第4話

朝の学校に向かう道中、龍太は虎五郎の姉・美幸(みゆき)がタピオカドリンクにハマっていると話を聞く。たしかに最近、あちこちを歩く女子達が、片手に必ずタピオカドリンクを持つ姿を度々目にしていた。虎五郎の姉も同じく、流行りに敏感なタイプである。


・・・


その週末明け。サルベンチに座る龍太が、虎五郎に姉のタピオカブームの様子を伺う。


龍太「虎の姉さん、相変わらずタピオカ飲んでるの?」

虎五郎「それがさー、急にピタッと飲まなくなったんだよ」

龍太「え?そうなんだ、もう飽きたの?」

虎五郎「いや、姉ちゃん今、俳優のジンって人にハマってて。その人がスマホの動画配信でタピオカ飲んでる女性は苦手だ、て言うのを聞いてから飲まなくなったわけよ」

龍太「色んな事にハマってるねー」

虎五郎「でも姉ちゃん、タピオカ飲んでる時、ウマイウマイ連発してるから純粋に好きなんだと思う」

龍太「大変そうだな、ファンって」

虎五郎「我慢してるよ」


・・・


週末に姉の美幸は、タピオカドリンク屋さんに行くのが癒しだった。だが、今は行けない。外に不用意に出ると、タピオカドリンクを持つ人に遭遇してしまうからだ。美幸は家にこもり、好きな俳優であるジンが出ているドラマをリビングで見ていた。


虎五郎「ただいまー!、あ、以外にウマイんだねコレ!」


と言って、ソファにいる姉の隣に虎五郎が座った。虎五郎の手には、タピオカミルクティがデカでかとあった。姉の美幸は、タピオカを飲みたいという思いを押し殺し、なんとか我慢していた。真横で飲まれるタピオカドリンクが、こんなにも私に苦痛を与えるのか、と美幸は感じながら虎五郎に鬼の視線を送っていた。


・・・


その翌朝。美幸と虎五郎は、学校に行く時間までテレビを見ていた。すると、見かけない新しいCMが流れ始めた。そのCMには、美幸の好きな俳優ジンが暑い日差しの中、ゴクゴクと爽やかにタピオカドリンクを飲んでいる姿が映っていた。


虎五郎と美幸「えっ!?」


そしてCMはあっという間に終わる。虎五郎は、ジンと言う俳優はタピオカドリンクについての発言の件をどう思っているのだと考えていた。気付くと虎五郎の隣にいた美幸がいなくなっていた。その直後、お財布を持った美幸がリビングに顔だけ出して虎五郎に捨て台詞を吐いた。


美幸「近くにあるタピオカドリンク屋で、ありったけのタピオカドリンク買ってくるわ」

虎五郎「、、あ、うん」


その日。虎五郎の家の冷蔵庫にはタピオカドリンクがパンパンに詰められていた。姉の美幸は学校を休み、ひたすらストローでタピオカを吸い込み続けていた。

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