第2話 第7セクター

Response.please


「…」


Response.please


「…ちゃんと、青いよ」


自動酸素生成型ヘルメット越しに見た

遠い星は

肉眼で分かるぐらい、青い。


ガラスに映る青の美しさは

普通の人なら恋い焦がれ

禁忌に触れる、恐れ多き


「地球」


かつては、住めなくなった星を

そこに住んでいた人々が宇宙に出て

長い間、浄化する時間を必要とする

そういう世界同盟が昔あった。


長い間だから、地球に帰れない人も

沢山居たんだろう。

地球を知らない世代が多くなった。

でも、見えた青い星は誰でも


憧れるものだ。


「guide、地球には人間はいないのよね」

「yes、ザクロ」


ザクロ

それが私の名前。

昔、地球にそんな果物があったんだって。

それほど尊びな意味はないけど。


一応聞いてみた、生命反応はないと。

KOS-MOS「自立型宇宙稼働兵器」に搭乗していた私は、そのAIであるguideに念のため尋ねた。


KOS-MOSに乗れる実力があれば、

コロニー区域を出て、宇宙に出れる。

宇宙空間には多少の危険もあり、それに順応出来るレベルでなくてはいけない。

その資格も、粗末な努力とかで手に入れられるくらいの軽々しいものではない。


ー瞳が、紅く揺らぐ。


「…ザクロ、巡回時間を超過します。帰還準備中を」

「はいはい。」


今日も1日、青い星は

誰のものでもなかった。

そう、ありとあらゆるコロニーに別けられた「国」が、あの遠い青を欲する。

今でこそ穏やかだが、きっと小さな火花があれば、きっと起こるー


ーああ、そのための


「これよりザクロ、コロニー7への帰還準備に入る。guide、サポートを」

「了解」


星に背を向け、帰路につく。

決められた時間だけの、巡回は

次、何時になるだろうか。


コロニーも、悪くはない。

けど、



「ザクロ、警戒体勢を」

「!?」


guideの警告に、まぼろばな意識が

急に鋭利になる

敵?でも危害を加える姿はない。360°フルスクリーンモニターの透過を最大にしても、危険因子はない。


「guide、何に警戒をー」

「阻止が、不能ーザクロ、気をつけ」



その時だった。


「ー!」


グンッ、と

強烈な重力が、身体の自由を奪い

吐きそうになるほどの、ねじれを感じた


「ッ、ま、まず…い」

「ザクロ、撤退不能」


その正体はわかっていた。

だが、もはや自由を奪われたKOS-MOSは

稼働機能を失い


「ザクロ、ー撤退、をー」

「…や、ば」


そうして、意識が薄れていくなかで

前頭葉ぐらいの、中枢に


ー青い、星を


「…」


感じたことのない、悦びは

脳裏に

まるで死ぬ間際の



ザー…



ザー…

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