第5話

 僕は、自分の心臓が信じられないくらい早くなっていることに焦っていた。

 落ち着け!自分!と言い聞かせながらも、落ち着けるわけもなく、カラオケ屋は無慈悲に近づいてきた。


 「何名様でご利用ですか?」


 気がついた時にはすでに受付の前だった。


 「え、えっと…」


 「2人で!」


 僕が狼狽えていると、金森が答えてくれた。


 「では、2階205号室はどうぞ」


 僕は言われるがままエレベーターに向かいスイッチを押す。


 その頃には何階だったか覚えていなかったのは気のせいということにしておこう。


 何も頭が働かなくなって30分。ついに僕は金森と2人だけの部屋になっていた。


 「なんか歌ってよ!」


 金森は純粋無垢な目でこちらを見てくる。


 こんな子、好きにならないとか無理でしょ…。

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