第18話
決して背が低いわけではない三谷が見上げながら言った。
「三谷です。こちらこそよろしくお願いします」
「わかりました」
男は魅力的ににっこり笑うと、自分の部屋に入っていった。
次の日から、新しく入った明神の姿を見なくなった。
三谷は考えた。
まずあれは人間なんだろうか、妖怪なんだろうか。
管理人と話ができていると言って八号室の鍵を持っていたことから、管理人とはもう会っているのだろう。
もともと知り合いの可能性のほうが高いが。
それに入居した次の日から姿を見ない。三谷は考えた。
――今の状況から見て、少なくとも敵とは思えないが。
三谷は気になったが、自分にできることをした。
毎日欠かさずに玉を育てることだ。
それから数日後、ちょうど休みで三谷が部屋で玉を育てていると、外から騒ぎ声が聞こえてきた。
聞きなれた声だ。
外に出てみると、集団の中に九津がいて、それを明神を含むみんなで取り囲んでいた。
――見つけたんだ。
三谷が出てゆくと、九津がみんなに向かって叫んだ。
「畜生、卑怯だぞ。こんな奴の手を借りるなんて!」
その時、九津が目で指したのは明神だった。
やはりあの男、管理人たちの仲間のようだ。
管理人が言った。
「もろもろの事情で、どうしてもあんたを封印しなきゃならなかったのさ。手段とか細かいことは言っていられないんだよ」
三谷が近づくと、管理人が言った。
「ああ、三谷さん。ちょうどいいところへ。さあこの女狐をいますぐ封印してください。封印のエネルギーはもう十分のようですね」
「くそっ!」
九津は逃げようとした。
しかしそれを明神が右手一本で抑えた。
三谷は久津に近づき、その前に立った。
そして言った。
「どうやって?」
それを聞いた管理人は固まった。
すると明神がもう一方の手で頭をかきながら笑った。
「ろくろさん、こんな大事なことをちゃんと教えてなかったの」
「いや、こいつを探すのに夢中で、玉を放出する方法は教えていませんでした。失敗でした」
明神が言った。
「本来なら自分でやるんだが、やり方を知らないのなら仕方がない。私がやろう。それじゃあ、ほいっと」
明神は三谷のお尻の上あたりをぼんと叩いた。
すると三谷のへその下あたりから白く輝く玉が現れた。
そしてその玉が九津を包み込んだ。
「ぎゃーーーーーっ!」
とんでもない悲鳴が上がった後、
輝く玉は消え、九津の姿も消え去っていた。
明神が言った。
「九尾の狐の封印、ここに完了。みなさんお疲れ様でした」
「ありがとうございます」
「三谷さん、明神さん、本当にありがとう」
「ありがとうございます。ようやくあいつを封印できました」
「本当にありがとうございます」
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