残光のスピカ

たくあん

第1話 トモダチ

何時だって。


いや、何時からか。


ずっと、わたしは、あなたと


「トモダチ」



「…」

『起きたかい』

「どのくらい、寝た?」

『さあ、僕は人の物差しを持たないから』


彼、か、彼女、か

物心ついた時に、それはトモダチと知った。

暖かく、微笑みが触れ、居心地がいい。

「トモダチ」とはそういうものだと。


そんな、トモダチは

良く、人の物差しを持たないという。

あまり良くわからないけれど、トモダチがそういうのだから、そうなのだろう。


『…』

「え?なに?」

『僕は嫌われている』


突然、そう言った。

トモダチの言った意味は、何となく分かる。

嫌な、表現だ。


嫌、だ。


「…そんなことない」

『君は、そういうよ』


何時もより、悲しい声


『僕は君が思っているより、沢山の命に嫌われているよ』

「じゃあ私も嫌われているんだ」

『いいや、君はまだ誰にも嫌われてない』

「どうして?あなたとトモダチだから私も嫌われているわ」


曖昧な、幼稚な、ただ、その言葉は

混じり物のない純粋


『さあ、どうか君の未来に数多の祝福を』

「…?」

『いつか廻り会う時、悲しくならないように』


ー記憶を消してあげよう。



暖かく、柔らかい

『光』は全てを包み込み


やがてゆっくりと、沈むような

泥濘に近い、


鈍色の空を見たまま

私は誰かを忘れ、立っていた


「ようこそ、私」


そして、ふっ、と

目を閉じて



沈む、意識の中で

私はなぜか、希望を抱く


鈍色に、咲いた花のようにー

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