第15話 王族領カレニア Sideノブス
バチッ!!!!
「きゃっ!一体どういうことなのですわ?!」
力を受け入れたかのように見えたキャサリンと魔鉱石との間に、電気のようなものが走った。
そして、もう一度試そうとした時、またもやバチッ!!!!
となり、力を得ることができなかったキャサリン。
「もしかして、魔鉱石が拒絶しているの?!そんな話聞いたことないですわ。」
「大丈夫ですか?!お嬢様!」
ロンが駆けつけるが、キャサリンに特に外傷などは見られない。
「やはり魔鉱石が拒絶しているということでしょうか、、、。」
「そんな、、そんな、、、それじゃあ、ウェールを倒す最後の希望がないじゃない!!!」––––––
◇◆◇◆◇◆◇
「ふん、お前、俺様の代わりに講義を受けてろ。お前は食堂で先に俺様の分を注文しておけ。食事が1分でも遅れたら生かしてはおけないかもな、ハハハ。あと、そこのお前は今から俺の椅子な。俺が良いって言うまでちゃーんと椅子になりきれよ。ハハハハハ。」
ウェールという男は、カレニア領内にある学園でやりたい放題な暴君とも言える存在である。
彼の後ろにはノブス公爵家がいることが最も大きな要因だが、それ以前に彼には親戚という立場だが、王族の血が流れている。
そのため、膨大な魔力量と才能を持て余すことなく発揮し、学園内において実技で彼に勝てる者はいなかった。
さらに魔法の質や強さは、すでに教師達をも圧倒するに至っていた。
学園内において彼は最強と謳われるほどの実力と権力を持っていた。そして、教師達ですら恐れ慄く存在となっていた。
学園では、彼を怒らせたり、不快にさせると生きていけないと言われるほど、その存在は特別なものとなっていたのだ。
「ウェール様、準備ができました。」
ウェールには執事のような存在として、同学年にフィンという青年を側に置いている。
「ふん、お前ぐらいだな、ここで使える奴は。さっさと行くぞ。」
ウェールはそう言うと、フィンの用意した馬車に乗り一度屋敷へと向かった。
「どうせ父上のことだ。念には念を入れろということだろう。全く、父上の執念深さと徹底的に追い詰めるやり方には、息子ながら舌を巻くよ。まあ、弱い者がなおのことどん底に沈むのを見るのは楽しいがな。ハハハハハ。」
「全くもっておっしゃる通りです。あの令嬢は何やら諦めていない様子だったので、影の者に指示を出しておきました。また、後ほど彼らには、士気を上げるためにウェール様からもお一言いただきたく思います。」
「ああ、いいだろう。それくらいのこと、朝飯前だからな。だが、失敗した奴は消さなくてはな。」
ウェール達はニンマリと悪い笑みを浮かべながら馬車を降りた。
「ウェールよ来たか。講義中にすまんな、ハッハッハ。」
「父上も知ってるだろう、俺に講義なんか要らないってことくらい。それより、用件はなんだい?」
「来週行われる闘技大会の件じゃ。どうやらギルドの働きかけで、外からも参加者が来るらしくての。家臣たちにリストアップさせたが、どうじゃ?」
「どう、とは?俺より強い奴がいるかってことなら安心してくれよ。来てもA級冒険者程度か。俺をどうこうできるのは王家を始めとしたS級しか無理だね。」
「ほうほう、そうかそうか。怪しい奴がいたら裏から手を回そうと思ったんじゃがのぉ。気が早かったか。まぁ、面倒なら全員息の根を止めても良いんじゃがな、ハッハッハ。」
「そうだね、父上。それにトーナメントで絞ってからでも良いよ。どうせ下等な奴らでは俺らには手も足もでないのだから。それよりも、かの令嬢を手に入れた後のことを考えといてよ。」
「ハッハッハ。そうじゃのそうじゃの。まあまずは税金でも上げるかのぉ。それに反乱分子になりうる者は早々に打首で良いの。」
フィンはこの親子の会話に心底絶望していた。表情には出さないが、皆それを思っている。
しかし、反乱でも起こそうものなら自分だけでなく家族にまで犠牲が及んでしまう。フィンはすでに家族を人質に取られているも同然な状態である。
そのため、仕方なく従うしかなかったのだ。
「お前達のために来てやったぞ。成果を上げた奴は特別に俺の部下にしてやる。報酬もこれまでと比べ物にならないだろうな。やり方もこれといって問わん、成果だけあげろ。以上だ。」
ウェールの指揮下にある影の者達はざわついた。ウェールの部下になれるということは破格の高待遇が約束されているということなのだ。
現在フィンも影の者達よりは良い報酬を貰っている。しかし、家族の安全の為だということで、6割ほど持っていかれてしまうので、結局は変わらないのだ。
どんなに優秀でも搾取されてしまう。それがノブス公爵家のやり方なのだ。逆らう者には容赦なく力を振るう。さらに、王家もノブス公爵家のことを黙認している。
ノブス公爵家の陰謀が渦巻くなか、闘技大会まで残り4日となった。
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