第二幕 (1)

 しとしとと雨はやみそうでやまない。

 冷やりとする風も出てきた。

 ぴしゃっと水しぶきを上げながら、暗い道路をスクーターで走ってゆく。

 もう、黒のダウンジャケットはびちゃびちゃで黒のジーンズもじっとり。それもあってか、ぶるっとするほど寒かった。

「これなら、喫茶店を出たとこで合羽だったかも」

 ヘルメット越しに茜はこつんと頭を叩いた。

 街中を進み、ほどなく駅前に差し掛かる。右側に単線の駅がある。おしゃれな葡萄のデザインの街灯が人気のみやび駅。あの黒猫のみやびは、ここで拾ったのでその名をつけた。

 道路を真っ直ぐ進み、道なりに山の手の坂を登ればいつもの帰宅ルートだ。

 そこへ雨がやや強く降ってきた。

 すると、茜は駅の方へ向かう。ぶろろっとスクーターの音が響く。車はめずらしく通っていなかった。駅のロータリーに入らず、そのまま進めばアーケードの商店街の入り口となる。

 茜は構わずアーケードに入っていった。

 かつては賑わった商店街も、どこもそうであるみたいに今や寂れてる。昼間でも開いてる店はちらほら。あとはシャッターを閉めていて、なかに朽ちた店まである。

 まして夜ともなるとひとっこひとりいない。ぼんやりと黄色い照明が通りを照らして、その中をゆるゆると走ってゆく。

 ともあれ屋根があるのと風除けのため。おまけにアーケード街を抜けたら近道となった。そうでもないとこういう、うらぶれた通りはごめんだった。

「もっとも、ここってバイクで走ちゃあいけない」

 茜はちょろっと舌を出した。ほどなく、アーケード街を抜ける。

 出口のところで一旦止まって車がこないかうかがう。そこで、右を向いたとき煌々と照らすライトに気がついた。

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