第10話 盗賊

 依頼をクリアしたため、ダンジョンを出て馬車を見つけるまで、再びしばらく歩くことになった。


 かなり遠くだが、先程別れたキャサリンがいる。


「おい、オメェら!!かなりのカモが来たぜ!金目のもん奪ってズラかるぞ!!!」


 盗賊だ。ここら辺では行きに馬車の目星をつけて、帰りに宝石やら鉱物を奪おうとしてくる。


「奪えるものなら奪ってみなさい!!アナタ達こそやられる覚悟をしとくのね!」


 キャサリンは応戦しようとしている。


『ウィンドウバスター』

『ファイヤーバスター』

『アクアバスター』


 盗賊が連携を取りながら魔法を放ってくる。


 盗賊達は数が多く、それぞれがそれなりに手練れであるため、キャサリン達は苦戦している。


「くっ、なかなかやりますわね。それにしても数が多いですわ。」


 キャサリンもなかなかの実力、少なくともD級以上ではあるが、盗賊の数に押されてしまっている様子である。


「アル、キャサリンを助けに行こう!」


「今のライアスなら、盗賊は余裕だけど、油断だけはしないようにね。」


「うん、分かったよ!」


 そう答えて僕は“強化魔法”を、足に集中的にかけてからダッシュして向かった。


「ほう、なかなかやるな嬢ちゃん。だが、もう魔力に余裕がなさそうじゃねぇか。」


「アナタごとき、残りの魔力で充分ですわ!」


《ファイヤーフルバースト》

「そんじゃ、付き人もろとも死にやがれぇ!!」


 いかにもヤバそうな魔法がキャサリンへと向かう。


‘この魔法はかなり厳しいですわね、でもやれるだけやりますわ!’


 キャサリンが覚悟した次の瞬間、その場にいた皆が驚愕した。


「キャサリン!!」


 声を出すのと同時にキャサリンと付き人を抱えて、僕は離脱した。


「お、跡形もなくくたばりやがったか!身につけてた防具なんかは割と上等な物だったのになぁ。」


 少し残念がる様子の盗賊の棟梁であったが、馬車から金目の物を盗ろうとしていた。


 盗賊の棟梁の後ろから足音がした。


「そこにいんのは誰だ?」


「人が苦労して積み重ねてきたものを、、、。キャサリンにしたこと、僕は許さないぞ!」


「ほう、さてはあの嬢ちゃんの彼氏か何かかぁ?ヒーローごっこをしたいなら、辞めときな。本気で殺すぞ。」


 そう言って殺気を放つ盗賊の棟梁。


「そんなんじゃないんだ。ただ、友達が傷つけられて怒らないわけないじゃないか。」


 僕も負けじと、静かに怒気をあらわにする。


《ファイヤーバースト》


「テメェにゃこれで充分だ!」


 先ほどの魔法より威力に劣るが、その分魔法の数が多く、避けるので手一杯となり、反撃が難しくなった。


「ちょこまかと動きやがって。」


「その程度の攻撃じゃ当たらないよ。」


「じゃあ、もっと激しく行くぞこら!」


 そう言うと盗賊の棟梁は空に向かって火の玉を飛ばした。

 すると、遠くから追加の盗賊がやってきた。


「なっ、まだこんなにいたのか!」


「オメェら、こいつはかなり活きが良いからまとめてちゃっちゃと終わらすぞ!」


「「了解!棟梁!!」」


 会話が終わるや否や、下っ端達が一斉に魔法を放ってきた。


《プロミネンススピア》


 盗賊の棟梁は味方の魔法にお構い無しで、焔の槍を模した魔法で突っ込んできた。

 僕は刃こぼれしている剣で応戦した。そして、剣で棟梁の魔法を受けた時だった。


「!!!」


 なんと、盗賊の持つ焔の槍はいとも容易く僕の剣を溶かしてしまったのだ。


「まだギリギリ生きてたか!武器を失ったテメェじゃ俺らに勝ち目なんてあるわけねぇよなぁ!大人しくくたばりやがれ!!」


「悪いけど、それはできないよ。僕も本気でやらせてもらう!」


 僕は“強化魔法”を全身に纏い、さらにアルとの修行で培った魔力放出を使った。


「無属性魔法の実力を見せてやる。」


「無属性魔法?なんだそれ。ただのこけおどしじゃねぇか。」


 魔力のスーツを着ているような見た目に変わった僕を見て、盗賊の棟梁は嘲るように言った。


「なら試してみるといい。」


 そう言って僕は魔力で殴りかかった。

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