第6話 冒険者

「どうしてアルがいるの?!」

 僕は驚きを通り越して、呆然とするしかなかった。


「いや〜、そのことなんだけどね、君に残りの魔力を託した時に“使役の魔法”が発動したのかもしれない。」


「“使役の魔法”?そんな魔法聞いたこともないよ!」

 そう、誰も聞いたことのない魔法なのだ。ただ1人、アルを除けば。


「私も一度だけしか使ったことはないし、私自身にそれが当てはまるとは思わなかった。一応動物の調教に近い魔法だよ。私も索敵用に一度使ったくらいだ。」

 アルはこの魔法の存在を知っていた。しかし、詳しくは分からなかったのだ。


「アルを“使役”できるってこと?」


「おそらくね。私は一応ゴーストの類いだからね。これについては探りながらやっていくしかないね。」


 無属性魔法は“強化魔法”に限らず、従来の魔法システムを逸脱している。アル曰く、まだまだ魔法はあり、未知の可能性すらあるとのことだ。


「アル、僕はこれからどうすれば良いのかな?」

 学院に戻るべきか、冒険者として上を目指してみるか悩んでいた。


「私の考えでは、学院にいても無属性魔法を鍛えることはできないと思うから、冒険者として依頼をこなした方が良いと思う。」


「そうだよね!ただ、王都だと僕のようにF級で登録した冒険者は学院を卒業するまで上に上がれないんだ、、、。それに、僕は死んだことになっているだろうし。」


 王都では、僕にF級以上の依頼など回ってこなかった。本来であれば、学院生でも依頼をこなしていき、E級やD級までいく者もいたのだ。


「王都がダメなら近隣の街で一から始めるのはどうかな?」


「いけるかな?かなり不安だけど。」

 王都では学院生といえども、属性適性無しということでかなり苦労した覚えがあるのだ。


「今のライアスなら大丈夫。それに、冒険者手続きも正規の方法じゃなくて、別の方法を使えばいい。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 〜隣街ランベルク〜

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか。依頼の受注ですか?それとも魔石の売買ですか?」


「えっと、新たに冒険者登録をお願いしたいんですけど、、、。」

 僕は恐る恐るそう告げる。


「冒険者登録ですね。それでは、F級冒険者になる前に、いくつかの試験を受けていただきます。」


「あ、その、できればすぐにでも登録したいんですが、、、。」


「何かワケアリですか?まぁ、そのような方もたまにいらっしゃるので、打診してみます。」

 そう言って、受付嬢は奥の方へ行き、しばらくして戻ってきた。


「おう、この坊主がそうか?」

 いかついオッサンが現れ、豪胆な声でそう聞いた。


「えぇ、この方が特別ルートでの冒険者登録をご希望とのことですので、お願いします。」


「坊主、名前は?」


「ライアスです!」


「何かワケアリだとしても、俺の試練は甘くねぇぞ?」


「こっちの方が僕には合ってるので大丈夫です!」

 アルとの修行の成果を試すチャンスが巡ってきたのだ。


「よし、じゃあ裏の闘技場で待っているから、準備ができたら来い。」

 そう言っていかついオッサン、ザハークは豪快に笑いながら裏の闘技場へ向かった。

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