異世界魔法書士は姉と交渉する

朝が来て姉のコヨイも来た。朝早くから病室に来るなんてどうしたのだろう。

『コヨイお姉ちゃんどうしたの?』

『どうしたもこうしたもないですわ!』

ほっぺをむぎゅうっとつねられた。

『いひゃい。いひゃい。ひゃめてくだひゃい!』

あたしは涙目でコヨイお姉ちゃんに訴えかける。

『そのペンダントと服はどうしたのですか!?わたくしの予想が正しければ魔法で本の世界へ行って報酬として貰ったということよね。かなり魔法を使ったのよね!魔力の気配がするわ。』

マズい。その予想が全部当たっている。何か誤魔化す方法を考えなくては。

『なななんのことですか??』

あたしは激しく動揺している。

『まったく、メヨイと来たら…』

『で、でも寿命は伸びてるよ。』

『それでも!メヨイ1人だけに危険に犯すなんてことはさせられません!今宵こよいわたくしも連れていくこと!いいですね?』

『うん…』

姉のコヨイお姉ちゃんは怒ると怖いな。こっちの方がよっぽど寿命縮むわ。承諾することにした。どちらにせよ昼間に魔法を沢山使ったらバレてしまう。それに病室ということも考えてリスクの少ない時間帯を選ぶのがベストだろう。夜しか本の中に入るチャンスはない。それよりもコヨイお姉ちゃんだけに今宵こよいってふざけているのだろうか。ギャグとしては80点の大台ってところかな。昼間は動かず、夜になるのを待った。魔法でこっそり入ってきたコヨイお姉ちゃんが病室の窓から潜入してきた。

『コヨイお姉ちゃん準備はいい?』

『ま…まだですわ。どんな世界に入るのか教えてくださいまし。』

かなり緊張しているようだ。わかりやすくコヨイお姉ちゃんの様子がおかしい。

『なんだかお姉ちゃん見てる方が心配になってきた。これは田舎町の物語だよ。田舎で平和に暮らすお話。』

『そうなのね。でも、それとメヨイの延命に何か関係があるの?』

『あるよ。その田舎ではとっても野菜や果物が取れるの。伝説の食材は身体の健康にいいらしいよ。』

『凄く健康面を重視した理由ですわね!?』

『健康じゃないとなにもできないもん。じゃあ本の世界へ行くよ!3 2 1』

『きゃあああ!!』

コヨイお姉ちゃんの悲鳴とともに光が病室を照らして瞬きする間もなく田舎町の光景が目の前に広がった。

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