第018話 チートオブチート
その二人の姿には見覚えがあった。
「聡と修二か!?」
それは俺が生きていてほしいと願ってやまない人物たちであり、二人の幼馴染だ。二人は私服で、武器はバットと鉄パイプだ。服は汚れているが、特に怪我などはしていないみたいだ。なんとか切り抜けてきたらしい。
流石聡と修二だ。
「六道君!?」
「ロッコか!?」
二人は声で俺だと分かったらしく、驚きながら俺の名前を呼んだ。
「ああそうだよ」
「やっぱり。無事でよかった」
「お前がこの程度で死ぬわけないわな」
「お前らもな。無事で本当に良かった」
俺達は各々近づいて肩を叩きあって無事を喜び合った。
「それにしてもお前らは家族は大丈夫なのか?」
「僕も真田君も今の所連絡が取れてるよ。まだネット繋がってるからね」
「そうなのか。俺はスマホの充電切れてからな」
「通りで連絡が通じないわけだ」
二人の家族は健在らしい。それなら良かった。俺の心配が減ったし、彼らがいればできることもある。
「それにしてもこのタイミングでお前らと会えてよかった」
「何でだ?」
「見張りをたてられるからだよ」
「それは確かにそうだね。三人でローテーションを回せば、一人ひとり結構しっかり休むことが出来る」
「だろ?」
単純に考えれば一人三時間見張るとして、一人目と三人目はぶっ通しで六時間休める。二番目だけ最初の三時間と、終わりの三時間になるけどな。それでも十分な休息だ。
「二番目だけ外れだな。最初は誰が当番をする?」
修二は、俺が考えた様に二番目が休める時間が別れることを外れと表現して顔を窺ってきた。
「こういうのは恨みっこ無しでじゃんけんしよう」
「それがいいか」
「そうだな」
俺達は聡の案に乗ってじゃんけんすることにした。その結果……。
「はぁ……。俺が二番目かよ……」
二番目になったのは修二だった。外れとかいうからその言霊によって修二に引き寄せられたに違いない。
「それはさておき寝るにはまだ早い。情報共有や今後のことを話しておいた方がよくないか?」
「それはそうだな」
早いうちに簡単にでも情報共有をしておいた方がいいだろう。
俺達は家の居間へと移動した。幸いまだ電気もガスも水道も生きていた。シャドウが電気に反応する可能性を考えて明かりはロウソクだ。
「聡と修二も覚醒しているみたいだな」
「お前もな」
ちゃぶ台を囲む男三人。まずはお互いの話になる。雰囲気からステータスに覚醒しているのは明白だ。
「お前らは一体何の職業だったんだ?」
「侍と暗殺者だ」
「性格にピッタリだな」
彼らの職業はそれぞれにハマっていた。
修二は見た目にそぐわず真面目で実直だし、聡は腹黒イケメンなので、その見た目と裏腹に隠れて色々やっていたりするからな。
「だろ。俺もそう思う」
「僕も自分らしいとは思うよ」
俺の見立てに満足そうな修二と聡。
「ロッコ、お前はどうなんだ?見たところ剣士っぽいけどよ。ていうかその装備はなんだよ」
修二が上体を反らして後ろに手をついて、俺の装備を見ながら尋ねてくる。
「ああ。俺はクラフター、剣聖、賢者、聖者、盾騎士、特級テイマーだな。装備はアイツらからのドロップアイテムだ」
「「は?」」
しかし答えたら、二人は目が点になった。
その反応分かるよ、うんうん。俺自身も初めは自分の目を疑ったからな。
「おいおい、どういうことなんだ?」
修二が我に返り、体を起こして再び俺に問いかける。
「俺はな、ステータスが六つあるんだ」
「はぁ!?なんだよそのチート!!ズルすぎだろ!!」
「ははははっ。六道君は昔からそうだよね!!」
俺の答えに修二は憤慨し、聡はおかしそうに腹を抱えて笑った。
「俺たちがここに向かってきたのは間違いじゃなかったってことだな」
「そうだね。さっきも言ったけど君は昔からここぞって時に強運を発揮するからね」
どうやら心配だけでなく、俺と一緒にいた方が生存率が上がると思ってここに来たみたいだ。
「そうか?」
「うん。そうだよ」
俺にはあまり覚えがないけど、聡が言うのならそうなのかもしれない。買いかぶりすぎな気がするけど。
「それにジョブもなんだか一般職じゃなさそうだよね?」
「そうなのか?」
修二はあまりわかってなさそうな顔で聞いた。
「だって剣聖だよ剣聖。そんなの絶対普通じゃないでしょ」
「確かにそうかもしれない。クラスメイトの奴らと一緒に行動していたんだけど、里中が剣士だと言ってたわ」
思えば里中は剣士だった。剣聖って響きを考えれば、明らかに剣士の上位職の可能性が高い。
聡の説明に腕を組んでウンウンと頷く修二。
六個のステータスの上に、上級職ばかりのステータスか。ステータスが六つあるだけでもチートなのに上級職ばかりと来たら、もうチートオブチートだなこりゃ。
「どんな力を使えるんだ?」
「いや、今日は人助けしたり、お前たちを探したりしていたからあまり検証はしていない。それに、スキル使わなくても切り抜けられるしな」
興味津々に聞いてくる修二だが、俺は首を振った後で肩をすくめた。
「そりゃあ、六個分のステータスがあるならシャドウも余裕だよね」
「まぁな。それはそうと、お前達もシャドウって呼んでるんだな」
面白そうに語る聡。
俺はドロップアイテムの鑑定であいつらがシャドウという名称だということを知っているが、聡はどうやら自分で名付けたらしい。
「うん。見たまんまだけどね」
「でもその見立ては間違っていないぞ」
「そうなの?」
「ああ。あいつらからドロップする武器防具は大体シャドウなんとかって名前だからな。一度もシャドウ自身を鑑定したことはないけど、恐らくそうだろ」
「なるほどね」
俺たちはあいつらをシャドウと呼ぶことで統一した。
「そういえば、さっき里中と一緒に行動していたって言ってたけど、そいつらはどうしたんだ?」
「それがな……」
修二がさっき俺が里中の話をしたことを思い出して俺に尋ねる。俺は今日の出来事を語った。
「あいつらマジで許せねぇ!!」
「ホントだね。今度後ろからブッスリいっとく?」
俺の話を聞いた二人は各々の表現で怒りを露わにした。
「いやいや、別にいいよ。俺がこんなにチートだって知らなかったわけだしな。それに俺の力の恩恵を受ける機会を失ったんだ。あいつらも大変な思いをするだろうさ」
「それもそうか。復讐はあいつらがのうのうとのさばっていた時に考えよう」
「そうだね。ちゃんと計画を考えておくよ」
怒り心頭の二人を宥めたら、二人は分かってくれた。報復することは決定事項らしいけど。
俺はこんな世の中だから二度と手助けしないことこそが最大の復讐になると思っていた。
その後、各々の持っている情報のすり合わせを行い、夜も更けてきたので見張りを交代しながら休息をとる。
―ピロリンッ
俺が寝ようとした時、充電していたスマホの音が鳴る。
「ん?誰だ?」
俺はスマホを開く。そこにあったのは優奈と加奈の名前だった。そこには今日のお礼が書いてあった。
俺は二人に気にしないでくれと返事をして目を瞑る。
世界はどうなってしまうのか……。
先を考えると不安になるが、気付けば俺の意識は闇に溶けていた。
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