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 それから、僕たちは3人で時々神尾の中を巡った。彼女にとっては初めてのところがいくつかあり、一体、小学校、中学校と暇な時間に何をしていたのか気になる程だった。まあそれなりに仲良くは、なれた。

 宇田叶星うだかなほは次跡の隣町に住む成子なるこという集落に住んでいた。小、中と共に学区が違ったので、面識はほとんどなかった。

 彼の両親は科学者で、かなり有名らしい。これは後になって聞いた話だ。しかし、彼女がなぜ文系に進んだかというと、いつか文字を書きたいと思っていたらしい。そして、その自分の考えや、自分の思いを世界中に届けたいと思っていたらしい。

 彼女は、自分でこそ明言しなかったものの、いつかはこの山をこえて、もっと開けたところで生活したいみたいなことを言っていた。

 なるほど僕たちと同じ年代の人たちは似たような思いを抱いているのだと感じた。夢や、思いは千差万別だがそれらの根底には、揺るぎない確固たる思いが共有されていることがわかった。

 この頃の僕たちは、神尾という監獄から脱出することをいつも考えていた。

 先述したように、この頃の神尾は皇国日本との内戦が激しくなり、いつの間にか国家を挙げての戦争となっていた。そんな情勢では山を跨いだその先にある皇国日本には行けるはずなく、さらに、国家総動員法みたいな法律で、気安く『国境』をまたげるような状況ではなくなっていた。

 このような原因があって、僕たちはなかなかここから『脱出』できずにいた。

 正直言って、僕たちは戦争などに全く興味がなかった。一時は、神尾自治領の中心部まで皇国の軍隊が入ってきたそうだが、そんな最悪な状況はかなり改善された。そもそも、地理的にも戦線から遠い場所にいるし、時々砲弾の音もするが、ずっと遠くの音だ。それに何より、神尾自治領の背後には元宗主国だったアメリカもついている。だから、もう戦争の終わりは見えつつあった。

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