第一幕 (2)
「なにいってるの。有名なひとよ。ひと呼んで浜の姫。かつて、成人式ではしゃぐ新成人を一喝して黙らせた。ちなみに、姫はもとは看護師を目指していて・・」
はいはいと杏子はできたてのスパを盛った皿を置く。
「恐れ入りました。それでねたが武器か。でも、それを生かすのは推理。ねたを分析してロジック(論理)を組み立てないと」
「語るわね、ミステリーマニアめ。推理ときたか、ワトソン杏子君」
「どの名探偵でもそうよ。かつては明智に、金田一。いまや湯川先生に杉下警部も。まさにねたを集めて分析して論理を組み立てる」
「その通り。でも、
「なんです。ホームズ茜」
「ジャッジ。つまり分析して論理を組み立てても、お終いに判断がいる」
「ふうむ。判断を誤れば積木は崩れるか」
「Japanのpoliceは優秀よ。証拠集めも分析もそしてロジックも。でも、初動捜査が行き詰まるとき、得てして本部の判断ミスに寄るものが多い。それがこれからのJpの課題ね」
「姉ちゃん、いつからインターポールに転職したの」
「おほほっ。二十一世紀になってグローバルなネット社会になると、ねたは山ほどある。でもそれに惑わされてはいけない。ゆえに、判断が要なの」
「そのまえに、スパが冷めるという判断はないの。ホームズ茜」
「アウチッ、Judgeを誤った。ワトソン杏子」
あははと他に客のいない店内に二人の笑いが響いた。
ふと、みゃあっと鳴く。
黒毛のもふもふの猫がカウンター席に座る茜の隣の椅子にぴょんと。そのまま丸くなる。
「あら、みやび」
撫でてやるとごろごろ喉を鳴らす。
「もう、あたしにはツンのくせに、姉ちゃんにはデレなんだから」
「叔父さんほどじゃなでしょ。拾ってきたのにめっちゃツンツン。あら、そういえば神社に灯りがなかった。どっかいったの」
「母さんと寄り合い。多分に氏子のひとと正月の段取り。そのまま酒盛りだから、戻ってくるのは午前さまか」
「早いね。もう一年過ぎた。父さん亡くなって、五年になる」
「伯父さんは厳ついタイプだったな。警察官だから仕方ないか。でも、ときおり頭をなでてくれて大丈夫ってちょっと笑う。それが好きだった」
ふふっと笑う茜。くすぐる指にみやびがじゃれる。
「ところで耕作も戻ってきて一年か。ちゃんとやってる」
「まるでだめ兄きね。せっかく調理師免許を取ってホテルの厨房で働いてたのに半年で「ただいま」ってなによ」
「でもさ、店のオーナーじゃないの」
「親父が甘いの、お飾りなんだから。昼のランチくらいしか働かない。あとは店の二階でユーチューバー。今もやってる」
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