第037話 強制レベルアップ

「よし、全員そろったみたいだな!!」

「「「「「「へい!!」」」」」」


 俺達の前に六人のボディスーツを着た男たちが整列している。


「よく似合っているぞ。正義まさよし、あんたの部下はこれで全員か?」

「いや、アジトにもう十五人くらいいるな」

「そうか、明日はそいつらも全員連れて来いよ。説明もちゃんとしておけよ」

「わ、分かった」


 これからこいつらの許には人があつまってくるだろう。組織の中心メンバーは全員強い方がいい。だからできるだけ全員を育ててやる。


「それで、これからどうするんだ?」


 そういえば何をするか言ってなかったな。


「何するって、そりゃあレベル上げだ」

「げっ。あの化け物と戦うのか?」


 提示された内容に嫌な顔になるリーダー。


 こいつらも何体か倒してレベルあげているだろうに、そんなに嫌な顔をしなくてもいいと思うんだけどな。


「そういうことだ。そうしないとレベルは上がらないしな。あんたはレベル上がってるんだから、知ってるだろ?」

「それはそうだが……ってなんで俺のレベルを知っているんだ?」


 俺の質問に納得しかけたリーダーだが、自分のレベルが知られていることに気付いた。


「俺は鑑定スキルを持っているからなお前たちのステータスは把握済みだ」


 こいつらには少しを俺たちのことを話してい置いてもいいと思ったので、スキルのことを話す。


「はっ。俺たちはそんな相手を脅かそうしていたのか、それは意味ねえわな」

「気にするな。俺たちのことを考えてくれたみたいだしな」

「大きなお世話もいいところじゃねぇか」

「だからいいと言ってる。それよりもレベル上げに行くぞ」


 俺たちの力も全く把握せずに絡んだことを後悔する正義。しかし、こうして出会うことが出来たんだから捨てたもんでもないだろう。


 それよりもさっさと話を進める。


 あまり無駄な時間を使っている場合じゃない。


「どこに?」

「それはこのエンジュに任せれば問題ない」

「にぃ!!」


 腕を組んで首を傾げる正義にエンジュを紹介する。エンジュは俺の肩に乗ってことの推移を窺っていたが、ここで初めて元気に「よろしく」と鳴いた。


「うわっ。それ人形とかじゃなかったのかよ」


 今まで全く動いていなかったエンジュが動いたことで驚く正義。


「なんで人形なんて方に乗せてないといけないんだよ」

「てっきりそういう趣味なのかと……」


 こいつら本当に俺をなんだと思ってんだ?


「後で俺をどう思っているかについて徹底的に問い詰めたいところだがまぁいい。エンジュに任せればモンスターが多くいる場所に連れてってくれるからな」


 それは後で全部聞きだすとして、エンジュの力についてぼかしつつ説明する。


「エンジュは凄いんだな」

「そうだろ?俺の従魔だ」


 正義が褒めるので俺は鼻高々に自慢する。


「従魔?」

「要は戦えるペットみたいなもんだ」

「にぃ!!にぃ!!」


 正義が従魔について分からないらしいのでざっくり説明したらエンジュから抗議がきた。


「なに?俺とエンジュは家族だって?そりゃそうに決まってるぞ」

「にぃ」


 俺が肩の上にいるエンジュの頭を撫でながらちゃんとわかっていると言うと、彼女は俺の顔に頭をこすりつけてきた。


 はぁ~、可愛すぎて死にそう。


「なにそれめっちゃ可愛い」

「だよな。お前たちの中に残念ながらテイマーの職業を持つ奴はいなかったから可能性はないかもしれないが、他のメンバーにいるならこういう可愛い家族を持つこともできるぞ」


 正義の年齢は分からないが、二十代前半と言ったところだろうか。それもガタイが良くて強面の男が目を輝させている姿に多少思うところはあるが、エンジュが可愛いのは事実なので仕方がない。


 俺はテイマー職について教えておいてやる。


「マジかよ……誰一人としてそんな職業のやつはいなかったわ」

「ま、まぁ気を落とすなって。これから仲間にする奴にいるかもしれないしな」


 しかし、誰もテイマーの仲間がいなかったようで落ち込んでしまったので、俺は肩を叩いて励ます。


「はははは……それもそうだな」

「それじゃあ、遅くなったが、移動しよう」

「分かった」


 気を取り直したところで俺たちはエンジュに従って移動を開始した。


「ほら!!さっさと攻撃しろ!!」

「ひぃいいいいいいいいい!!」

「そんなんじゃすぐに死ぬぞ!!」

「助けぇてぇええええええ!!」

「「いいから戦え!!」」


 移動してすぐにシャドウの群れと出会う。俺たちはその中に正義たちを放りこんだ。


 正義たちを認識したシャドウたちがわらわらと俺たちに迫ってくる。


 その数に逃げ出そうとするやつもいたが俺たちが阻止して攻撃に向かわせた。


 俺と修二は致命傷になりそうな攻撃だけを防いでやって、次から次へと襲い掛かってくるシャドウを倒させて続ける。


 俺たちは時折エンジュの感覚に従い、追加のシャドウを連れてきて、何時間にも及ぶスパルタパワーレベリングを行った。


 その結果、全員がレベルアップした。中には二つ上がったやつもいた。

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