第26話
「また仲間が、天逆海に……」
「まあとりあえず落ち着いてください」
「また仲間が、天逆海に……」
「とにかく三谷さんに知られてはまずいですから、お願いですから落ち着いてください」
「また仲間が、天逆海に……」
どうやら亀田の仲間、つまり河童がまた天逆海に連れ去られたらしいようだ。
それで亀田が騒いでいるのだが、管理人が三谷に知られるとまずいと考え、亀田に落ち着くようにと言っているのだ。
そのやり取りを三谷が今まさに、ドア越しに聞いているのだが。
――河童がまたさらわれたのか。亀田さん、さぞかし心が痛いだろうな。
無理をしてでも封印の玉を大きくしたい。
しかしそれは猫山も管理人も、おそらく妖怪荘の住人全員がそれを望んでいないのだ。
――どうしよう。
三谷は考えた。
考えたが結論は一つだ。
倒れない程度に頑張る。
今の三谷にはそれしかなかった。
それから数日が経ったある日、三谷を明神が訪ねてきた。明神は三谷に手をかざして言った。
「ほう、見事に封印の玉が育ったな。これならあの天逆海も封印できそうだ」
「ほんとですか」
「ほんとです。それではさっそく行きましょう」
三谷が部屋を出ると、管理人、亀田、猫山、小野塚がそこにいた。
「三谷さん、いよいよですね」と管理人。
「頑張ってください。応援してます」と猫山。
「期待してるわよ」と小野塚。
亀田は三谷の前に来て、その手を取って言った。
「どうか仲間の仇をとってくれ」
目に涙を浮かべていた。
「はい、わかりました」
「それじゃあ行きますか」
明神がそう言い、みんなで天逆海の部屋に行った。
部屋の中には三谷と明神の二人が入り、他の人は外で待機となった。
二人を見て天逆海が言った。
「やっぱり来たね。この私を封印するつもりかい。できるもんならやってみるがいい」
「もちろんやるさ。ふん」
明神が三谷の腰を叩いた。
するとまばゆく輝く光の玉が三谷のへその下から出てきた。
前回よりもかなり大きく、そして強く輝いていた。
そして玉は天逆海を包んだ。
天逆海はそのまま全く動かなかった。
光の輝きが薄れていき、天逆海の姿もだんだんと薄くなっていった。
そして消える直前に、天逆海が言った。
「これで、ようやく、やっと……」
天逆海の姿が消えた。
「三谷さん、おめでとう。あの化け物を封印できた」
すると部屋に四人が入ってきた。
亀田が三谷の手を強く握りしめて言った。
「三谷さん、ありがとう、ありがとう。これで仲間の仇がとれた」
猫山が後ろから抱きつく。
「三谷さん、素敵」
「本当にすごいわ。あいてはあの天逆海なのに」と管理人。
小野塚は何も言わずに三谷の頭を撫でた。明神が言った。
「あの天逆海を封印したのは初めてだ。三谷さん、本当に素晴らしい」
「いえいえ」
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