異世界魔法書士はドラゴンを討伐する
行商人から最優先で薬を貰うという条件で、この契約は成立した。不安そうな姉のコヨイを連れてあたしは洞窟に入ることにした。
『このトンネルの中にドラゴンが潜んでいるのか。抜け道もないし、隣町へ行くにはここを通るしかないって訳ね』
『ねぇメヨイ。どうしてしまったの?あと余命1日しかないのに、もしドラゴンにやられちゃったら…』
『コヨイお姉ちゃん心配性すぎ!寿命が1日縮むことが心配なのはわかるけど、お薬貰えるならやるだけだよ!このお仕事、あたしだけで片付けるから』
『え?でも
なぜか急に黙る。何だこの沈黙は。
『メヨイは?』
『ビリ』
ブッと吹き出した。ビリって何だ。どれだけ弱かったんだろう。そんな身体でもあたしは勝てる自信はあるが。きっと今のあたしの方がコヨイお姉ちゃんより強い。中身が魔法書士の少女なんてチートだからね。そうこうしているうちにドラゴンが居た。
『来たか。ここで俺はお前たちを食ってやる』
『ストロベリーソード!』
『ぎゃああああ』
ドラゴンを不意打ちで斬る。苺の円を描くように敵を刺す魔法だ。前よりは威力は弱いが魔法は相変わらず使える。この女の子の身体が弱すぎて一撃で仕留められなかったけど。身体能力と魔力も低い。
『あちゃ〜。一撃で仕留められなかったか。』
『ぐおおおお!!何をする小娘…!?』
『小娘じゃない。ドラゴン弱っ!トドメ刺すよ』
そこであたしは一冊の本を取り出す。病院の病室ででこっそり盗んできた本だ。ここからが魔法書士の真骨頂だ。
『本の中に閉じ込めちゃうね。』
『お…おのれええええ!!』
勢い良く風を吹かせてドラゴンを閉じ込めた。
後ろにいるコヨイお姉ちゃんは呆気に取られて両手で口を覆って目は上の空だ。あたしはお姉ちゃんの方を叩く。
『コヨイお姉ちゃん帰るよ。』
『…う、うん。』
あたし達は洞窟を抜けて、行商人の元へ帰った。
『いや〜!助かりました!その若さでドラゴン倒せるなんて本当に最強なんですね!恐れ入りました。これお礼の品です。』
『おにーさんありがと!』
あたしはお薬を貰った。なぜか行商人は敬語だった。
『このお薬ってどのくらい効果があるの?』
『そうですね。メヨイちゃんのご病気ですと、寿命が5日は延びると思います』
5日か。思ったよりも長持ちだ。今回のドラゴン討伐できっとあたしの魔力レベルもこの世界で上がることだろう。ここからが魔法書士の腕の見せどころよ。
『さぁコヨイお姉ちゃん。バレないうちに病室に戻ろう。』
『え、ええ。』
コヨイお姉ちゃんはどこか不安気な顔だった。そんな顔も美少女にはお似合いだった。双子だし、今はあたしも美少女だけどね。あたしはお姉ちゃんと肩を組んで仲良く病室の病院に戻った。
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