番外編2 永久の愛を10/11

 アーチをくぐり抜けた後、駿ちゃんが手を後ろに回したまま駆け寄って来て、

「ほい、どーぞ」

 ピンクと黄色で構成された可愛らしいブーケを、咲羅に……のはずが、私たちの間に差し出した。

「待って、咲羅が投げる話になってたよね」

「およよ? そんな記憶ないでやんすねー。んじゃ、2人で投げてなっ」

「ちょいちょいちょい、待って逃げんな」

 私の声を無視してブーケを押しつけた彼は、松岡先生の元へ帰っていった。


 なんでこうなった。

 咲羅に投げさせようって話し合ったじゃん。私がやるよりも、ご利益ありそうって提案したのに。


 ここにきて私がサプライズされる側になってるじゃん。マジでなんで。

 花束から視線を上げて、鈍足で走っていったヤツを見れば、「よく頑張ったな」的な笑みを浮かべた松岡先生に頭をよしよしされていた。


 おいおいおいおいおい。そこ、主役の私たち以上にイチャイチャしない! 2人とも顔をデローンとさせない! 風に乗って甘々な空気が飛んでくるからやめてください。

 窒息します。

 てか駿ちゃん、今頑張った要素ありましたか。全体的には頑張ってくれたけど、さっきはただ、ブーケを渡してくれただけですよ。

 え、松岡先生はあれですか。駿ちゃんが初めて、ひとりでおつかいに行けた、ぐらいの感覚でなでなでしてます?

 あーもうっ、あんたらも早く結婚しやがれ!


「じゅーり」

「はっ」

 ブーケを持った腕に手を添えられ、咲羅が顔を覗き込んできて正気に戻りました。

 いや、大きな瞳に吸い込まれそうになって、意識跳びそうになりましたけど。これ以上グダグダしていられないので、理性でこの世に留まりました。


「早く投げてあげようよ。みんな待ってるよ」

 はい、ごもっともです。

「そ、そうだね。よしっ、みんなあ、いくよー!」


 漸く私たちはみんなに背を向けて、

「『せーの』でいくよ。はい」

「「せーのっ」」

 息を合わせてブーケを放物線を描くようにぶん投げた。


 すぐに振り向けば、天に向けて手を伸ばす参列者のみなさま。

 空を舞った花束が辿り着いたのは、

「わっ」

 翔ちゃんの腕の中でした。

「おー、おめでとう」

 拍手と共に祝福する咲羅の隣で、まさか自分に来ると思っていなかったのか、フリーズしちゃってる翔ちゃんをアカ姉さんが、そっと抱き寄せたのを見逃さなかった私なのでした。


 みんな、人の結婚式でイチャイチャしないでもらってもいいかな!?


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