第14話
三谷は念じ、球を作ることに集中した。
しかしその日は玉を作ることはできなかった。
さらに数日が過ぎた。
三谷はいまだに玉どころかなにも作り上げることができていないでいた。
三谷は少しあせりだした。
明日は休日だ。朝からやることにした。
何時間やったのだろうか。
三谷はよくわからなくなっていた。
もうお昼は過ぎている。
――少し休むか。
三谷は横になった。
するとドアがノックされた。
「はい」
そこにいたのは猫山だった。
「三谷さん、頑張っていますか」
「ああ、頑張ってはいるんだが」
「お昼は食べましたか?」
「いやまだだけど」
「じゃあ食べてください。お弁当」
猫山は弁当箱を差し出した。
「ありがとう」
見れば内容的にはどこにでもあるような弁当だった。
しかし食べてみるとおかずの一つ一つがとてもうまかった。
味付けの違いなのだろうか。
それは料理には詳しくはない三谷にはわからなかったが、わかったことがあった。
猫山は調理がとても上手いということだ。
いい奥さんになれる条件を持っている。
――こんな子と結婚できたらなあ。
三谷は猫山が人間ではないと分かったうえで、そう思った。
全て食べ終えた。
三谷が食べている間、三谷をずっと見ていた猫山が言った。
「どうでしたか。お口に合いましたか?」
「とてもおいしかったよ。料理が上手だね」
「ほんとですか。わあ、ありがとう」
猫山が抱きついてきた。
やはりふくよかなふくらみが三谷に当たる。
「いやこっちこそ。本当にありがとう」
猫山が抱きついたままで言った。
「それでどうですか、陰陽師の修行は?」
「うーん、なかなかうまくいかないなあ」
「そうなんですか。どこがうまくいかないんです?」
「まず封印の玉を作らないといけないんだ。小さな球を作ってそれにさらにエネルギーを足していって大きな玉にするんだけど、最初の小さな球がどうしてもできないんだ」
「そうですか。どうしましょう?」
「うーん、どうしようか?」
猫山がさすがに抱きつくのを止めた。
そしてしばらく考えてから言った。
「あれって、意志とか想いとかからつくるんでしょう」
「そうだけど」
「だったら最初の小さな玉は無理に最初から封印の玉ではなく、三谷さんが意志とか想いを強くのせられるものにしたらいいんじゃないかと思いますが」
「強く想いをのせられるもの?」
「そうです。思い入れが強いものとか。大好きだとか。そんなもので。それで最初の小さな球を作って、それからそれを封印のエネルギーで大きくしていけばいいんじゃないかと思ったんですが」
――うーん、そうか。
三谷が作ろうとしていたものは、封印の玉のエネルギーをのせる基礎となる玉だった。
しかしどんなに頑張ってもできなかった。
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