第二幕 (4)
とたん、赤の小鬼と青の小鬼の踊りがひたと止まる。くすっと笑いがあった。
「さあ、Judge」
声をそろえ、扇子もそろってパチンと鳴った。
それでまたも、ぐにゃりとなにもかもが歪む。続けてスポットライトが消えて、真っ暗闇に呑まれた。あっと茜はしゃがみ込む。
もう、なにがなにやら。
もがくうち気が遠くなってゆく。それでぐったりと伏してしまった。
そのまま眠り込んでいたのか。
はっと目が覚めると、ぼんやりと灯りに照らされている。
「あれっ」
目が丸くなった。
そこは駅前のベンチ。目の前にロータリーがあって、その先の道路はさっき抜けてったとこ。
いつのまにか雨はやんでたのか、月がぽつりとでてる。
葡萄デザインのライト。その街灯に照らされてベンチでぼんやり座ってる。
首をひねるしかない。
なぜ、みやび駅にいるの。
道路の向こうの商店街はひっそりとしている。アーケード街の照明も消えていた。
ベンチから右にゆけば改札口。左にゆけばバス停。
帰らなきゃ、どのみち電車もバスも最終と、ここで我に返った。
なにいってるの。
そもそも、スクータは、あっ、リュックも。
立ち上がってさらにびっくり。
まって、この葡萄のアンティークなデザインは、あたしが子供時代の初代のもの。
ぞくっとする。
みやび駅であってみやび駅じゃない。
そこへ、ぶるるつと車の音がした。二つのライトが眩しい。
バスが入ってくる。
ロータリーをぐるりと廻って、バス停に停止した。
えっと、たじろいだ。
黒塗りの車体。
ここで巡回するバスなら、白地にオレンジライン三本の明るいものなのに。
そしていつしか、ひとのささやきがある。わらわらとどこにいたのか人が集まっていてバスに乗り始めた。
あのっと、言いかけて茜は口をつぐんだ。
人なのか。どれも、もやっとぼんやりしてる。
はっとなった。
あのひと、知ってる。商店街にあるコンビニ店員の女の人。うわさでは家が火事になって逃げ遅れたとか。
そう、亡くなってる。
足が震えた。
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