第8話 魔水晶タートル
魔水晶タートルの生息地は鉱山地帯にあるD級ダンジョンである。
鉱山地帯は行くまでにも悪路を行かなければならないため、嫌がる人もいるが、ダンジョン内では宝石の原石や希少な鉱物が取れる場合もある。
「馬車で鉱山地帯の近くまで行って、残りは歩きで行こう。」
アルは慣れた感じで僕に伝えた。
実は、アルは宮廷魔法師の傍ら、冒険者としても活動していた時期があったのである。その頃は臨時だったため、A級止まりであったが。
アルの言う通り、途中までは馬車で行くことにした。
「今から行く鉱山型のD級ダンジョンって鉱物がたくさん取れるんだよね?」
「ああ、なかなか良い物が取れることもあるよ。特に、ルビーやサファイア、エメラルドなんかは属性魔法の伝導効率がいいから武器とか杖として加工して使えるよ。」
色の着いた鉱物は、僕らには扱えないが扱える人に取ってはかなり貴重な物である。
そのため、ここら辺では盗賊も出やすいので、特に帰り道は気をつけた方がいいらしい。
馬車を降りてから、しばらく歩いた。
「ここがD級ダンジョンか、思ったより小さいね。」
「アナタ、ダンジョン舐めてると死ぬわよ!」
どこからか女の子の声がした。後ろを振り向くと、そこには同じ年くらいの、高価な装備を身につけた女の子がいた。
「アタシの名前はキャサリン。アナタ名前は?」
「僕はライアス。君は、、かなりすごい装備だね、、。」
僕はキャサリンという少女の剣幕と絢爛な装備にたじろいでしまった。
「そうよ、これくらいの装備でないと危険ですのよ!分かったら、さっさと出直しなさい!私達はダンジョンへ行くわ。」
そう言って、さっさとダンジョンの方へと向かうキャサリンに僕は呆然としたまま、アルの方を見た。
「あはは、、かなりすごい子だったね。貴族にしては、堅苦しくない、ちょっと大胆な感じの子だったね。」
アルも若干驚いてるようだ。付き人の様子からしてキャサリンは貴族で間違いはないと思う。ただ、少しじゃじゃ馬というか、やはり大胆というのが似合う女の子だった。
「僕達もダンジョンへ行こうか。目的が同じじゃないと良いんだけど。」
ダンジョンでは一度倒したレア魔物やボス級の魔物は一定時間経つと、リスポーンする仕組みになってるのだ。しかし、リスポーンの期間は各魔物により異なるため、把握してないと少し手間となるのだ。
また、ダンジョンは魔族が人類から魔力を含めたエネルギーを摂取するために作ったものである。ダンジョンは、人類侵略のための魔物の生成の場でもあるのだ。
人類がダンジョンへ向かうのは、ダンジョン内の魔物が溢れ出さないようにすること、魔石を集めること、魔力を含む物質や鉱物などの素材を集めること、の主にこの3つが理由となる。
ダンジョン内において、魔物は素材を残さず、魔石のみをドロップする。魔物ごとに魔石に含まれる魔力の質が違うため、人類は魔石をもとに武器や防具の生成・強化を行っている。
今回の魔水晶タートルも同じだ。ランクアップのための依頼の一つであるとともに、魔石が防具に適している物のため、討伐しようとしている。
「D級ダンジョンといっても道中の魔物はE〜F級がほとんどだね。」
「ダンジョンの何級かは、だいたいボスの強さをもとに設定してるからね。」
そんな話をしているうちに、魔水晶タートルのいるボス部屋に辿り着いていた。僕は扉を開けて言った。
「なんてデカさなんだ。それに、甲羅部分が魔水晶になっていて、並の剣じゃ歯が立たなそうだ。」
魔水晶タートルは甲羅に多数の魔水晶がたくさん付いており、体長約10メートルとクジラのような巨体を誇っていた。
「そういう時のための“強化魔法”だよ。」
アルは“強化魔法”を剣と全身に使い、戦えとアドバイスをくれた。
僕は“強化魔法”を使いながら、魔水晶タートルを切り刻もうとした。
「!!」
硬い。魔水晶がない所を攻めてみたものの硬すぎる。“強化魔法”を使用してたものの軽く刃こぼれしてしまった。
「グワァァァ。」
魔水晶タートルが軽く威嚇をしている。
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