戦火の少女 ④
格納庫の中は、シャノンからすればまさに
天井を這うレーンから、一定の間隔を開けて
「はわぁぁぁ……」
シャノンは変な声を出し、レーンで運ばれていく
アッシュおじさんとやらがすぐに持ち場へと戻ってしまったため、シャノンとふたりきりだ。
シャノンは、吊るされた
「あっ、勘違いしないでね。あたしが乗りたいのは、開拓用の
どっちも同じ
「戦いたいの?」
「ううん。戦うのは嫌だ。痛いの嫌だし、怖いし。でも、あたしも戦えたら、この国のためになるし、アドラ帝国との戦争も早く終わらせられるかもしれないでしょ」
――アドラ帝国。
どこかで聞いたことのある名前だ。と考えてから、数秒。ロゼはすぐに思い出した。
ファーストワンを狙っていた部隊が、その帝国からやってきたと告げていたはず。つまりこのサントロス帝国は、アドラ帝国と敵対関係にあるというわけか?
「……やめておいた方がいい」
ロゼが小さく告げると、シャノンは「むっ」と口元を歪めた。
「みんなそればっかり。あたしには無理だってね。やってみなきゃわからないもん」
「私なら、シャノンみたいな人を先に殺すかな。戦いはそういうものだよ」
珍しく反応するロゼ。シャノンは怒ると思ったが……考えてもいなかったロゼの答えに、ぷっと吹き出しただけだった。
「ふふっ、なにそれ! まるでロゼも戦ってるみたい!」
シャノンは、ロゼが本心から言っているとは気づいていなかった。そもそも、ロゼは人殺しをするような人間に見えない。
「本当は、あたしが行きたいのはここじゃないんだ。軍用機が格納されているのは別のところだからね。でも、あたしは関係者じゃないし入れない。……というか、何度も入隊試験に落ちてるんだよねぇ」
それは、この国を守る部隊についてだろう。
シャノンは照れ隠しをするように笑い続けている。
ロゼにはまったく理解できなかった。
国のために戦いたいだなんてただの綺麗事だ。そういう奴は、必ず死ぬ。
ロゼだって戦いたいわけじゃない。
あの《黒い
それまでは死ねない。復讐さえ達成できれば、後は永遠に休めるのに。
「……ねぇ、ロゼ。聞いてる?」
その間、どうやらシャノンはなにか言っていたらしい。考え込んでいたロゼは、シャノンを見て首を横に振った。
「す、素直だなぁ……。そろそろ帰ろうって言ってたの。少し早いけど、ロゼの服とかも買わなきゃ。これからは、家族だからね」
シャノンが、中へ入れてくれたアッシュへ手を振り、別れを告げた。
「アッシュおじさん! またねぇ!」
アッシュも手を振り返している。ロゼはそんな二人を無視して、先に外へと出た。
——そして、今夜。サントロス帝国は火花散る戦場と化す。
ロゼたちはそんなこと知る由もなく、帰路を歩むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます