異世界魔法書士は果物を頬張る
見渡す限りの綺麗な景色。目の前には山や畑、のどかな田園が広がっている。隣には青紫美少女で姉のコヨイがびくびくしながらあたしのスカートを掴んでいる。
『コヨイお姉ちゃん怖がりすぎ!』
『だって…本当に本の世界に入れるとは…ひかも…ひゃじめててて』
『お前さんたちどこからきたっぷ?』
背後から声がしたので、くるっと回る。そこには田舎訛りの美少女が立っていた。
『あたしたち見学に来たんだ。良かったら果樹園見学させてよ!』
『いいっぷわ。案内するぱらさ!』
そして右側の平野を超えて、船で1つの海を渡り、その果樹園に着いた。
『船で30分漕ぐなんて遠い場所にあるんだね!』
『そんなに遠くないっぷ。バスは2時間に1本。電車は50分に1本来るぱらさ。』
田舎って公共交通機関の本数が少ないとは聞いていたが、ここまでだとは思ってもみなかった。果樹園を歩くと大きな果実が成った樹木が宿っていた。
『これは…?』
『伝説の果実だっぷ。ワシが丹精込めて水やりしてここまで大きくしたぱらさ。良かったら食べていき!』
『いいのですか?頂きますわ!』
『わーい!頂きま〜す!』
果実を手に取ろうとしたその時、後ろから雄叫びが聞こえた。
『来た!野菜悪魔ぱらさ!』
『野菜悪魔??』
あたしとコヨイお姉ちゃんは声を揃えて首を傾げた。こんなにもハモったのは初めてかもしれない。双子ってハモると気持ちいいよね。
『野菜悪魔っていうのはきちんと成長しきれなかった野菜が怨念となって生まれた恐ろしい悪魔っぷ!』
『ワレワレニソノカジツヨコシテモラオウ』
カタコトで言葉が上手く聞き取れないが、敵意を向けられているのは確かだ。
『田舎お姉さん!どうすればいい?』
『田舎お姉さんじゃなくてンプニャと呼んでっぷ。ワシと一緒に戦ってくださー!』
『わかった!あたし最強だよ!』
『わかりましたわ!
『アナドルナアナドモヨアナニウメテヤル』
もう野菜悪魔の喋ってる言葉が呪文のようにしか聞こえない。先手を取ったのはンプニャだ。
『いくっぷよ!スイカソード!』
ただし攻撃は外れてしまう。この野菜悪魔動きが素早いぞ。
『それなら私の魔法で動きを封じるから、メヨイが攻撃して!』
コヨイお姉ちゃんいい判断だ。
『氷魔法!アイス!』
アイスで野菜魔法を凍らせた。
『今よ!』
『ナイスフォローお姉ちゃん!ストロベリーソード!』
氷漬けになった野菜悪魔を真っ二つに切り裂いた。
『オレエエエエオンナドモオオオオオ』
そうして少しずつ声は遠のいて消えゆいていく。
『何事もなくて良かったですわ。』
『メヨイたんとコヨイたん凄く強いっぷね。ワシ驚いたぱらさ。』
『えへへ。あたしたち最強の姉妹だから。』
前までは1人で最強だと思っていた。今回、この姿になって初めて姉と協力した。誰かと一緒に戦うことって今まで無かったな。そんなことを思った。
『よーし!大サービスっぷ! いっぱい食べていくぱらさ。』
『ありがとうンニャプ。』
こうしてみんなで果実を頬張った。その味はとても美味しく、ひと仕事を終えたデザートはいつもより美味しく感じた。しかし、この果実はほんとうに健康に良さそうだ。寿命も少し伸びたかもしれない。そうして別れを告げて元の世界へ戻った。
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