第24話
いつもとは違う田淵ヒルズトーキョーの入り口。金田は、佐伯の車で駐車場に入っていった。
「ここは、宿泊客と従業員専用の駐車場です」
車を降りると、佐伯からカードを渡された。
「必ず身につけておいてください。これがVIPカードです。セキュリティシステムは、このカードを身につけている者だけを認証します」
いつもよりお洒落をした金田は、カードをバッグの中にしまう。
エレベーターホールの奥に、関係者専用通路と記された扉があり、近づくと扉が開いた。
「さあ、どうぞ」
扉の先には、エレベーターがあった。
「これが、VIPエリアへのエレベーターです」
エレベーターで53階へ向かう。
「あの、カードを持っていない人が付いてきてしまうこともできるのでは」
「カードを持っていない人がエリアに入ると、警報が鳴ります。警備員が駆けつけてきますよ」
「へー」
「51階から54階がホテル、55階がバーと展望室です。池綿がよく泊まる53階の部屋を予約しました」
金田は、スイートルームが1泊100万円なのを思い出した。
「高いんじゃ」
「1泊10万円です。私も最初は高いと思いましたが、VIPエリアの入場料も含まれると考えると安いと思います。特に、著名人にとっては、マスコミの眼がありませんからね」
53階に到着した。
まるで教会のような、落ち着いていて精錬された空間が広がっている。
「ここです」
エレベーターホールの近くの部屋だ。
部屋は、ツインルームで広さは約40平米。バス、トイレ別で、テレビ、冷蔵庫など一般のホテル同様の設備に加え、洗濯乾燥機も置いてある。連泊でも安心だ。
カーテンを開けると、ライトが美しく輝く夜景が広がっている。
金田は、感動して言葉が出てこないでいた。
「金田さん」
「あ、はい。もうすごくて」
「池綿は、必ずこの部屋の前を通ります。じっと、待つしかないですね」
部屋と景色で頭がいっぱいだった金田が、気持ちを切り替える。
「ドアスコープに、カメラをつけます」
ドアスコープとは、ドアについている覗き穴のようなもので、中から外の様子を伺うことができる。ずっとドアに張り付いているわけにはいかないため、カメラを取り付けて、ソファでくつろぎながら観察する。
「探偵道具ってやつですか」
「池綿と相手の女性が別々で来る可能性もあります。ひとり客も、記録します」
「私は、少し横になりますね」
佐伯は疲れたようで、ベッドで休むことにしたようだ。
「すみません。手伝わせてしまったようで」
「気にしないでください。好きでやっていることです。ただ、緊張が解けただけです」
「ここに入れたのは、佐伯さんのおかげです」
佐伯と金田は、目を合わせ微笑んだ。
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