第二幕 (2)
商店街の端っこに開いてる店がある。
「コインランドリー」
ガラス戸は開けてあった。ドラム式の洗濯機が並び、手前に丸いテーブルにパイプ椅子。入口の脇には自販機も置かれてあった。ひとはいない。
ふるっと震える。
「冷えたかな。温まってくか」
それで茜は足を向けた。店の前にスクーターを停めると中へ入ってゆく。
ふうっとため息ひとつ。
ヘルメットを脱ぎ、背負っていたリュックとともに椅子に置く。リユックからタオルを取ると軽くダウンをぬぐった。
「でも、また濡れるか」
ぼやいたあと、リュックから小銭入れを取った。それで自販機に向かって飲み物を選ぶ。お気に入り缶珈琲がない。シャープな無糖というやつ。
やむなくシャープな微糖を選んだ。コインを入れてボタンを押す。カコンと落ちた缶を取ると、くいと呑む。微糖なのに甘ったるいのに舌打ち。
それでもほっと温まってテーブルに腰かけようとしたとき、はっと気づいた。
カードがワンセット置かれてある。
そばにポップが立てられて、Selfと文字があった。
「えっ、セルフって」
缶を置き、ひょいとカードをつまむ。裏は招き猫の図柄。表をめくればローマ数字が入ってるのにキャラはどれも和風のもの。
「なあに、これ。カルタというより和風のトランプ。いや、タロットかな」
ちらちらと眺めてゆく。
「王様の代わりに殿様か。偉そうな坊様は法王なのかも。小僧が棒を担いでるのはFOOL(愚かもの)ということね」
茜はそのカードを戻した。
「つまりは、このカードでひとり占いか」
Selfのポップを指で弾く。
洗濯の暇つぶしなのと、ふうんとなった。
また、めくりたくなる。裏の招き猫が招いているような。とはいえタロットはちんぷんかんぷん。どこかに取説でもあればいいがどこにもない。スマホ検索も面倒。
ならと、ぱっぱとカードを切ってみた。
「ふふっ。まさに怪しい占い、杏子め。でも、占い師じやないあたしでなら」
意味は解らない。だから、ただ可愛い絵柄が引けたらいい。それでぱっと気分が明るくなったらラッキー。
「華やかな姫様があった。あれならいいな」
そんなのりでカードの一枚目を引いてみた。
おやっとなった。
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