異世界魔法書士は仕事を楽しむ
余命5日。薬を貰って寿命を延ばすことに成功した魔法書士。病院の先生たちからは奇跡だと言われた。だが、それでも余命5日なので退院などできるわけがない。今日も姉のコヨイがお見舞いに来てくれた。手づくりの葡萄をくれた。
『コヨイお姉ちゃんありがと!』
『どういたしまして。』
あれからコヨイお姉ちゃんの様子が変だ。ちょっと聞いてみることにしよう。
『お姉ちゃんどうしたの?』
『なんだか…メヨイが変わったなって思って。』
『な、なんにも変わってなんかいないよ。記憶が無いだけよ。』
あたしは少しだけ汗を垂らしてびっくりした。中身が魔法書士なんてバレたら恥ずかしいからな。本来は男で凄く魔力もお金も裕福で神に近い存在だった者が本に閉じ込められて女の子になったんなんて知られたら溜まったものじゃない。
『うん。そうよね。』
思った以上にあっさりとした回答が返ってきた。
『あはは。それはそうと、あたし薬を手に入れたい。』
どうやらこの世界では、あたしたちの両親のお母様もお父様も行方不明らしい。どれだけ大金を持っていても家族が居ないのは悲しいな。あたしも元々の世界で居なかったけど。昨日のお薬も滅多に手に入らない代物で世界にひとつしかないとか。大金を積んだとしても中々生き延びるのは難しいみたいだ。故に同じ方法で延命することなど到底不可能だと言える。そうだ。いいこと思いついた。
『コヨイお姉ちゃん!』
『なぁに?』
『あたしがもし何でも闇を叶えるって言ったら信じる?』
『闇…?』
『うん。どんな人間にでも心の奥底に眠っている闇だよ。何かあるでしょ?欲望や願い事、叶えたいこと。』
『ええ。ありますわ。』
『何でも言ってみて。』
なぜ、こんなことをするのかと言うと、姉に色々疑われては後々困る。今のうちにもっと親密な関係になっていた方がいいだろう。さぁどんな闇が飛び出す?
『
『え?』
『
思ってもみない答えだ。やはり家族というものは尊いな。そんな感心してる場合じゃない。これからはもっとメヨイになりきらなくては。
『メヨイのことたくさん教えて。』
あたしは一からメヨイの生き方を学ぶことにした。コヨイお姉ちゃんを使うことができたらあたしの行動範囲はより強固なものになる。これも作戦の内よ。
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