悟流の嘘
1
「悟流、なにしてるのー?」
「は?なにって、今から塾だよ」
ごく冷静に対応する我が息子。今にも家から出て行きそうなとこを呼び止める。
「嘘でしょー?昨日朝帰ってきたよねー?ママ知ってるんだから!」
塾は夜遅くなることもある。私は朝から仕事だし早く寝ることが多いけど。でも、パパのいない日にそんなことが多いかも。
「と、友達の家で勉強…」
「ママは嘘きらい」
「…ご、ごめんなさい」
悟流は謝った。
ということは、悪いことしてる?
「ちょっと…バンド、してて」
「バンドー?」
予想外!なんだか楽しそう。
「うん、
「へぇー!そーだったの?」
「うん。まだメンバー2人しかいないけど」
「そっかー。でも、学校にバレたらだめだよね?」
悟流の通ってる高校は、私立であって校則とか厳しい。私の行ってたとことは大違いよ。
「うん…バレないようにしてるけど」
「塾もあるのに、お勉強大丈夫?」
「大丈夫」
「お父さんお勉強にはうるさいから」
「普通に勉強もする。だから、バンドのこと親父には言わないで!」
悟流はエプロンをつかんでお願いしてきた。一人息子だからなのかな?やっぱりすごーくかわいいな。
てゆーか、うちは美容室だし、今お客様もいるし店員もいるんだけど。まぁ、常連さんだし、大丈夫よね。
「いーよ。ママとの約束ね」
「うん」
「でもー、隠し事やだから大学生になったら言うね」
「えー」
そうやってお勉強しながらバンドして。悟流はとっても器用な子である。
さて、悟流は大学生になったので、パパに話すことにした。
「はー?バンド」
うちのパパは大学教授で、忙しいときはあんまり帰ってこない。ので、重要な話はちゃーんとしておかなくちゃ。
「そう。高校生のときからしてたの。雷くんと」
「なに?俺知らない」
パパはスパゲティを食べてたのを辞めた。パパ用のお昼ご飯なんだけどー、いらないの?
「パパに内緒にしてって言われたもの」
「と、いうことは…悟流は学校行きながら塾行きながらバンドしてたってこと?」
「そーだよ?」
「いやいや、さすがにそれは無理だろ。塾はさぼってたんじゃない?」
「ううん?先生から連絡なかったよ?それに、大学合格したのお知らせしたら、さすが早川くんですって」
パパはがーん、って感じで項垂れた。
「悟流は器用なこった」
「それでね、バンドメンバーで決めたみたいなんだけどー」
「なに?」
「髪の毛メッシュにしよーぜーってなって。悟流を染めたよ!」
「なに!?大学の入学式前なのに?大学デビューってか?」
「大丈夫よー」
パパはそわそわ。面白い。
「それで…悟流は?」
「お部屋にいるよ」
「おい悟流!出てこい!」
パパはご飯そっちのけになっちゃった。
「うるさい、今から出かけるんだけど」
自分の部屋から出てきた息子、悟流は怒ってる。パパがうるさいから。それとも反抗期なのかしら?
「な、なぜ白髪」
唖然とするパパ。悟流はとってもかわいくなったのにね?
「白髪じゃねーし」
「ママが染めたの。かわいくない?」
「いや…ママ、大学の入学式はまだなのに…スーツ着るんだよ?この髪型でいいの?」
「うるさい。じゃ、行くから」
「悟流、バンドの練習頑張ってねー!」
「ママ、本当にあの髪型で大学行っちゃうの?まじで?」
パパはかわいさがわからないみたい。
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