ホコタテ
身を焦がす熱風に巻かれ、俺と仲間達は地面に倒れ伏す。その様子を見たフィーアは勝ち誇ったような笑い声をあげた。
「アッハッハ!楽しい喧嘩だったぜ!世辞じゃねえ。だが流石にオメーと言えど……」
「まだ……終わっていないぞ」
俺はフィーアの台詞を遮ると、ユラユラと立ち上がった。そして、爆風の衝突する瞬間。咄嗟に庇った彼女を腕の中から解放する。
「大丈夫か?……カタリナ」
「は、はい!」
俺の体によって、甚大なダメージを免れた彼女は、こくんと頷いた。
「では、皆の回復を」
「任せてください!」
再び頷くと、彼女の魔法によって眩い光が倒れている仲間達に降り注いだ。そして、その光はイツキ達の傷をみるみるうちに治していく。
「痛たた……。やるわね、アイツ。とんでもない魔法だったわ」
「何はともあれ、ツヴァイ殿とカタリナ殿のおかげで立て直せたみたいじゃの」
「ありがとう!お姉ちゃん!」
次々に元気を取り戻す俺たちを見て、フィーアは益々嬉しそうに笑った。
「おいおい!あそこから持ち直すかよ!?……やっぱ、オメーだな」
そう言うと、フィーアは俺に向かって指を差す。
「オメーがこのパーティの柱だ。オメーをぶっ倒さなきゃ、勇者の首は取れねえらしい」
「ならば、どうする?」
「野暮なことを聞くもんじゃねえぜ?ツヴァイ」
彼女は俺の前まで歩み寄ると、満面の笑みを浮かべながらそう答える。そして、手にした最強の金棒・
「勇者パーティの盾であるオメーと、魔王軍の矛であるオレ。どちらが優れているか、力比べといこーじゃねえか!アァ!?」
「面白い!」
言い終わると同時に、フィーアは金剛砕を大きく振りかぶった。それと同時に俺は、仲間に指示をだしつつ防壁を展開する。
「お前達!俺の後ろに!……
「さあ!くらいな!オレの必殺・『パワースイング』!!」
それは、技と呼ぶにはあまりにも捻りの無い一撃だった。硬く重い金棒を、ただ力任せに振り抜く雑な一閃。ただ、そんな適当な一振りでさえ、彼女の圧倒的な身体能力によって、必殺の技へと昇華される。
『バチイィィン!!』
彼女の金棒が俺の防壁を叩き、大気を震わせる。だが、俺の作り出した強固な壁には傷一つついてはいない。
「どうした?そんなものか?」
「ハハッ!最高だ!やっぱオメーは最高の男だよ、ツヴァイ!」
近くの山々に響き渡るような笑い声をあげると、フィーアは再び金棒を構え直した。
「ならコイツはどうだ!必殺・『ハイパワースイング』!!」
「むぅ!!」
先ほどの一撃とさほど変わらない、ただのぶん回し。だが、その威力は桁違いだった。
想像を絶する金棒の一振りに、俺の意識は吹き飛ばされそうになる。しかし、今のこの状況。俺の敗北はパーティの敗北へと直結する。その責任感が、俺の防壁をより強固なものへと変質させた。
「負・け・る・か ぁー!!」
気合いと共に、フィーアの金棒を弾き返す。ギリギリの攻防だったらしく、彼女の攻撃を受けた俺の防壁には、細かいひび割れがいくつも走っていた。
「……はは!マジかよ!初めてだぜ!?オレのこの技止めたヤツ!」
「そいつは光栄だな」
「だろう?だからよ、そんなテメーに敬意を評し、見せてやるぜ。オレの本気の一撃!」
「くっ!」
俺はひびの入った防壁を張り直すと、魔力を前面の壁に集中させた。そしてきたるべき衝撃に備え、歯を食い縛る。
「さあ、行くぜ!正真正銘の100%!『フルパワースイング』!!」
四天王最強の戦士が放つ、最強の打撃。その一撃が俺の防壁に叩きつけられる。そして次の瞬間、フィーアの魔力によって巨大な爆発が巻き起こった。
「うおぉぉーー!」
かつて受けた中でも、最も強烈な衝撃。俺は半壊した防壁を辛うじて維持しながら、ただただ煙の向こうで佇むフィーアの影を見つめることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます