異世界魔法書士は余命1日
鏡の割れた響音が広がる病室の中。状況を整理しよう。依頼人が復讐に来て魔法を反射されて光に包まれたら、病院に居た。 そこで青紫美少女と出会う。我は瓜二つの桃紫美少女になっていた。ここから導き出される答えは一つ。想像したくもないがここは本の中だろう。
『なぁ我の名前とお前の名前を教えてくれ』
『あなたはメヨイよ。
やはりそうか。我は本の中の登場人物になっているというわけだ。そうなってくるとかなりマズいぞ。我は病院にいるから、恐らく死が近いのだろう。そういえば身体中が痛い。決して胸を触ったからだけではない。身体だけに。さりげなく聞いてみることにした。これ以上、双子の姉のコヨイを心配させないように女言葉で話すことにした。
『さっきから身体が痛いんだけど、我…じゃなくて普段私って自分のことなんて呼んでたっけ?』
『メヨイはいつも、あたしって言ってましたわ。』
『そうだったわね。あたし何かあったの?』
『…残り僅かなの。』
『僅か?』
『余命1日ですわ…』
『1日!?』
さすがに死が近い。予想よりも遥かに死が近い。余命1日っておかしいだろう。いくら我でも超絶ハードモードだ。バカバカしい。さっさと元の世界へ戻ろう。我は呪文を唱えた。
『本の魔法とその神々よ!我は神聖なる魔法書士であるぞ!元の世界へ我を戻したまえ!』
しかし、何も起こらなかった。部屋は静まり返っている。
『メヨイがショックでおかしくなっちゃった…ごめんね。コヨイお姉ちゃんなのに何も出来なくて。』
泣いているコヨイにギュッと抱きしめられる。だが今はそれどころでは無い。
『あ、あれ?戻れない?な、なんで。』
おかしい。今までこんなことは無かった。我の魔法自体は発動している。なぜなら魔力の高鳴りをこの小さな身体で感じているからだ。元の世界へ戻れない可能性があるとしたら、本に何かあったのだろう。例えば魔法で使った本が燃やされたとか。この推理が正しければ、あの依頼人の女とんでもないことしてくれた。これでは我は元の世界に帰れないでは無いか。このまま余命1日の女の子の身体で生涯を終えるのか?こんな所で高貴な魔法書士が復讐されて死ぬことなどあっていいのだろうか。
『死にたくない…。生き延びてやる。』
我は生き延びることを決意した。
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