第6話

ソファには、河合と南の2人。

金田と影野は、近くの椅子に座り、2人の様子を伺う。

ふくちゃんが、コーヒーを持ってきた。

「どうぞ」

河合は、コーヒーを一口飲む。


南が話を切り出す。

「そういえば、コーヒーメーカーのCMに出ていらっしゃいますよね。あのCMがきっかけで、最近コーヒー豆に興味を持ちましてね。『豆で、その日の気分が変わる』ですよね」

「もともとカフェに行くのが好きで、よくコーヒーを飲んでいました。でも、豆なんて気にしたことはなかった。あのCMのおかげで豆に興味を持ったのは、私もいっしょです。まだ豆の違いが分からないくらいの未熟者ですが」

「CMには、噂の彼と出演されていますよね。いやー、先ほど話していたんですが、河合さんはうちの妻の若い頃にそっくりでね、あの頃の自分たちを見ているようなんです」

「……そうですか」

「今はその彼である池綿さんとは、婚約しているということですね。付き合ってると噂になったあの時は、まだ河合さんは駆け出しでしたよね」

「ええ、彼が私を世に出してくれたと言っても過言ではありません」


真剣な空気が流れている近くで、金田が横にいる影野に、こっそりと聞く。

「彼女、そんなに有名なんですか?」

影野は驚いた。河合華奈という名前は、テレビっ子でなくても生きていたら耳にするほど世に広まっているからだ。

「ここ数ヶ月で勢いにのり、ドラマではまたかというくらい出てるじゃないですか」

「テレビ、見ないので」

「ラジオ、雑誌、インターネット、ラッピングバスにもいましたよ。彼女の何がいいかと言いますと、舞台育ちだから、演技に″はく″があるんです。とにかく涙を誘うのが上手い」

「ふぅーん」

金田は、こういう話は興味がないようだ。

「それに、歌も上手いんですよ。マルチな才能の持ち主です」

「美人だからそう見えるんじゃない?」

「そ、そんな……まあ、確かに美人ではありますが、本当に演技がいいんですよ」

金田が影野を横目で流す。

「な、なんですか」

「好きなんですか?」

「え? いや、なんて言うんですか、応援してるんです。ファンですよ、ファン」


そう盛り上がりを見せる会話に、

「おいおい」

と、南が注意する。

「静かにしろよ」

「すみません。芸能人を間近で見られるなんて、嬉しくて」

と、影野がはにかむ。

「ありがとうございます」

「すみません、話の途中なのに。それで、最終的には、何を望まれますか」

話を進める南の近くで、静かに内容を聞く金田と影野。ファンの影野にとっては、嬉しいとはいえない内容であった。

「では、その依頼を引き受けましょう」

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