第028話 ロッコ分の魔法の力
「それじゃあ、気を付けて行ってこいよ」
「あぁ、分かってるって」
「それじゃあね」
次の日の朝、しっかり休んだ俺達はお互いのやるべきことをやるため、見送りをしているところだ。
「にぃ!!」
二人との別れをしている所にフワフワと浮かんだエンジュが、私にもとアピールしてくる。
「はいはい、お前も無事に帰ってこいよ」
「にっ」
俺が彼女の頭を撫でてやると、嬉しそうに頬を緩ませて、前脚を挙げて答えた。
こうして別れを済ませた彼らはレベル上げに出かけて行った。
そういえば早結城姉妹からLINGUで物資を持ってきたのは俺でしょと尋ねられたけど適当にしらばっくれておいた。
別に善意じゃないしな。俺は二人の素晴らしいぴちぴちスーツ姿が失われるのが嫌なだけだ。少しでもその可能性が減るのならそれに越したことはない。今後も定期的に続けていくつもりだ。
加奈が結構避難民がいるからもっと持ってきてと図太く言ってきたのには思わず笑ってしまったな。俺に言っても仕方ないだろって返しておいたが。
「さて、俺は俺で検証を始めますか」
修二たちを見送った俺は裏庭で自分の力を使ってみることにした。
俺はステータスを開く。
俺の前に七つのウィンドウが表示される。
―――――――――――――――――――
■名前 六道小太郎
■称号 七界を跨ぐ者
■職業
クラフター ランク一
剣聖 ランク一
賢者 ランク一
聖者 ランク一
盾騎士 ランク一
特級テイマー ランク一
■レベル 三〇(五×六)
■スキル 収納、生産、修復、強化、
剣技、気闘法、属性魔法、
付与魔法、鑑定、詠唱短縮、
神聖魔法、挑発、蓄積、
全反射、従魔契約、敵意減少
―――――――――――――――――――
俺は統合ステータスを見る。
こうして見ると、スキルが全く活用できていないのが分かる。今日は魔法を中心にその力を把握して今後に活かしていきたい。
属性魔法に関しては、現状使えるのは、ファイヤーボール、ウォーター、サンダー、ウィンドカッター、アイスニードル、ストーンバレット、ライト、ダークの八種類。
神聖魔法に関しては、ヒーリングとライフトランスレーション、そしてピュリフィケイションの三種類。
付与魔法に関しては、アタックアップ、ディフェンスアップ、スピードアップ、マジックアップの四種類。
計十五種類だ。
名前である程度想像できるけど、実際に使ってみない事にはどれだけの威力や効果があるのか分からない。ひとまず属性魔法から始めてみる。
まずはファイヤーボール……は周りが森だから止めておくとして、ウォーターからやってみよう。
「ウォーター!!」
―ゴォオオオオオオオッ
手を翳して魔法名を唱えると手のひらからまるで消防車の放水のように水が噴き出すが、その量が尋常ではなかった。
直径六十センチはありそうな水の直線が描かれ、物凄い勢いで噴き出したその水はそのまま進んでいって木に直撃したと思えば、当たった木はミシミシという音を立てて折れ、二十メートル程先まで木々をなぎ倒した。
「威力やべぇ……」
最初に覚えている魔法なのにとんでもない威力だ。
「他の魔法を使ったら一体どうなるんだ?」
俺はウォーターに威力に戦々恐々とした気持ちになるが、使ってみることにした。
「やべぇ!!山火事になる!!」
ファイヤーでは森が燃え上がりそうになり、
「真っ黒じゃねぇか!!」
サンダーでは直径十メートル程の範囲にある木々が真っ黒になり、
「すぐに山が禿げあがりそうだ!!」
ウィンドカッターでは、直径十メートル程の範囲の木々が伐採され、
「氷の剣山か?」
アイスニードルは地獄もかくやという氷の剣山が出現し、
「穴だらけだ!!」
ストーンバレットでは、一つ一つの石礫が岩大の大きさになって打ち出され、木々が穴だらけになったり、
「目が!!目がぁああああああああ!?」
ライトは巨大な光の玉が浮かび上がってまるで太陽のように輝き、俺の目を焼き、
「何も見えない」
ダークは黒い霧のような物を生み出して視界が全くなくなった。
「とりあえず六つ分のステータスが合わさると、魔法の威力もヤバくなることがわかったな……」
俺は目の前の惨状を見ながらポツリと呟いた。林が一部ボロボロになってしまっていた。
その後、属性魔法に関しては魔法を使うと同時に体の中から抜けていくものあるのを感じ、それを絞ることで威力を抑えることに成功した。
これって逆に込める量を多くしたら威力も上がるんじゃないか。
という考えも導き出されたけど、これ以上の被害は不味いので何も考えなかったことにした。
「神聖魔法に関してはピュリフィケイション以外は使ったことがあるし、大体の効果も分かっている。それに現状使う場面も無さそうだから今回は除外しよう」
俺は神聖魔法を省き、付与魔法の検証に入る。
ランク一の状態で使える魔法は主に基本的なバフの魔法だ。
「まずはスピードアップが良いだろうな」
アタックアップは攻撃対象が木しかないから上昇が分かりにくいだろう。ディフェンスアップはそもそも攻撃してくれる相手がいない。マジックアップは正直これ以上魔法で敷地が荒れるのもどうかと思う、後でやるけど。
「スピードアップ」
俺は自分を対象にしてスピードアップを使用する。
「おっ。凄く体が軽いな」
早速動いてみる。
「のわぁあああああ!!」
俺は普段との違いに気づかず早く動きすぎてしまい、とんでもないスピードで移動することになり、つんのめって地面に顔からダイブした。
ステータスに変化がないので上昇率は不明だけど、確かに向上していることが分かるくらいには変化があった。
「これは制御する苦労しそうだ……」
俺は体についた土ぼこりを払ってため息を吐いた。
それからスピードアップについて検証した結果、持続時間は十分程度ということが分かった。
その後で、念のため、アタックアップを使って木々を攻撃してみたり、ディフェンスアップで家の屋根から飛び降りてみたり、マジックアップで威力を絞った魔法で威力の上昇幅を検証したりし続けた。
「あっ……」
しかし、気付いた時には遅かった。
没頭し続けたせいか気づけば視界がぐらりと歪み、俺は立っていられなくなってその場に倒れてしまったのだった。
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