悟流の嘘

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「悟流、なにしてるのー?」

 

 「は?なにって、今から塾だよ」

 

 ごく冷静に対応する我が息子。今にも家から出て行きそうなとこを呼び止める。

 

 「嘘でしょー?昨日朝帰ってきたよねー?ママ知ってるんだから!」

 

 塾は夜遅くなることもある。私は朝から仕事だし早く寝ることが多いけど。でも、パパのいない日にそんなことが多いかも。

 

 「と、友達の家で勉強…」

 

 「ママは嘘きらい」

 

 「…ご、ごめんなさい」

 

 悟流は謝った。

ということは、悪いことしてる?

 

 「ちょっと…バンド、してて」

 

 「バンドー?」

 

 予想外!なんだか楽しそう。

 

 「うん、らいが誘ってきて…」

 

 「へぇー!そーだったの?」

 

 「うん。まだメンバー2人しかいないけど」

 

 「そっかー。でも、学校にバレたらだめだよね?」

 

 悟流の通ってる高校は、私立であって校則とか厳しい。私の行ってたとことは大違いよ。

 

 「うん…バレないようにしてるけど」

 

 「塾もあるのに、お勉強大丈夫?」

 

 「大丈夫」


 「お父さんお勉強にはうるさいから」

 

 「普通に勉強もする。だから、バンドのこと親父には言わないで!」

 

 悟流はエプロンをつかんでお願いしてきた。一人息子だからなのかな?やっぱりすごーくかわいいな。

てゆーか、うちは美容室だし、今お客様もいるし店員もいるんだけど。まぁ、常連さんだし、大丈夫よね。

 

 「いーよ。ママとの約束ね」

 

 「うん」

 

 「でもー、隠し事やだから大学生になったら言うね」

 

 「えー」

 

 そうやってお勉強しながらバンドして。悟流はとっても器用な子である。



さて、悟流は大学生になったので、パパに話すことにした。


「はー?バンド」

 

 うちのパパは大学教授で、忙しいときはあんまり帰ってこない。ので、重要な話はちゃーんとしておかなくちゃ。


 「そう。高校生のときからしてたの。雷くんと」

 

 「なに?俺知らない」

 

 パパはスパゲティを食べてたのを辞めた。パパ用のお昼ご飯なんだけどー、いらないの?

 

 「パパに内緒にしてって言われたもの」

 

 「と、いうことは…悟流は学校行きながら塾行きながらバンドしてたってこと?」

 

 「そーだよ?」

 

 「いやいや、さすがにそれは無理だろ。塾はさぼってたんじゃない?」

 

 「ううん?先生から連絡なかったよ?それに、大学合格したのお知らせしたら、さすが早川くんですって」

 

 パパはがーん、って感じで項垂れた。

 

 「悟流は器用なこった」

 

 「それでね、バンドメンバーで決めたみたいなんだけどー」

 

 「なに?」

 

 「髪の毛メッシュにしよーぜーってなって。悟流を染めたよ!」

 

 「なに!?大学の入学式前なのに?大学デビューってか?」

 

 「大丈夫よー」

 

 パパはそわそわ。面白い。

 

 「それで…悟流は?」

 

 「お部屋にいるよ」

 

 「おい悟流!出てこい!」

 

 パパはご飯そっちのけになっちゃった。

 

 「うるさい、今から出かけるんだけど」

 

 自分の部屋から出てきた息子、悟流は怒ってる。パパがうるさいから。それとも反抗期なのかしら?

 

 「な、なぜ白髪」

 

 唖然とするパパ。悟流はとってもかわいくなったのにね?

 

 「白髪じゃねーし」

 

 「ママが染めたの。かわいくない?」

 

 「いや…ママ、大学の入学式はまだなのに…スーツ着るんだよ?この髪型でいいの?」

 

 「うるさい。じゃ、行くから」

 

 「悟流、バンドの練習頑張ってねー!」

 

 「ママ、本当にあの髪型で大学行っちゃうの?まじで?」

 

 パパはかわいさがわからないみたい。

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