第22話
当の天逆海以外の住人が出てきて、亀田を取り囲んでなだめていたが、亀田は突然その輪を飛び出した。
「俺が天逆海をやっつけてやる!」
一番最初に動いたのは明神だった。
亀田の前に立ち、言った。
「あなた一人で行っても絶対に勝てない。ここにいる全員が命を懸けても、勝てるかどうかわからないのに」
管理人も割って入る。
「そうですよ。今行っては完全に無駄死にです。さらわれたお仲間も、そんなことは望まないでしょう。ここはどうかこらえて。機会を待ちましょう」
「でも……」
亀田はまだぐずっていたが、全員で優しく諭してようやく落ち着かせた。
明神が付き添い、亀田は部屋に戻っていった。
管理人が言った。
「聞いての通りです。天逆海は妖怪にとっても敵です。もちろん人間にとっても。三谷さんが頑張っているのはわかりますが、できるだけ早く封印の玉を育ててください。無理を言いますが、お願いします」
「わかりました。もっと頑張ります」
猫山が言った。
「三谷さん、頑張ってください。できる限り応援します」
「ありがとう。頑張るよ」
みんなに励まされていると明神が出てきた。
「三谷さん、私の部屋に来てくれないか」
「なんですか?」
「玉の成長を早める秘術がある」
「えっ、そんなのがあるんですか」
「ある。だから来てくれ」
「わかりました」
三谷は明神と一緒に部屋に行った。
入ると明神に座るようにと促された。
明神が言った。
「この秘術は私もそうだが、三谷さんの体に非常に負担がかかることになる。心配はない。死んだりはしない。しかしかなり疲れることになるだろう。それでもいいか」
「はい、いいです」
「うん、全く迷いのない、いい返事だ。みみちゃんが惚れるだけのことはあるな」
「えっ?」
「いやいやなんでもないよ。とにかく説明しよう。一瞬だが、私のエネルギーを大量に三谷さんに流す。すると気というか、三谷さんの体の中のエネルギーを今まで以上に多く流せるようになる。細いパイプを太くすると言った方がわかりやすいか。その分、エネルギーを流す度、玉を大きくする度に、疲労が今まで以上のものになってします。もう一度聞くが、それでもいいのか?」
「いいです。やってください。お願いします」
「わかった。ではやるぞ」
明神は三谷の肩に手を置いた。
そして目を閉じた。
しばらくして目が開かれた時、目は真っ赤に燃えているようだった。
「ふん!」
明神が大きく一声かけると、三谷の体の中に大量に何かが流れ込んできた。
――熱い、熱い、熱い。痛い、痛い、痛い!
まるで全身を炎で燃やされると同時に、鋭利な刃物で何十回とさされたかのようだった。
三谷はもだえ苦しんだ。
苦しい、熱い、痛い。
しかししばらくすると、ふいに全ておさまった。
明神が言った。
「三谷さんのエネルギーの流れは、今までの数倍になったはずだ。しかし私も自分のエネルギーを大量に使ったので、しばらくは休ませてもらうよ」
そう言うと明神はその場に横になった。
三谷が見て見ると、明神は寝ていた。
龍といえどもあれだけ大量のエネルギーを出すと、それなりにダメージはあるようだ。
「ありがとうございます」
三谷はそう言うと、自分の部屋に帰った。
帰るまでに何度か転んだ。
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