第21話

「とにかく強力な妖怪だ。この私でさえ手こずるほどに。しかしなぜここに来たのか。九尾の狐を三谷さんを中心にここの住人で封印したことは、妖怪の間ではかなり有名になっている。それは天逆海も知っているはずだ。そうだとしたら天逆海は言わば、自ら敵のど真ん中にのこのことやって来たことになる。でもどうしてそんなことをするのか。それがまるでわからない」

管理人が言った。

「とにかくあいつは強力です。みんなでなんとかしないと」

「私とここの全員が力を合わせれば、さすがの天逆海も好き放題はできないだろう。しかし全員の力と天逆海の力はほぼ同等。いや、天逆海のほうが確実に上回るか。とにかく油断はできない。ましてや一人一人狙われたら、とても勝ち目はない」

――!

三谷は思わず猫山を見た。

明神でも抑えきれない怪物。

猫山一人なら、ひとたまりもないだろう。

猫山も不安そうな表情で三谷を見た。

管理人が言った。

「殺すよりも封印することの方が確実です。だいたいあいつは殺すことさえままならないでしょう。ここの全員でかかったとしても。ですから三谷さん、また封印の玉を作ってください」

「わかりました。でもどのくらいの封印の玉を作ればいいんですか?」

「九尾の狐時の十倍ほどです」

――十倍!

三谷が九尾の狐を封印する玉を作るのに、結果として二か月近くかかった。

その十倍となると、単純計算で二十か月かかることになる。

それまでそんなやばい妖怪が大人しくしているだろうか。

三谷が考えていると明神が言った。

「大丈夫だ。三谷さんが封印の玉を作るのは二回目だし。それに私も協力するから、それほど長い時間はかからないだろう」

「そうですか。よろしくお願いします」

「いえいえこちらこそお願いする。とにかくあいつは危険な存在だ。封印するしかないだろうな」

「そうですね」と管理人。

「やってやりましょう」と小野塚。

「三谷さん、お願いします」と猫山。

「俺も微力ながら協力するよ」と亀田。

三谷は全員の期待を受けることとなった。

これはなにがなんでもやり遂げなければならない。


一旦解散し、三谷も部屋に帰った。

さっそく玉作りを始めた。基礎はすぐにできた。

さすが二回目だと三谷が思っていると、ノックもせずに明神が入ってきた。

「おおっ、もう小さい玉はできているな。やはり二回目となると違うな。どれどれ」

明神は三谷に向かって手をかざすと、なにやらぶつぶつと唱え始めた。

そしてしばらくすると、やめた。

「はい、封印の玉一つ。極小だができたな」

三谷が確認してみると、ほぼ猫山だった小さな玉は、小さいながらもちゃんとした封印の玉になっていた。

一日でここまでできたのだ。

あとはこれを大きくするだけだ。

「ありがとうございます」

「お礼なんてとんでもない。その玉は自分も含めてみんなが必要としている。お礼をいいたいのはこちらのほうだ。あとはそれを大きくするだけだが、それも手伝わせてもらうよ」

「はい、よろしくお願いします」

「ではまた」

明神は出て行った。

三谷はこれを一刻も早く大きくすることを決意した。


その日、三谷が仕事から帰ってくると、なんだかアパートが騒がしかった。

――なんだろう?

アパートの外で亀田が騒いでいる。

近づいて聞いてみると。

「仲間が天逆海にさらわれたんだ!」

と何度も叫んでいた。

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