第1話 推し爆誕1/6
レッスンスタジオのドアを開けると、そこには先客がいた。音を流さず、何度も同じ個所を練習していたのは、
「あっ、中井さん」
フィオ3期生候補、研究生の中井
私の存在にまだ気づいてないみたいだから、ドアの隙間からこっそり練習を見学させてもらう。
たしか、6日のフィオ5周年記念ライブに研究生たちもバックダンサーとして参加するんだっけ。
多分今日も練習があったんだろうし、一人居残って練習してるんだろうなあ。にしても、さっきから同じところしか練習してない。
ああ、この曲。フィオの中でも、手の振り付けが最高難易度だもんね。
身長は160cmぐらいかな? そんなに高いわけでもないけど。腕も脚も長い。モデル体型っていうのかな。ポテンシャルは悪くないんだけど、なんて言うか……持て余しちゃってる感じが凄い。
でも、一生懸命フリを修得しようとする姿に華の片鱗を感じて、この子は原石だって、ざわざわとオタクの血が騒いでくる。同時に、この子はきっと合格して、3期生の中心人物になる予感がした。
勿体ない!
「もうっ」
彼女がスタジオに響き渡るくらいに大きな声で叫ぶのと、私が心の中で叫んだのは同じタイミングだった。
髪をかきむしり、小さく
こりゃまた勿体ない。折角のキューティクルなセミロングヘアが……。
まあ、気持ちはわかる。自分の脳内イメージにカラダがついてこなくって、もどかしいんだよね。
懐かしいなあ。私もそんあ頃あったわ。中井さんの姿が、レッスンに参加し始めた頃の私と重なる。
よっし、いっちょお手伝いしちゃいますか。
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