第5話

話に夢中の3人は出ようとしない。


奥で本を読み始めようとしていた金田がインターホンをとる。

「はーい」

「南探偵事務所でよろしいですか?」

画面に映るのは20歳くらいの女性。

肩くらいまでのミディアムヘアで、毛先が綺麗に巻かれている。ナチュラルメイクで、いかにも「お嬢様」な雰囲気が、インターホン越しに伝わってくる。


「依頼をしたいのですが」

仕事大募集中のこの事務所にとっては、嬉しい客である。が、3人は話に夢中で、客がきていることに気がついていない。

金田はそんな3人に、少しきつい口調で言う。

「お客様です」

その大きな声が話を斬り、急に静かな空気が流れる。

「入れますよ?」

金田が入口のロックを外し、客を招き入れる。さすがに3人も、テーブルの上の札束やコーヒーを片付けた。


コン、コンとヒールの音が聞こえ、ほっそりとした清楚な女性が入ってきた。

「あ、あの、私、河合華奈といいます」


河合華奈という名前に、南は思い出した。

「そう! 河合華奈。あー、すっきりしたー!って、どうぞ」

と、立ち尽くしている彼女を、とりあえずソファに座らせる。芸能人が来ようとも、動揺を示さない南はさすがである、と思ったが違うようだ。

「本物? 本物の河合華奈ってこと? ……こんにちは」

「こんにちは」

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