第012話 俺の理想は地上(ここ)にあった

「そういえばステータスに覚醒してるか?」

「ステータス?」


 俺が彼女たちに問いかけるが、二人はいまいち分かっていないようで、お互いに首を傾げあった。


 ステータスを知らないってことか?


「ゲームはあまりやんない?」

「やったことはあるけど、そのステータスと何か関係が?」


 ゲームはやっていてステータスの意味は分かるけど、それが今何か関係があるのか分かっていないのか。


 確かに現実には何も関係ないもんな。


「試しにステータスって言ってみてくれるか?」

「えっと……ステータス、こう?」


 優奈に指示を出したら、彼女は困惑しつつも俺に言われた通り素直に言葉に出す。


 しかし、それで何も起こっていないようで頭にはてなマークが浮かんでいるみたいだ。


 どうやらまだ覚醒していないらしい。


「「あ……」」


 しかし、何かがあったらしく、そこで小さく声を出す二人。たった今覚醒したようだ。本当に覚醒条件が不明だ。ウィンドウが表示されたみたいだな。


 ただ、どちらも俺がいる内に覚醒してよかった。


「分かったか?」

「ええ」


 俺が優奈に尋ねたら、彼女は大きく頷いた。


「それで、これってなんなの?」


 ステータスのことは分かるけど、それが今にどういう影響があるのか分かっていないらしい。


「簡単に説明すると、この世界はゲームみたいになってしまったんだ。職業ジョブによって自分の強さが変わり、レベルが上がればその分強くなる。そんな風にな。でも敵はさっき見たみたいにリアルだ。ゲームなんかじゃない」

「そんなまさか……」


 俺の説明にとても信じられないと言った表情になる優奈。俺も何度も夢であればいいと思ったが、今はこれが現実だった。


 受け入れがたい事実だけど、今後のためにも受け入れてもらわなければならない。


「俺も最初はそう思ったよ。でもこれが現実なんだ」

「そう……なのね……」

「兎に角レベルが高いだけで生存率がぐっと上がるし、おそらく今後国が機能するかは怪しい。身を守るにはレベルが高いことに越したことはない。避難所に付くまで俺がサポートするから二人も戦ってくれないか?」


 呆然とする二人だが、彼女たちのためにもレベルは上げておいたほうが良い。できれば避難所に着くまでに自分の身は自分で守れるようにならないと、色々大変なことが起こる可能性がある。


 敵は何もモンスターだけじゃない。人の中にも悪人がいることを忘れてはいけない。彼女たちがそんな奴らの餌食になる可能性もある。


 そんなことになるのは嫌だ。ずっと一緒にいるのは無理だろうけど、そのくらいはしてあげたい。


「わ、分かったわ。やるわ」

「やってみる」


 二人とも少し恐怖で顔が引きつっているが、気丈に振る舞って頷いた。


「それじゃあ二人とも。俺が使っていない装備をあげるから裏で着替えてきて。近くの敵は全部倒したから安心してほしい」


 俺は二人に死蔵している装備を渡して着替えさせる。ドロップした装備をしているのとしていないのでは差がありすぎるからな。感知能力が上がっているせいか、近くに怪物がいないのは把握済みだ。


 あぁ〜、二人の姿が楽しみだなぁ。


 不謹慎だけど、俺はを着た二人の姿を想像してワクワクが止まらない。


「了解」

「分かった」


 二人は俺からアイテムを受け取ると瓦礫の影に消えた。


 俺から離れすぎるのが怖いのか、すぐ側で着替えていたので、衣擦れの音が聞こえてものすごくドキドキしてしまったのは内緒だ。


「あんた……こんなもの着させてどういうつもり?」


 優奈と加奈が帰ってくると、姉の方が恥ずかしそうにモジモジと体を隠しながら凄い勢いで睨みつけてくる。


「……」


 しかし、俺は目の前の現実に打ちのめされていて言葉が出ない。なぜなら優奈と加奈が完全にアサシンガールズそのものだったからだ。


 二人のボディスーツ姿は言葉が出ないほどに素晴らしかった。その上に申し訳程度の初心者用のプロテクターなどを身に着けている状態だ。


 姉の優奈は控えめな胸とそのスレンダーな体が浮き彫りになっていて、その女性の曲線美が露わになっていた。


 一方、妹の加奈は双子とは思えないほどに凶悪な二つの果実がボディスーツを突き破りそうなほどに盛り上げ、激しく主張している。


「ねぇ!!ちょっと何か言ったらどうなの!?」


 黙っている俺に優奈が苛立たしげに詰め寄った。


「ありがとう……綺麗だ……」


 俺は思わず素直な感想を口走っていた。


 二人があまりに美しくて俺の理想そのものだったからだ。


「え!?な、ななな、何言ってんのよ!!」

「え、あ、は!?ごめん!!俺見とれてた……」


 目の前で顔を真っ赤にして大声をあげた優奈によって我に返って言い訳をする。


 その言い訳もまた思ったまま口走っていた。


「あ、あんたなんかにそんなこと言われても嬉しくないわよ!!」

「あ、あぁ……そうだよな、なんかごめんな」


 プンと腕を組んでそっぽを向く優奈に俺は頭を下げる。


 確かに俺みたいな陰キャにそんなこと言われたら気持ち悪いよな……。


「はぁ……まぁいいわ。それでなんでこの格好をさせたのよ?あんたが見たかっただけじゃないでしょうね?」

「あ、ああ。それは勿論だ。ボディスーツに関しては嘘は言わない。そのスーツは俺が使っていない装備の中でも一番性能が良い物なんだ。これは誓って嘘じゃない」


 ため息を吐いた後で、キッと咎めるような視線を投げかける優奈に対して、俺は落ち込みながらも正当過ぎる理由を述べる。


 二人がボディスーツを着た姿を見たかったという気持ちがなかったと言えば嘘になるけど……いや百二十%だけど、それ以上に防具としての性能が高いのは間違いない。


 何故なら金箱から出た装備だからな。


「くっ……分かりたくないけど分かったわ」


 彼女は悔しげに納得いかない表情を浮かべながらもグッと堪えて頷いた。


 見た目はただのペラペラのボディスーツだから彼女たちが半信半疑になるのは仕方ない。


「防御力に関しては実際にシャドウと戦って確かめてもらう他ないな」

「シャドウ?」


 俺が化け物をシャドウと呼んだら、それを知らない加奈が不思議そうな顔になった。


「あの化け物の名前さ」

「ふーん。呼び名がないと分かりづらいし、いいわね」

「だろ?」

「分かりやすくていい」


 俺の説明を聞いた優奈が賛同してくれた後、加奈も呼び名に首肯してくれる。


 それからシャドウのことやステータスついて一通り説明した。


 俺は理想を体現する二人を前に、終始顔が緩んでしまいそうなるのをなんとか堪えることで精一杯だった。


 二人のボディスーツ姿、エッチで可愛すぎる……。いつか落ち着いたらイラストのモデルやってくれないかなぁ……グヘヘッ。

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