『第9回角川文庫キャラクター小説大賞』を受賞された『王は銀翅の夢を見る』より2年後が舞台です。懐かしい登場人物たちも再登場しますが、こちらから読んでも十分に楽しめます。
こちらの作品も登場人物たちが本当にイケメン揃いなので、その描写を読んでいても楽しいです。しかし、後半に「あっ!」叫んでしまう仕掛けが用意されていたのには驚かされました。それにも関係することですが、『薄暮に惑うその鳥は』という題には、前作の『王は銀翅の夢を見る』という題ともに、含蓄深く感心させられました。
秘書省史書局で働く文官たちが古文書より謎を解くという初めは地味に感じられるお話ですが、読み進むにつれてファンタジー色が濃くなっていきます。その美しさと緻密な描写に、ファンタジー小説家としての作者さまのこれからのご活躍が楽しみです。
文官である主人公が個性的な仲間たちとともに幽霊騒動の謎を解くお話です。
文官などどこか東洋の風を感じられる要素に、幽霊や有色の民など独自の世界観に基づくファンタジックな設定。
様々な魅力的な要素が、文庫本一冊ほどの文字数のなかでうまくまとめられた珠玉の一作です。
本作は同作者の「王は銀翅の夢を見る」という作品の続編に当たります。
もちろん前作未読でも問題なく楽しめますが、個人的には前作と合わせて読むのがおすすめ。
前作に登場した人物や事件にまた会うことができるかもしれません。
この東洋の風を感じる美しい世界観に、ぜひ浸ってみませんか。
主人公は、文官として従事する柊怜。
優秀な文官であるはずの柊怜だが、彼は何故か転属が多い。
そんな柊怜の今回の転属先は秘書省史書局。そこで柊怜は不可思議な事件に遭遇することになる。
主人公の文官とういう設定が見事に活きたストーリーです。
お仕事モノの要素があり、謎解きやバトルにも手に汗握る。それが10万字(文庫本一冊ほど)に収まっていて、しっかりとした完結感をくれます。
読み応えが無いわけがないですね!
ちなみに、概要欄で作者様がおっしゃっている通りで、同じ世界観の別作品が存在します。
私はそちらも読みましたが、一読者としても本作から読んでも問題ないと感じます。
勿論ですが、本作を読んで面白いと思われたなら、前作【王は銀翅《ぎんし》の夢を見る】もおススメです!
この作品に登場する人物や事件に、前作でも出会えますよ☆
斎国の文官、柊怜(しゅうれい)は、黒色の右目に、不揃いな紫色の左目を持つ異相ながら、十六歳で登用試験に最高得点で合格した俊英。ところが、彼は一際異動が多く、物語の始まりに配属された新しい部署で(なんと六年で)十三番目だといいます。
何やら事情のありそうな彼が配属された秘書省史書局は、目を奪われてしまうような美貌の主官采珠(さいじゅ)を筆頭に、個性的な面々ばかり。基本的にはその名の通り、史書を取り扱う部署のはずですが、とある武官が彼らの元を訪れ王城内にはびこる幽霊騒ぎの調査を依頼されたことから、思わぬ運命が動き出します。
しっかり作り込まれた中華風の世界は、まるで実在の歴史書を読んでいるような気分になるのですが、その合間に差し込まれる月光灯などの不思議アイテムも見どころ。
その瞳に隠された複雑な過去を背負う柊怜、冷徹に見えて、人の心の機微にも聡い実に有能な上司、采珠の思いがけない秘密など緻密に張られた伏線が一つに織り上げられていくラストは圧巻でした。
正統派中華ファンタジーということで、一見硬そうに(ちょっぴりとっつきにくく?)感じられてしまうかもしれませんが、読み始めれば魅力的な登場人物と謎に引き込まれること間違いなしの一作。
十万字程度と文庫本一冊ほどの読みやすい長さでもあるので、思い切ってじっくり腰を据え、一気読みがおすすめです。