第23話
自分の手足がまるで他人の物のようだった。
思うように動かない。
――試してみたいけど、さすがに今日は無理のようだ。
三谷は夕食も取らず、風呂にも入らずにそのまま眠りについた。
朝起きると、まだあちこちが少しおかしかったが、夕べと比べればずいぶんとましになった。
三谷はありあわせのものを食べると、仕事に出かけた。
仕事から帰って夕食を食べると、三谷はさっそく試してみた。
そして驚いた。
封印の玉が育つスピードが今までの数倍だ。
――明神さんのおかげだ。さすが龍だ。
しかしいつもと同じ時間やったところ、自分がとてつもなく疲れていることに気づいた。
――これか、明神さんの言っていたのは。
夕食を食べたのに、もう腹が減っている。
しかし飯を食う気にも動く気にもならない。
風呂は昨日も入っていないのだ。
――どうしようか。
考えていると、ドアがノックされた。
猫山だった。
手には鍋を持っている。
「明神さんから聞きました。三谷さん、お疲れでしょう。はい、どうぞ」
鍋の中はいろんな具が入った雑炊だった。
「みみちゃん、ありがとう」
「いえ、三谷さんはみんなの希望の星ですから」
そう言われると、悪い気はしない。
「いただきます」
三谷は食べた。
めちゃめちゃうまかった。
さらに雑炊なので食べやすい。
猫山は料理がうまくて気遣いもできるのだ。
ますます好きになる。
「おいしいよ」
「ありがとう。とっても嬉しい」
猫山は顔を赤くした。
そして言った。
「それじゃあ元気になるおまじない」
猫山は三谷に抱きつき、ほほにキスをした。
「三谷さん、あとはゆっくり休んでくださいね」
猫山は出て行った。
いかに猫山のキスといえども、キス一つで疲労回復とはいかない。
しかし三谷は気分的に随分と楽になった。
三谷は風呂に入ったが、猫山がキスをしたところは洗わなかった。
そして風呂から出ると、そのまま寝た。
朝、まだ疲れていたが、仕事に行けない程ではない。
明日は休みだ。
なんとか頑張ろう。
三谷は仕事に出かけた。
仕事中、さすがに顔色が悪かったのか、上司から何度も「おまえ大丈夫か?」と聞かれた。
三谷は「大丈夫です」と何度も答えた。
仕事から帰ると、夕食を食べて風呂に入ってから、玉を大きくするべく精神統一に入った。
ある程度は頑張れる。三谷はそう思い、これまでの数倍憑かれるにもかかわらずに、いつも以上の時間にわたって玉を大きくし続けた。
そしてそのまま気を失ってしまった。
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