第19話

明神が言った。

「それずああ、封印成功のお祝いでもしますか」

「はい」

「はーい」

「いいですね」

「うん、そりゃあいい」

「……」

明神を先頭に、全員がぞろぞろと歩き出した。

三谷はその後をついて行った。


 みんなで管理人の部屋に集合した。

六人もいるとさすがに狭く感じたが。

「それじゃあとりあえず飲みますか」

明神が言うと、目の前にいきなり何本ものとっくりと、数個のぐいのみが出現した。

手品か魔法のようだ。

とっくりの中身は日本酒だった。

みんなに日本酒がふるまわれた。

「それじゃあ、乾杯。封印完了おめでとう」

明神がそう言い、みんなが日本酒を飲み始めた。

もちろん三谷も飲んだ。うまかった。

日本酒は時々飲むが、こんなにもうまい日本酒を飲んだのは、三谷は初めてだった。

――それにしても……。

三谷は思った。この明神と言う男、最後に現れて、完全にみんなの中心にいる。

妖怪なのだろうが、一体何者だ。

三谷が考えていると、管理人が言った。

「三谷さんは、よくわかっていないでしょうね。この方は明神さん。そしてその正体は龍なのですよ」

――龍!

龍って妖怪だったっけ。

三谷が考えていると、管理人がそれを読み取ったかのように言った。

「龍は厳密には妖怪ではありません。神の使いであり、神に近い存在なのです。今回の騒動の時に、私が真っ先に声をかけたんです」

明神が言った。

「ろくろさんとは昔からの知り合いでね。でも私は神の側にいる存在だから、妖怪や人間のことには基本的には関わらないようにしているんだ。ほとんどが、ただ見ているだけだ。だからろくろさんに頼まれても一旦は断って、ただ見ていたんだが、ろくろさんが涙ながらに訴えるものだから、協力させてもらったわけなんだ。昔なじみのろくろさんが殺されたりでもしたら、私も目覚めが悪いからね」

「そうだったんですか」

管理人が言った。

「今回九尾の狐を見つけるのも、ここまで連れてくるのもほとんど明神さんがやってくれました。本当にありがとうございました。どれだけお礼を言っても足りないくらい」

「いやいや、ろくろさんに死なれたら嫌だから、自分の意志でやったんだよ。言わば自分のためだ。お礼なんていらないよ」

「いや、そうは言っても」

「ところで」

明神が三谷を見て言った。

「三谷さんとか。私は長く生きてきていろんな人間を見てきたが、それでもあなたは面白い。なかなかに面白い。実に興味深い人だ」

三谷は明神の何とも言えない迫力に押されながら一言答えた。

「そうですか」

明神が続けた。

「いきなり周りの住人が妖怪だと知っても全然怖がらず、それどころか自ら協力を申し出るなんて。そんな人間はなかなかいない。普段は見ているだけの私が手をだそうと思ったのはろくろさんのこともあるが、あなたの存在も大きいな」

「はあ」

「それによって九尾の狐は封印され、ろくろさんも殺されるとこはなかった。そこで私が気にしているのは、どうして何の抵抗もなく妖怪に協力する気になったのか。そこを詳しく知りたいんだ。教えてくれないか」

「それは……」

三谷は猫山をちらりと見た。

明神はそれを見逃さなかった。

「ところで雪さんや」

「はい」

「あなたは人間の男と結婚して、子度まで産んだんだよね」

「ええ、そうです」

明神は今度は三谷に言った。

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