第10話ヒースのミルクを確保せよ4
ドラゴンの城ではお菓子も玩具もたんまり出してくれて、ルーフもマルタも楽しそうだ。
「悪魔だぞう!」
「きゃーっ!」
「わーっ!」
意外にもドラゴンたちは子供好きでルーフとマルタと全力で遊んでくれる。ルーフは特に体力が有り余っているので助かった。その間ダンはずっと読書していた。遊ばなくていいかと聞いてみたが、久しぶりに落ち着けると大人びた答えがかえってきた。
私は侍女たちからミルクを受け取って、それをダンに保存もできるマジックアイテムも袋に入れてもらった。これも魔力持ちの高等技術である。ほんと、規格外。
ヒースはドラゴンの王様の孫にあたるので与えるミルクも厳重で保管の方法も決まっているようだ。
「ロードがいない時ならヒースに会いに行くわ。まだ、あの屋敷にはトラウマがあるけど……頑張ります」
ヒースが可愛くて仕方ないのだろう、サーラ様が決心した顔で言った。
「掃除もしていますので、サーラ様が訪れやすいよう、模様替えもしておきます。、ぜひ、ヒースのためにもお越しください」
「ダン、なんなの、この人、いい人じゃない!」
「はははは。僕たちも気に入ってます」
ヒースを受け取ると、すうすうと眠っていた。そっとベビーカーにのせる。帰りは抱っこしなくて済みそうだ。
「では、ヒースを頼みます」
「はい」
「バイバーイ」
「ばい」
ルーフとマルタと手を繋いで城を出ると、ダンが魔法陣を描いてくれた。
「帰りは手続きがいらないんだ。一気に屋敷に帰るからね」
「はーい」
ぱっと屋敷に戻ると、気が抜けたのか、ルーフとマルタは手洗いをしてから、応接間のソファで電池が切れたように寝てしまった。まるで行倒れだ。
「たまにはお出かけもいいね」
私がシチューを作りながら声をかけると、ソファで本を読んでいたダンが顔も上げずに『そうだね』と言った。
ミルクは大体二週間に一回貰いに行けばいいようだ。でもあの調子ならもしかしたらサーラ様が持ってくるかもしれない。
「サーラ様、きてくれるかな」
「うーん。今までも何度か家の近くまではきてくれたんだけどね、玄関に入るくらいから気分が悪くなるらしくて」
「うわぁ……」
「もうさ俺、母親いらない。今度親父が誰を連れてこようとも屋敷に入れるつもりはない。チコがいてくれればいいよ」
呟くダンに、そりゃそうだ、としか思えない私だった。
「さあ、召し上がれ」
「わああああっ」
芋と野菜の入ったシチューをお皿に入れるとダンが嬉しそうに声をあげた。
「パンも焼いたけど、何枚食べる?」
「んーっと、三枚!」
食事の時はダンが歳相応の子供に見えてかわいい。パンをスライスして軽くあぶって渡すと美味しそうに頬張った。
うわあ。ほんと、美形……。
勇者の子供、すごいな。
たくさんお代わりしたダンも応接間で寝転び、お腹が空いて目を覚ましたルーフが代わりに起きてきたので肉を焼いてやる。隣のマルタが魚に戻っていたので慌てて浴槽に戻した。その間もヒースは疲れたのかびくともせず眠っていた。
お母さんと会えてよかったね。
そういえば、ダンやルーフ、マルタにも母親がいるのだな……。
一応その都度結婚していたらしいから、ロード様はバツ五ってことになるのか。なんだか嫁さんに愛想つかされてるっぽいな。
できればダンもルーフも、マルタにも母親と会える環境にしてやりたいな。
ドラゴンの城に行ったとき、それぞれが少し心もとない感じで私の周りにくっついてきていた。あのダンさえも。
よし、掃除も粗方終わったし、屋敷の大改装をしよう。
子供たちの意見も聞いて……。
そうして疲れた私も応接間に布団を持ってきてみんなと寝ることにした。
次の朝、私は驚く客人を迎えることになった。
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