第53話 探偵辞めるってよ2/3

「キャハハッ、やっぱり面白いですね。樹里さんって」

 エリアースくんは超高音の笑い声を発して、お腹を抱えている。

 この短時間であなたがゲラなのはわかりました。なんだか毎日楽しそうでいいですね。

 プラス、四月一日さんによると、彼は大学生で時々助手として彼の仕事をお手伝いしてるらしい。

 趣味はカメラ。

「へぇ、凄いですね。今度写真見せてくださいよ」

「もう見てるよ」

 はい? もしかして

「曽田さんの写真撮ってのって――」

「うん、こいつ」

「イェーイ」

 マジか。既にお世話になりまくってたのね。本当にありがとう。感謝感激です。

 でも、

「なんかすみません。アイドル業界のドロドロしたとこ見せちゃって」

 アイドルはキラキラした美しい夢や希望を見せるのが仕事なのに。申し訳なさすぎる。

「全然大丈夫ですよ! 僕、JURI単推しなんでっ」

 堂々と言われてしまった。えっへんって胸を張って。

 うーん。嬉しいような悲しいような。できれば箱推ししていただきたいんですが……。

 まあ私も、咲羅が卒業してからRoseを箱推ししなくなったし。琴美さん単推しだし。人のこと言えません。


「って、そろそろ本題入るぞ」

「にゃっす、そうね」

 正論でございます。ちょっとふざけ過ぎました。反省反省。

 私と駿ちゃんはソファーに並んで座り、四月一日さんとエリアースさんが向かい側に座った。

「そんで、最近の曽田さんの動きはどうなのよ」

「んにゃー全く進展なしなんよ」

 折角時間をつくってくれた四月一日さんには申し訳ないけれど、ホントに駿ちゃんの言う通り。

 咲羅と音信不通になってから私たちは放置されたまま。

 翔ちゃんは今まで通りモデル活動をしていて、琴美さんはRoseに残っている。アカ姉さんは、なにをしているのか不明。翔ちゃんからは「毎日ダンスと歌、練習してるみたいです」って連絡きたけど。ふむ、なんで貴女が知ってるのかな?

 前から思っていたけど、2人の関係、明らかに変わったよね。

 言ってくれたらいいのになあ。いや、言いにくいか。私と咲羅別れたばっかりだもん。

 気を遣ってくれてるんだよね……多分。


「そっかあ。まあ、お前らが事務所を辞めるにしろ残ることになったとしても、そろそろ探偵飽きてきたし、廃業すっわ」

「はい!?」

 待った。爆弾発言なのでは。マジですかい。

「本気ですか」

「おん、本気と書いて」

「マジと読む、にゃはは」

 視線を合わせて笑い合わないでもらっていいですか。

 仲がいいのはわかったからさ、駿ちゃんと四月一日さん。真剣な話してるんだよね、今。茶化さないでもらってもいいですかね。

 というか、

「エリアースくんはどうすんですか」

 バイトとはいえエリアースくんは有能なのは間違いない。手放すのは勿体ないのでは?

 チラリと彼を見ながら言うと、

「こいつは大学生だからし、本業じゃないし、バイトだし」

 四月一日さんが笑顔で言った。

 左様ですか。たしかにね、大学生は勉強が仕事だから。そろそろ進路も考えなくちゃいけないだろうし。


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