異世界魔法書士は誘拐される
次に選んだ本は喫茶店で大金持ちになるストーリーだった。あたしとコヨイお姉ちゃんは本の世界に入ったのだが、今回は喫茶店でとんでもない目に遭ってしまう。人生は一筋縄ではいかないと思わせられる。目が覚めると縄で縛られていた。
『あれ?ここはどこ?』
『気がついたか。』
目の前には2枚目のお兄さんが居た。
『お兄さんだぁれ?』
『僕は怪盗ピスタ。キミの心を奪いに来ました。』
『え?どういうこと?』
身体を動かしてジタバタするも、身体は縄で縛られている。女の子という身体もあり小さくても胸がキツい。自分が喫茶店の制服を着ていて思い出した。そうだ。確か昨日はコヨイお姉ちゃんとこの本の世界に来て、喫茶店で働いてたんだ。そうしたら突然予告状が届いて、1時間後の7時にかわいいあなたの心を奪いに行きますというキザでふざけたような内容が執筆されていた。悪ふざけ程度だと思って全員流していたのだけど、予告通り怪盗がやってきて、油断したあたしは眠らされてしまった。
『あたしを誘拐してどうするつもり?』
『ふふっ。キミはダイアモンドよりも価値がある。僕の女になれ。』
どういうことだ。あたしと結婚するってことか。この怪盗とんでもないロリータ・コンプレックスだな。
『嫌!あたしはお姉ちゃんの元へ帰るんだ!』
『ははは。ワガママお嬢さんだ。それじゃあまるでお子様だよ。』
少しずつ顔を近づけてくる。やだ。それ以上近づいてこないで。
『ちょっと!ピスタお兄さん顔が近い!』
『ふふっ。ワガママな娘の唇奪わせてもらうよ』
大変だ。変態だ。この人、あたしの唇奪うつもりだ。中の人は男だぞー!?男同士のキッスってことになるのでは!?どういう展開だよー!あたしは必死で抵抗して身体を動かす。手も足も縛られているので魔法も使えない。持っていた本は奪われてはいないが、手が使えないので何もできない。
『や、やめて。』
あたしは頬を赤らめて泣きっ面になる。もう変態の顔が目の前まで迫ってきている。すると、外で爆音が鳴り響いた。
『早かったね。』
外から扉を爆破させて入ってきた2人の女性。1人は怒りの表情を浮かべたコヨイお姉ちゃん。もう1人は喫茶店の看板娘のコーヒーだ。
『怪盗さん。メヨイに何かしていたら許しませんわよ。』
『メヨイちゃん大丈夫!?』
『残念ながらまだ何もしていないよ。この娘は僕が貰っていく。』
『キスしようとしたくせに!』
『キス?
あっという間にコヨイお姉ちゃんがピスタお兄さんへ距離を詰めた。負けじとピスタお兄さんも反応をする。
『よくも妹をさらってくれましたわ!!』
『誘拐なんて人聞きが悪いな。』
『コヨイちゃん!合体技いくよ!』
『ええ!氷魔法アイス!』
『珈琲魔法!コーヒー!』
2人の声がハモる。
『アイスコーヒー!』
『な…なんだと!?うわっ!僕のタキシードが。』
みるみる白い服が汚れていく。
『くっ。今回は僕の負けだ。潔く引くとしよう。ですが!必ずメヨイさんの婚約者になってみせる!』
『待てっ!きゃっ!?』
『コヨイちゃん危険だよ!』
『さらば!』
ピスタお兄さんはあっさり身を引いて煙を出して、どこかへ行ってしまった。
『メヨイどこか怪我はない?』
『メヨイちゃん大丈夫?』
『怖かったよぉ。でもコヨイお姉ちゃんとコーヒーお姉さんが助けてくれたから良かった。』
あたしは涙目でそう返事した。その後、喫茶店で
『メヨイちゃん次何かあったらこれを使って。』
『これは?』
『いつでもあたしを呼べる魔法の呼び鈴だよ。違う世界でもぶっ飛んで行くからね。』
凄く涼し気な声で明るい言葉を話すコーヒーお姉さんも不思議な人だ。中身が魔法書士のあたしでも誘拐されるなんて、この世界怖すぎる。
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