第9話 魔水晶タートル②
「ストーンハンマー!!!」
聞こえてきた声に対して、えげつない威力の土魔法が唸りを上げていた。
「アナタねぇ、魔法使えないの?その白い髪、やっぱり“大罪の魔法師”とおんなじなわけ?」
声の主はキャサリンだった。華奢な体に対して高価な装備だったのは、土魔法の反動を抑えるためのものだったらしい。
「す、すごい。僕と同い年くらいなのに、こんな強力な魔法を、、、。」
「聞いてるの?」
僕は若干呆然としてしまい、返事を返せてなかった。
「あ、ご、ごめん。魔法は、、一応使える、、。」
「そ、ところでこの亀はアナタが討伐するのかしら?いらないなら貰うけど。」
「い、いる!僕のランクアップには必要なんだ、、。」
「なら、さっさとトドメを刺しなさい!弱点が出てる今ならアナタでも倒せるでしょう。アタシは別の目的があるから、サヨナラね。」
キャサリンはそういうと、魔水晶タートルをあとにした。
「“強化”!!!」
今回は全身ではなく、剣に限定することで“強化魔法”を集約して、ひっくり返ってる魔水晶タートルの弱点である腹に突き刺した。
「グワァアアァァアァァ、、、」
魔水晶タートルは力尽き、魔石のみを残して光の粒となって消えた。
「あの娘はなかなかやるようだね。鍛え上げれば、私の時代の魔法師に匹敵するようになるかもね。」
珍しくアルが感心した面持ちで言った。
「そういえば、魔水晶タートルが倒れた時にこんなな物を拾ったよ。」
僕はポケットから鈍い光を放つ宝玉にも見える丸い石をアルに見せた。
「ライアス、これは“魔鉱石”と言うんだ。これを使えば属性魔法の持ち主は皆一段階上に上がれる可能性があると言われている石だよ。」
アル曰く、これはあくまで可能性を上げるための物だそうだが、市場価値は高く、家一軒どころか何軒、何十軒も余裕で建てられるそうだ。
そんな会話をしながら歩いてるとキャサリンがいた。
「うーん、見つからないわね。ここに出現するってお告げがあったのに!」
「やあ、キャサリンさっきはありがとう。」
「お礼なんか言われる程のことはしてないわ。ところで、その異様に盛り上がったポケットに入ってるものは何?」
「ん、これのこと?」
「!!」
僕は“魔鉱石”を取り出してキャサリンに見せた。すると、キャサリンはとても驚いた表情をした。
「それ!ずっと探してたのよ!どこにあったの?!」
かなり食い気味に聞いてくるキャサリン。
「さっきの魔水晶タートルが倒れた時に口から出てくるのを見て、つい拾っちゃった。」
「お礼ならなんでもするから、それをアタシに頂戴。アタシにはそれが必要なの。お金が欲しいなら、すぐには無理だけれど、いずれ必ず渡すわ。」
キャサリンはかなり必死な様子で訴える。
「そんなに必要ならあげるよ!僕使わないし。お礼は、また今度何かあったら助けてよ!」
「え、、、、。いいの?ホントにいいの?」
キャサリンはかなり驚いた様子を見せる。それもそうだ、家一軒どころか何軒も買った上でお金が余るほどの物だ。それをほとんど見返りも求めずに渡すと言うのだ。
「ライアス?!いいのかい?たしかに私達には使えるものではないけど、、、。」
「良いんだよアル。キャサリンには助けられたし、事情は分からないけど相当困ってると思うんだ、彼女は。」
キャサリンは不思議そうな顔でこちらを見ている。それもそうだ、僕以外の人にアルは見えないのだから。
「ありがとう。この借りはいつか必ず返すわ。」
そう言い残して、キャサリンは去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます