第四話 ホワイトドラゴン
満月の月夜、そいつは渇望していた。
「グルル……」
最強のドラゴンと名高いホワイトドラゴンの純血種に生まれ落ち、野生の中では敵は無く、人間達に麻酔銃で捕獲されて以降、心の渇きを埋める術は無いかと色々と思案してみるが、これと言った打開策はなく、仕方なく飼われているのである。
ゼロムスというハゲ親父は底意地が悪く、使用人を安月給でこき使い、美人の侍女にはセクハラを働いているクソ野郎であるのを知っており、いつかは頭を噛み砕いて自由な空へとまた舞い戻ろうかと考えている。
逃亡するチャンスはいくらでもあったのだが、野生時代の時に獲物を取るよりも、ほんの少し程度の旨味のある、筋肉増強用のタンパク質の入った餌を取る方が面倒では無い為、わざと大人しくしているフリをしているのである。
次の日は、別種のドラゴンと交配してハイブリットを作るのだが、一度そのメスと顔を合わせた時に悪寒と吐き気を催すほどのブスであり、どうやってその場を切り抜けるかと策を巡らせている。
「グル?」
柵の方で足音が聞こえ、彼はゼロムスが来たのかと思わず警戒をし、夜の闇であまり良くは見えなかったのだが、少なくとも数人の人数だなと確認ができた。
🐉🐉🐉🐉
「おいこっちだ!」
夜の闇の帷を切り裂くようにして、カフス達はドラゴンのいる宿舎に辿り着き、予め隠してある予備の鍵で扉を開けて中へと入る。
「しかし、この屋敷って広いんだなー」
ポルナレフは、元々身体能力が他の種族に劣るエルフ族というのもあり、あまり運動が得意ではないのか、軽く息切れをしている。
「あぁ、ゼロムスさんって軍で飼育されているドラゴンも取り扱う時があるから、税金で栄えてるんだよ」
「ふーん、うはってるんだなー」
カフスはドヤ顔でポケットから葉巻状の物を取り出して火をつけようとするが、ポルナレフに「この馬鹿」と軽く頭を叩かれて腹を立てる。
「お前見つかったらどうするんだよ!?」
「いやいいだろ、一服ぐらい!」
「おい、誰かいるのか!?」
後ろから不意に声をかけられ、彼らは思わず身震いをし、振り返るとそこにはバトルアックスやシミターを手にしたゼロムス達が顔に怒りを歪めて立っている。
(なんで物騒なものを持ってやがる!?)
カフスは彼等の殺意をひしひしと感じ、懐から短刀を取り出して身構えるが、後ろからドラゴンの鳴き声が聞こえ、思わず振り返る。
「ひぇっ!?」
「がはは! こいつは大陸最強のドラゴンだ! 今すぐ噛み砕け!」
ゼロムスは高笑いをして、ホワイトドラゴンに命令をし、「今度こそ俺ら死ぬかもな」と、シオン達は走馬灯を頭に浮かべている。
「グルル……」
ホワイトドラゴンは、彼等にじわじわと歩み寄り、ポルナレフは不覚にも失禁をしてしまい、「死ぬ前に風俗に2.3回ぐらい行っておけばよかったなー」と後悔をしている。
「……!」
カフスは何かを覚悟して、短刀を地面に捨て、ホワイトドラゴンにゆっくりと歩み寄り、それを見たゼロムス達は自分自ら餌になるんだな、とクククと笑った。
「グルル……」
「お、おい……!?」
ポルナレフはカフスを止めようとするが、身体から「何か」のオーラを感じ、思わず手を離し、彼の行く末を案じている。
「ほら、怖くないぞ……!」
カフスはホワイトドラゴンに触れようとして手を伸ばし、「殺されるぞこいつ」と彼らは固唾を飲んで見守っている。
「グオオ……!」
「!?」
そこには、誰にも懐かないはずのホワイトドラゴンが、安心し切った顔でカフスの顔を舌で舐めている。
「な!? 俺達にも懐かなかった筈なのに!?」
「どこへ行くのにも麻酔で眠らせていたのが、何で……!?」
ホワイトドラゴンの世話で四苦八苦していた世話人達は、全くの赤の他人のカフスに何故懐いているのが疑問という表情を浮かべている。
「乗れ、ってさ」
カフスはポルナレフにそう伝え、ホワイトドラゴンの背中に乗れと合図をし、背中に乗ろうとするが、ゼロムス達は「流すか」といきりたっている。
「グオオ……!」
ホワイトドラゴンはゼロムス達に向かい、口から煉獄の炎を出して制圧しようとし、カフスは「急げ」とシオン達をせかしてドラゴンの背中に乗り、大きな翼をはためかせて上空を舞った。
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