば。カイリきゅんガチ恋勢だったのに揺れる』
『知らんのか? 推しは増やすものだぞ』
『二人まとめてお嫁さんにしたい』
「なぜ俺まで嫁にしようとするんだこの変態共は」
『ありがとうございますっっっ!』
しかし、コメントも変わらんな。まあそれは良いか。
「あ、それとね。これに合わせてキービジュアル的なのも描いたんだ」
そうして、瑠花が画面を切り替え――
「何これすごっっっ!?」
それは、俺と瑠花が学校に居る一幕であった。
瑠花が前の席、俺が後ろの席。瑠花が振り向き、俺にお弁当のおかずをあーんさせている所だ。
『え? 好き』
『アッ(蒸発)』
『これには尊みの鎌足さんもにっこり』
思わずコメントにも頷いてしまう。
「いや本当に凄いな。この作り込み……色使いも。今までで一番時間使ったんじゃないか?」
「ふふ、ありがと。普段の何倍も時間かけたからね」
空に映る雲や机にある細かなキズ。窓枠やお弁当の中身の米一粒一粒まで作り込まれている。
『神絵師の神絵やば。え、待って。神じゃん』
『お口あーんしてるカイリきゅん可愛いしニコニコしてる瑠花ちゃんもかわよい』
『これは保存不可避』
「あ、後でSNSの方にも高画質のやつ上げとくから。商業利用とかSNSのアイコンとかはダメだけど、壁紙とか個人で楽しむ分は規制しないからね」
『めちゃくちゃ助かる』
『あー、ほんと好き』
俺も楽しみだな。壁紙にしよう。
『カイリきゅんもにっこにこなのほんと尊い』
『初めて尊いという言葉が正しく使われた場面』
その言葉に。俺はハッとした。
いつの間にか頬が緩んでいたのだ。瑠花の絵を見て、瑠花が褒められていたから。
そんな俺を見て、瑠花がにやにやと笑う。
「カイリも私の事大好きだもんねー」
「う、うるさいな。腕を組もうとするな」
どうにか瑠花から目を逸らし。瑠花から離れる。
「ふふ。一緒のお墓入ろうね」
「言葉回しをどうにかしろ」
「こ、子供……沢山作ろうね?」
「お前は
『うーん平常運転』
『もっと釣り合い取るためにやばい話して』
視聴者までいつもの空気に汚染されてしまってる……。いや、俺達のせいなんだろうが。
「やばい話で思い出した。そういやお前この前、いきなり部屋の扉に板と釘打ち付けたかと思えば【セッ○スしないと出られない部屋】って看板立て掛けてたよな」
「ああ、あの後お母さんに本気で怒られたやつね」
『想像の五倍くらいやばいの出てきて泣いちゃった』
『行動力の鬼が土下座するレベルの行動力』
あの時ばかりは俺も焦ったな。本気で襲いかかってきたし。
「今度は逃げられないよう部屋じゃなくて家単位でやらなきゃ……」
「やめろ。お前の母親に早く娘と結婚しろと迫られるのは俺なんだぞ」
『草』
まあその時の事は置いておこう。すると瑠花が配信とは別のノートPCを少し弄り始めた。
「さっきのイラストは今上げておいたので。良ければ拡散お願いします」
瑠花の言葉に俺もスマホを見る。言った通り上げられていた。俺は即座に保存し、拡散しておいた。
……いや凄いな。かなりの勢いで拡散され始めている。
そういえば、視聴者数はどれくらいなんだろうと見ると。
「ま、また十万人も見てるのか? 夢じゃないのか?」
同接数がまたとんでもない事になっている。こんなのトップVtuber達でもなかなか見ないぞ。
……この前のはバズったからだと思っていたが。最近はこれが普通になりつつある。やばいな。
『全編神回だからしゃーない』
『作業用に流してたらいつの間にか仕事道具を仕舞ってました』
「怖い……人怖い」
「あ、カイリの人間恐怖症が。お腹なでなでしてあげるから全部脱いで」
「隙あらば脱がせようとするな。エロ漫画に出てくるタイプの医者か」
『例えが酷すぎるけど理解出来るの草』
ため息を吐いていると。そういえば、と瑠花が俺を見た。
「今度性癖破壊ゲームしよ」
「何その世界一頭が悪いゲーム。あと内容を知ってて当たり前かのように言わないで」
なんでこの子いきなり頭おかしいこと言い出すんだ。いや、今更なんだが
「これ友達が考案したんだけどさ」
「すげえ。類は友を呼ぶってこういう事なんだな。……というかお前、友達居たんだな」
「他校の子だけどね。ルールは簡単で、審査員の性癖が壊れそうな事を言い合うだけ。どっちが審査員の性癖を破壊もとい開拓できるかってゲームだよ。私達の場合視聴者が審査員だね」
改めてルールを聞いた上で言わせてもらおう。なんだその頭の悪すぎるゲームは。
「AV企画でももうちょいマシなやつやるぞ」
「ちなみにその友達は幼馴染の妹と一緒に幼馴染の男の子の性癖を壊したとかなんとか」
「……そいつとは仲良くなれそうだな」
しかし、話を聞いていて思ってしまった事がある。
もしかして、俺の知らない所で他の男と仲良くなっていたりするのだろうか、と。
まあ、無いだろうと思いながらも。もやっとしたものは消えず……すると。
瑠花はくすりと笑った。
「安心して。私と繋がりがあるの、その女の子ぐらいだから。カイリが望んだとしても、私はカイリ以外の男の子と仲良くなる気はないよ」
全て見透かされていた。その事実に、どんどん顔が熱くなっていく。
『顔真っ赤のカイリきゅん可愛い』
『瑠花タソが寝盗られる事はまずなさそうなんだよな……』
『なら俺がカイリきゅんを寝盗(このメッセージは削除されました)
「まあ、休日もカイリとしか居ないからね。カイリも同じだし」
「……それもそうか」
『というか瑠花タソを制御できるのカイリきゅんしか居ないし。逆も然りか……』
瑠花はそう言って。自分の人差し指を絡めてきた。
瑠花には……まだまだ勝てそうにないと思い知らされた瞬間であった。
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