2

 ワタルの姿はこの十数年間でかなり変わり果ててしまっていた。

 よく言えば大人のオーラ。

 悪く言えば老け顔。

 そんな姿がワタルの顔に作られてしまっていた。


「久しぶりだな」


 最初はお互いの距離感を掴めずにギクシャクしたが、それも時間とともに溶けていった。


「お前、最近はどうなんだ?ちゃんと仕事してんのかよ?」


「まあ、そうだな。ぼちぼちといったところだ。」


「だってお前俺と同じ医者だろ?」


 意外だった。なぜそんなことを彼が知っているのだろうか??


「…ああ。まあそうだな。ていうかなん俺が医者だなんて知ってるんだ?」


 すると彼はにやけながら


「まあ、こっちにも情報網というもんがあるからな」


 というだけで具体的には話してくれなかった。


「実は、今日お前に話したいことがあってこうやって今いるんだ。」


 徐にワタルは話だす。


「実は叶星の行方がわかったんだ。」


「アメリカのテキサスにいたらしい。俺の仲間が知らせてくれた。急に知らせが来たんだ。お前の探していた人が見つかったよってな。」


「再来週に成田に護送されてくるそうだ。なにしろ植物状態らしいからな。」


「お前もくるだろ?」


「ちょっとまって、全然理解が追いつかないい。なんで叶星が植物人間になっているんだ?それでなんでアメリカにいたんだよ?護送ってどうやってこっちにくるんだ?」


質問がマシンガンのように立て続けにワタルに行く。


「俺もあまりそこらへんの詳しいことはわからない。俺もその情報が来たのがつい最近だからな。」


「わかったよ。いくよ。どうすりゃいいんだ?」


「再来週のこの曜日に成田空港にこい。具体的な場所と日時は指定する。」


「いつの間にか変わったな。」


「なにが?」


「見た目もそうだが、人格とか性格とかが今までとかなり変わっている様な気がする。」


「ふーん」


彼はさして興味がなさそうだ。


「だけどお前は何も変わってないな。よく言えば子供の頃のような輝きを持ってる。悪く言えば、悪くいう必要はないが成長がない。」


ワタルは確信をついてきた。確かに、僕は身長や、体重こそは高校生の時と比べてとても変わってしまっているかもしれない。歳をとってしまったのだ。だけど、性格や人格はワタルと違って何もかも変わってないのかもしれない。

「まあ、確かにそうかもしれんなあ。」


これ以上僕はいうことはなかった。

その後、僕たちはこの互いに合っていなかった数年間を埋め合わせるかのように、自分の身の回りに起こったことや、仕事のこと、仲間のくだらない話や、果ては高校時代の話まで。さまざまなことをとにかくたくさん語り合った。不思議なことに、会話のテンポや、距離感などに違和感を感じることはなかった。こうして、仲間と出会えることにひとつの感動を覚えていた。

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